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蝶は嵐を起こす 弥勒の決死圏シリーズ#01  作者: 柿ノ木コジロー
第五章・駆けるサンライズ
28/38

04

 もうすこしでバンコク近辺にさしかかる、という頃、通信機が赤く点滅した。

 うとうとしていたサンライズは、はっとしてスイッチを入れる。カンナだった。


「リーダー、いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」


「いい方からにしよう」

「キタノが勝手に日本に帰った。辞表が置いてあったよ」

「久々に聞く朗報だな。で、悪い方は?」

「博士がまだ起きてる」

「彼も大人なんだから夜更かしに目くじらたてるな」

「違うよ」カンナは声をひそめた。

「明日の論文発表には必ず行くって。原稿を取りに行くって騒いでるの」

「出ていったのか?」

「まだ。リーダーに連絡が取れるまで待て、って言ってある」

「じゃあ、ダメだと伝えてくれ」

「明日発表できなければ、日本には行かないと言ってるけど」

「そうか」会話に気づいて、ボビーも目を覚ました。

「博士が明日、会議に出ると言ってるらしい」

「どうするの? リーダー」

「どうしようかなあ」


 他人事のようにつぶやく。しかし、すでに答えが見えた。

 サンライズは運転手に告げる。

「すまないが、まずリバーサイドガーデンに付けてくれ。裏の通用口に」


 車はすでに、チャオプラヤ川のほとり、金色のパゴダが闇に沈む市街地へとさしかかっていた。


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