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【書籍化】爆裂よだれチート!食いしん坊巫女と猫竜王  作者: 富士とまと


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塩きのこと変態

 この間ナリナちゃんと一緒にいたおいしい料理を作りそうな手をした女性だ。名前何て言ったかなぁ……。

「おや?ナリナに、えっと、リーアだっけ?二人でどうしたんだ?」

「マイマインさん、この間イチール領の特産品を見せてしいとおっしゃっていましたわね?リーアが見せてくれるそうです」

 そうそう、マイマインさんという名前だった。

 そうか、突然交換してっていうより、まずはお互いの特産品を見せ合って、それから交渉したほうがいいってことかな?

 ナリナさん親切だぁ。

「おや?持ってきていないと言っていなかったかい?」

「ふっ。この娘、自分の領の特産品が何かを知らなかったんですって」

 ナリナさんが鼻でふっと笑った。

 うぎゅ。

 知らないよ。知らないよね?普通に毎日食べてるものだもん。特別なものだなんて思わないよね?

 そうだよね?

「ほら、見せてあげなさい」

 ナリナさんに言われて、塩の入った小さな器を見せる。

「これは?」

「藻塩っていうらしいです。その……塩に種類があることも知らなくて、イチール領ではこの塩しかないから……」

 マイマインさんの目は、塩のすべてを見極めようとしているのか、まっすぐ塩を見ている。

「これが、藻塩……。砂糖よりも価値がある幻の……」

 は?

 砂糖の方が価値があるよぉ。そりゃ、王都の3の円ではずいぶん高い値段ついてたけど、あれはなんか別物だったし。

「味見してもいいだろうか?」

 マイマインさんが遠慮気味に聞いてきた。

「はい、もちろんです。どうぞどうぞ」

 でもって、気に入ってくれたら、マイマインさんとこの特産品と交換をお願いするんだ。

 マイマインさんが指でほんの少しだけ塩をつまみ取り、手のひらにのせて舐めた。

「甘い」

 え?甘い?砂糖と間違えて持ってきてないよね?

 手に取って少し舐める。

「しょっぱっ!」

 塩だよ。甘くないよっ。

「これほど……藻塩とは味わい深いものだとは……」

 全然わからないって顔してたら、マイマインさんが少し待ってなと言って茹でたじゃが芋を持ってきた。

 一口大に切ったじゃが芋に、藻塩を振りかける。

「こっちは、うちの領で使っている岩塩だ」

 と、なんか塩の小石みたいなのが入った器を小さな臼みたいなのでがりがりして振りかけた。

「食べ比べてごらん」

 味の違いわかるかな……。

 砂糖と塩は分かるけど。おいしいかどうかはいつもセンサー任せだもん。食べてからこっちのがこういう味っていうのは……

 藻塩のじゃが芋食べる。うん。なかなかよいじゃが芋ですぞ。

 岩塩のじゃが芋食べる。うん。ちょうどよい塩味ですぞ。……あれ?

「苦っ……?」

「そうだろう。藻塩は甘みを感じるが、岩塩は苦みを感じるんだ。気が付くか気が付かないか程度だが、こうしたじゃが芋だけのシンプルなものに使った時、敏感な舌の持ち主ならば分かるだろう」

 そういうと、マイマインさんはとても悲しそうな顔をした。

「味を知ってしまうと欲しくなるな……」

 やった、その言葉待ってました!

「あげるよ!……じゃない、えっと、マイマインさんの領の特産品と交換してほしいです!」

 マイマインさんが動きを止めてしまった。

「だ、だめですか?」

「だめじゃない。だめじゃないけど、ヨガマタクル領の特産品はこれだよ?藻塩と釣り合うような価値はないよ」

 これだよと、マイマインさんが見せてくれたのは木製の手のひらサイズの植木鉢から生えた小さなキノコの集まりだった。

 おいしいよ、おいしいよって声が聞こえる。

「うちの領では、何種類かのキノコを畑で野菜を育てるように栽培している。環境さえ整えてやれば、季節を問わずキノコが食べられるのさ」

 植木鉢が30ほど入った木箱の中を見せてくれた。

「すごいっ!秋の山の贈り物のキノコが食べ放題だっ!」

 しかも、植木鉢に入ってまだ生きていて新鮮だからなのかそのどれからもおいしいよって声が聞こえる。

「はい、藻塩どうぞ。じゃぁ、キノコもらってきます!」

 気が変わらないうちに、藻塩の入った器をマイマインさんに渡して、植木鉢を一つ取った。

「え?ああ、待ちな、」

 ぎゃぁ、呼び止められた。もう、返さないよ。このおいしいキノコは私の物っ!

「一つじゃなくて、その木箱ごともっておいき。厨房に置いてないけれど、王都のヨガマタクル領主様のお屋敷に大量にあるから」

 にゃに?

「いいの?こんなにいっぱい、もらっていいの?」

 頷いたマイマインさんに飛びつく。

「ありがとう、マイマインさんいい人!大好きっ!」

「あはは。お礼を言うのはこっちだよ」

 頭をなでなでされた。

 節が太くて皮の堅い手のひらが、母さんみたいでうれしくなった。

 それでもって、木箱を運ぶのをナリナちゃんが手伝ってくれたの。本当にいい子だ。

「まったく、距離感が本当におかしいですわっ!私やマイマインさんと同じように、殿方と接してはだめですからね?大体、ちょっと単純すぎます。食べ物をくれる人はいい人で美味しいものくれる人が大好きって……。いつか、誘拐されますわよ?」

 えー、だって、ナリナちゃんは本当にいい子だよ?

 こうして、私のこと心配して注意してくれてるんだし。

「ちょっと、何を笑っているんですか?」

「ナリナちゃんに注意してもらえて幸せ」

 素直に今の気持ちを言っただけなのに……。

「へっ、変態がいますわ!ちょっと、ウイル、この変態を野放しにしないでくださいませっ!」

 キノコの箱をイチール領のキッチンまで運ぶと、脱兎のごとく逃げて行った。

「ちょっ、ねーちゃん、変態って、何をしでかしたんだ!っていうか、この箱のキノコはなんだ?オレンジとかいうのをもらいに行ったんじゃないのか?」

 えっと、何から説明しようかな?

 首をかしげると、ウイルがはぁーっと大きなため息をついた。

 ちょっと何よ。一度に質問するからいけないんでしょ!


ご覧いただきありがとうございます。なんとか書き溜めがあるので今週はなるべく更新いたします。

来週から週に2~3回に更新ペースを落とそうと思っております。

ブクマ感想評価、大変励みになります。本当にありがとうございます。


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