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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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賭けの行方

「兵たちの噂から、予選突破濃厚だとされてる領が3つ集まってるんだ。そう思う者たちもいるってことだよ」

「予選突破濃厚?予選1日目でなぜそんな話が?1カ月予選は続くのに……」

 またも首をかしげる。

「兵たちの情報交換がいくらなんでも早すぎますわね。さては、優勝する領がどこなのか賭けでもしているんじゃありませんこと?」

 ナリナちゃんが軽蔑の目をタウロスさんに向ける。

「あははは。まぁ、そう怒るな。賭けるといっても、大した額じゃない。ちょっといい酒や肉をおごる程度だ」

 ちょっといい酒や肉?

「は、はいっ!私は、マイマインさんのところが優勝すると思う。賭ける、賭ける!」

「ねーちゃんっ。賭けの対象者が賭けに参加できるわけないだろう」

 勢いよく上げた右手を、ウイルに捕まれた。

 ご、ごめんなさい。

「あははは。ありがとうね、リーアちゃん。だけどうちは優勝は狙ってないからねぇ。特産品のきのこの知名度を上げ、販路を広げるのがヨガマタクル領主の狙いだから。決勝に進出したとしても、ずっときのこ料理じゃとても優勝はできないだろうね」

 ああ、そういえばそう言ってたっけ?

「ふーん。領によって優勝がすべてっていうわけじゃないんだな」

 タウロスさんの言葉にナリナちゃんも頷いた。

「そうですわね。私たちも優勝を狙って参加したわけではありませんし……そういう点ではもう、目的も達成できましたわ」

「え?ナリナちゃんの目的ってなんなの?」

「私は、お兄様に好きなだけデザートを作っていただきたかったのですわ。甘いものは高価ですから、毎日好きなだけ作れるわけではございませんもの」

 ああなるほど。

 確かに。砂糖高いもんね。甘いお菓子は1年に何度か食べられるかどうかだもんね。

「大会中は好きなだけ甘いものを作ることができますし……」

「そっか!予選を突破すれば優勝しなくてもお城で働けるって聞いたし。ダリさんもお城ならいっぱいお菓子作れるよね!って、あれ?そうすると、ダリさんはお城、ナリナちゃんは領に戻って離れ離れ?」

 ナリナちゃんお兄ちゃんっ子だから寂しいよね?

 ウイルと離れ離れになったら……私も寂しいし……。

「お兄様はすでに何名かの貴族様に声をかけていただいたのよ。パティシエとして雇いたいと。ですから、予選突破してもしなくても構いませんの」

「なんだよ、ヨガマタクル領だけじゃなくて、フータ領も優勝狙ってないのか?決勝は貴族審査員が増えるからデザート類の評価点が上がるから優勝狙えると思われたのに。じゃぁ、お前たちは?優勝狙ってるんだよな?」

 と、タウロスさんがウイルの肩を掴んだ。

「いや、むしろ優勝したら領主に怒られると思う」

 そうだね。

 娘はやらん!ってやつだ。

「は?はぁーーー?そろいもそろって、優勝候補が何を……」

 タウロスさんが頭を抱えてしゃがみこんだ。

「他にも優勝候補はいるだろう、そこにしておきな」

 マイマインさんの言葉に、タウロスさんが焼きあがった肉を口に入れて他の領のキッチンが並ぶ食堂を見た。

「これ食べちゃうとなぁ。他の優勝候補か……。うーん」

 もぐもぐ。もぐもぐって、次々に肉を口に入れてる。

 むきゃっ。

 考えているふりして、ガンガン食べるとか……!

 このままでは私の分がなくなる!

 さっき選んだ肉はウイルが焦げないように上手に焼いてくれた。

 いっただきまぁーーーーす!

 もぐっ。

「はぁー。おいしい。そうだよ、狙ってなくてもやっぱりマイマインさんとこ優勝するよぉ」

 お肉の後は、ダリさん提供デザートタイム。

「うはぁー、おいしい。ダリさん天才。やっぱり、ダリさんとこ優勝するよぉ」

 ん?

「調子いいですわねぇリーアは」

 ナリナちゃんが苦笑した。

 調子?いいよ。まだまだ食べられますよ。お腹の調子は絶好調ですからね!

「ところで、優勝狙ってないとすると、何のためにリーアは参加したんですの?」

 ん?

「それはもちろん、極上干し肉と砂糖!」

 高らかに答えると、一同目が点になった。

「ねーちゃん……」

 ウイルが大きなため息をついた。

 え?

 何か間違ったこと言った?

 は!

 そうだった!

「婿探しだ!婿探しのために参加したのっ!」

 忘れてた。

「む、婿探し?」

 ナリナちゃんがさっとダリさんの腕に手をまわした。

「お兄様はダメですからね!ほら、これ、これにしときなさい!」

 ナリナちゃんがタウロスさんをこれ呼ばわりで背中を押した。

「嫁になるか?」

 タウロスさんの言葉に首を横に振る。

「だめです。私は、料理の上手な婿を見つけないといけないのです。じゃないと、おやま食堂がつぶれてしまいますっ!」

「あはは、振られちまったな。さぁ、そろそろ戻るわ」

 タウロスさんは最後に一番大きな肉を口に入れてから去っていった。

「おやま食堂?ウイルがいればつぶれるようなことはないんじゃないかい?」

 マイマインさんの言葉にぐっと口をつぐむ。

 捨て子だったこと、血がつながらないことをウイルが気にして家を出ようとしているとか、言うことではない。

 確かにウイルがついでくれればおやま食堂はつぶれないだろうし、ウイルも料理が好きだからきっと幸せなはず。

 そのためには……。

 私がおやま食堂から出れば話が早いんだよねぇ……。

 おやま食堂から出る……?

「私、マイマインさんの妹になるぅっ!」

 ぎゅっと、マイマインさんの腕に抱きつく。

「え?妹?」

「ねーちゃんの考えてることは分かるが、他の人には何がなんだかわからないぞ……」

 ウイルに首根っこを掴まれてマイマインさんから引き離された。

 とかなんとか、楽しく食事をしていると、時々鋭い視線を感じる。


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