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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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アサリ?

 今日も一日いい日になりそう。

 もぐもぐ。

 食堂の朝食はうまうまです。

「ねーちゃん、次から食事はキッチンに持って行って食べよう」

 ウイルが不機嫌そうな声を出した。

「もぐもぐ。え?どうして?」

 きょとん。

「周り」

 周り?

 ぐおうっ!食べてて気が付かなかったけれど、テーブルの周りにいっぱい兵が立ってます。

 席が足りないのかな?ごめんなさい。

 慌てて残りを口にいれて食器を持って立ち上がる。

 すると、持っていた食器が手元から消えた。

「片づけは僕がやるから、ねーちゃんは先にキッチン行ってて」

「あ、うん。ありがとうウイル」

 あれ?食堂の席、結構空いてるよ?

 なんで私とウイルの周りにはあんなに兵が立ってたの?

 うーん。

 あ、わかった!昨日のウイルの料理の評判を聞いて、どんな奴が作ったのか気になって見に来たんだ!

 わかるわ。わかる!おいしい料理食べると、どんな人が作ってるのかめっちゃ気になるもんねぇ。

 キッチンまであと少しというとこで、ガタイの良い兵が立っていた。

 タウロスさんほどじゃないけど、新兵たちよりはもうちょっと迫力がある。

「お前か?男をあさりに来たって奴は」

 はへ?

 男をあさりに?

 アサリは好きだけどあさるのは好きじゃないですよ?

「そんなに不自由してるなら、俺が相手をしてやるよ」

 兵の手が伸びて手首を掴まれた。

「不自由なんてしてません。それに、何を言っているのか全然わかりません」

 男が腰をかがめ、私の顔の横に大きな顔を近づけてきた。

 日に焼けた肌はがさがさでボロボロだ。もうちょっとちゃんとバランスよく食事を取った方がいいと思う。こういう肌の人って、野菜が嫌いな人が多いんだよ。

「知ってるぞ、男探しに来たんだろう?かわいい顔してるから俺が相手してやるって言ってんだよ」

 ふごっ。

 男の息が顔にかかって思わず顔をそむける。

 臭いー。胃が悪いよ、絶対。ちゃんと食事しなくちゃなのっ!

「何だその顔は、俺じゃ不服だっていうのか?」

 痛っ。掴まれている手首に痛みが走った。

「その手を離せ」

「ウイル!」

 怒った顔のウイルがそこにいた。

「はっ、弟は引っ込んでろ!」

「その薄汚い手を離せと言っている」

 ウイルがギッと兵をにらみつけた。

「生意気な。やる気か?ちびが俺様に勝てるとでも思っているのか」

 男の手が離れたすきに、ウイルの隣に走り寄る。

 ウイルの横に立って男を見ると、向こうの方にタウロスさんの姿が見えた。急いでこちらに向かってくるようだ。

「ふっ」

 ウイルが小さく笑ったのを合図に、兵がウイルに殴りかかった。

 それをウイルはよけると、素早く兵の足を払う。

 バランスを崩した兵が片膝をついたところを、ウイルは後ろに回り体重を乗せて男の背に体当たりをかました。両膝をついた兵の手を掴み後ろで押さえつけた。

「ぐっ、卑怯だぞ、放せ!」

「うわー、強いな弟君」

 のんびりした声が後ろで聞こえる。

「助けは必要ないみたいだったなぁ」

「あ、タウロスさん」

「そいつ、それでも第三小隊の副隊長だから結構強いはずなんだがなぁ」

 タウロスさんが鍛えなおさないといけないなとかなんとかぶつぶつ言っています。

「ウイルだって、特別に訓練はしてませんけど、重たい酒樽を担いで運んだり、硬い貝をひたすら叩き割ったり、野菜を素早く切り刻んだりそれなりに筋肉ついてますよ!」

 家庭料理ではないから、毎日処理する食材の量は多いからね。結構ハードなのだ。

「とてもそれだけで作られた動きには見えないがな。兵にスカウトするかな」

「え?」

 タウロスさんの言葉にドキンと心臓が跳ねた。

 ウイルは体を鍛えていた?

 兵になるために?

 ……おやま食堂を出ても、一人で生きて行けるように?

 ウイルが継ぐ気はないと言っているのは、気を使っているわけじゃなくて、本心からってこと?

 おやま食堂から……家から……、家族から……私の元から……離れたいの?

「タウロスさん、誤解を招くような噂を否定してください」

 ウイルが男を押さえつけたままタウロスさんに話しかけた。

「姉は、男をあさりに来たんじゃない。腕のいい料理人を探しにに来たんです」

 ウイルの耳が怒りのためか赤くなっている。

「兵も騎士も、お貴族様も、料理ができない人間など姉に近づいたって無駄だと」

「ああ、分かった分かった。ちゃんと変な噂は訂正しておくよ」

 タウロスが、ウイルの腕をパンパンと軽くたたく。

 そこでやっと押さえていた手を緩めてウイルが立ち上がった。

「お前は、あとで反省会な」

 タウロスさんにそう言われて、兵は真っ青になった。

「ああ、今ウイルが言った噂の訂正に貢献してくれるなら、多少は反省会を早く切り上げてやってもいい」

「は、は、はいっ!すぐに間違った噂を正しい物にしてきます!」

 兵はびしっと体をまっすぐにしてからタウロスさんに敬礼して、くるりと背を向けた。

「待て」

 立ち去ろうとした兵にウイルが声をかける。

「姉に謝れ」

 ウイルに言われて、兵が私に失礼なことを言ってすまなかったと頭を下げてくれた。

 えーっと、失礼なことって、何を言われたんだっけ?

 男あさり?あさりのスープはおいしそうだなぁ。いや、違う違う。

 思い出した!

 言わなくっちゃ。

「あのね!はっきり言いますけど」

 びしっと人差し指を兵に向ける。


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