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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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夏大根

「ただいまウイル。見て!」

 帰ってすぐにウイルに夏大根を見せる。

「は?この時期に大根?珍しいな。それにしても、小さすぎないか?40人分に足りるとは思えないが」

 えっへへ。ウイルの心配もごもっとも。

「大丈夫だよ。私たちの知ってる大根は冬大根なんだって。これは夏大根。食べ方もイチールとはちょっと違うの。面白いんだよ」

 さっそく、八百屋でおじちゃんが教えてくれた夏大根の食べ方をウイルに伝えた。

「ふーん。そりゃ面白いな。それに、レバーを使った料理に合いそうだ。じゃぁ、ねーちゃんはあれとそれを頼む」

 了解です!

 料理の手伝い。私にできることは少ない。崩れたり壊れたり崩壊したりボロボロになったりしても大丈夫な細かくする作業は得意だ。みじん切り系とすりおろし系。

 と、さすがに1品だけじゃ足りないので食糧庫に行ってスープ用の野菜を取ってくる。

「カシェットさん、ありがとうございます。夏大根のこと教えてくれて!」

「見つかったかい?」

「はい。試食もしてきましたよー。とってもいい八百屋さんを見つけたんです。扱う品はどれも素晴らしいものばかりでした。そこの品です。いつもお世話になっているのでお土産です」

 甘いニンジンを一つ手渡す。

 カシェットさんの目が丸くなった。

 しまった!周りにはたくさんニンジンが積まれているのに、ニンジンを一つだけお土産にするなんて、おかしな子だと思われたかもしれない。でも、そのニンジンすごくおいしくていいやつなんだもんっ。

 あああ、でも、とっておきのニンジンを見つけて友達のお誕生日に渡したら「私は馬じゃないわ」って怒られたことがあった……。うわー、私、成長してないっ!

「あの、バターで炒めるととっても甘くてすごくおいしいニンジンで、その、えっと、カシェットさんにも食べてもらいたいなぁって思って……」

「これは、本当においしそうだ」

 へ?

「ずいぶん、素敵な八百屋を見つけたようだね」

「はいっ!」

 よかったねと言ってくれるかと思ったのに、カシェットさんの顔は曇った。

「こういう目利きのできるいい八百屋に仕入れを頼めたらいいのに……」

「えっと、変更できないんですか?」

 カシェットさんが首を横に振った。

「仕入れは王室御用達の店からと決まっているんだ」

 四の円の店を思い出す。

 どの店もろくな感じがしなかった。どうしてあんな店から仕入れないとダメなんだろう?

「城の人間が口にするものに、変なものを紛れ込ませられると困るからね。他から仕入れられないんだ」

 ああそうか。毒とか入れようと思えば入れられるもんね。……私なら、そんなのすぐ発見できるけど。

「昔のように巫女様がいてくだされば……。王室御用達の店も入れ替えることができたのに……」

 ん?巫女様がどうしてお店を入れ替えるの?神殿とかで祈りをささげたり、猫竜様を癒したりするんじゃ?っていうか、今って巫女様いないの?

 ……。ごめんなさい。ちゃんと勉強してなくてごめんなさい。ウイルなら神父様の話聞いてないなって怒るところだ。

「ありがとうよ。これはありがたくいただくよ。スープに使う野菜だろう?それも持っていきな。スープに少し入れてやるといい」

 カシェットさんがベーコンをくれました。

 わーい。

 キャベツとベーコンを籠に入れてキッチンに戻る途中、マイマインさんのキッチンに数人の兵が肉を挟んだパンをもらいに来ているのが見えた。

 それから、イチール領のキッチンをのぞき込んでいる数3人の男の姿。

 ちょっと通れなくて邪魔だからどいてくれないかな。

「見てみろ、昨日みたいにうまくはいかないぞ」

「お前もよく考えたなぁ。仕入れ業者にお金を掴ませてレバー持ってこさせるなんて」

「ははは。人聞きの悪い。ちゃんと注文通りのおいしい肉に違いはないだろう?最上位牛の代物だぜ?」

「ぷーっ。ちげぇねぇ。だが、レバーはレバーだろう。いくら最上位牛でもなぁ……」

「くくっ。さぁて、今日イチール領の料理を食べるのはどこの部隊だろうかねぇ。レバー嫌いは何人いることか」

 そうか。

「あなたたちが手を回したのね?」

 後ろから声をかけると、飛び跳ねるように振り向いた男3人。

 あ、この顔。肉を踏みつけた領のメンバーだ。

「なっ、何だよっ!おいしい肉を40人前なんて注文の仕方をしたお前が悪いんだからなっ!」

「そうだ!どんな肉を使うか具体的に指定しないからそうなったんだ!」

 あれ?なんか焦ってる。お礼を言おうと思っただけなんだけどなぁ。

「ありがとうございました。おかげで、最上位牛のしかも超新鮮なレバーが手に入りました」

 レバーを思い出してよだれが出そうになったのを隠すために、ぺこりと頭を下げて慌てて唾液を飲み込む。

「くそっ、嫌みか!行こうぜ」

 頭を下げている間に男たちが去っていく。

 あれ?嫌みじゃないんだけどな?


 さて、夕飯の時間になり、またゴマルク公爵のスタートの合図で着席した兵や騎士たちが一斉に食事を始めた。昨日と違って、今日はイチール領のテーブルに着いた人たちも、合図とともに口に運んでいる。

「おお、サクサクだなぁ」

「うめぇ」

 むっふぅー。

 とりあえず、レバーだとばれてません。

 だって、見た目はフライなのでーす。しかも、ちょっぴり魚っぽい形に整えてあげてあります。

「変わった食感の揚げ物だなぁ。中身はなんだ?」

 ギクッ。

「えっと、肉です」

「へー、魚かと思ったら肉だったのか」

 ほっ。

「こんな肉初めて食べたな。柔らかいし、脂身が全くないんだな。なんの肉なんだ?」

 ギクッ。

 やばいです。えーっと、レバーだってわからないと食べられる人も、レバーだってわかったとたんに食べるのやめちゃうかも……。

「あー、あのっ、揚げ物が脂っこいなぁと思う方がいましたら、こちらをお試しください」

 えーい、秘儀、聞こえなかったふり。

 大根おろしの乗った皿をテーブルに置く。

「大根おろしか。わかってるね。そうそう、これこれ。さっぱりしてまだまだ食べられるぞ!」

 うん。そうなのです。ウイルに味見させてもらって、揚げ物と大根おろしがあんなに合うとは!びっくりです!イチール領に帰ってもやってみようと思うけど、夏大根手に入るかなぁ。冬大根も生ならぴりっとするのかな?

 うーん。


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