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04

 上になったスライドドアを開けると、ちょうどシヴァが這い出そうとしていた。手を引っ張ると、勢いよく外に飛び出した。

「博士は」

「一番後ろ」

 彼はすぐ近くにあったコンクリートの大きな破片を両腕に抱え、後ろの窓をたたき割る。

 博士とその隣の男は気を失っていた。シヴァを見張っていた男は銃を取り落としてからずっと、ブツブツ言って体を丸めていたそうで、特に大きなケガはみられなかった。

 運転手は、額から血を流してもうろうとしている。

 シヴァに命じて三人を縛らせ、自分はなんとか博士を引っぱり出した。


「博士、ミュラー博士」

 呼んでみると、どうにか目を開けた。


「だいじょうぶですか? どこか痛いところは?」

「いや……」博士はようやく立ち上がった。「だいじょうぶだ。彼は?」きょろきょろと、シヴァの姿を探している。一仕事終えたシヴァが立ちあがったところに

「ああ、よかった」一瞬抱きつくか、と思ったが前に出した手を所在なげにぶらぶらさせ

「よかった」ともう一度言い直した。

 特に気にしたようすもなく、シヴァがこちらを向いて聞く。

「どうやって帰る? リーダー」

 多分、初めてリーダーと呼んでくれたようだ。しかし今はそんな事に感動している場合ではない。頭痛がひどくなってきた。

 彼は額を手のひらの元の方で押さえながら、野次馬の集まり始めた周囲を見渡した。


 いた、バイクだ。


「おい」呼んだら、すぐにこちらに寄ってきた。

「三人だが、フアランポーン駅まで」

「いくらで」英語が通じる。

「三人で五〇」

 もう一人、仲間らしいバイクが来た。「いくらだって」と聞いているらしい。

 最初の男がこちらを振り返って

「訳ありなんだろ?」というので

「いくらならば?」と聞くと「一人五〇だ」と。

 サンライズは笑いながら言った。

「OK、かなわないな。どうせだから三人で一〇〇、いや一二〇やるよ」

 え? という顔をしたシヴァの方にちっ、と目配せをしてシヴァと博士をはじめに来た大きめのバイクに託し、自分は後から来た方にまたがる。

 バイクはあっと言う間にカオスの中から抜け出していった。

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