02
周りの賑わいに比べ、カフェはどちらかというと落ち着いた感じの場所だった。
少し奥まった場所に、すでに博士は座って待っていた。
ボビーが話してくれたように、落ち着きがなくまた爪を噛んでいる。
サンライズはやや入り口に近い、しかしくぼみになったテーブル席に一人で陣取った。
シヴァは、つかつかと彼に向って歩いていった。
博士がはっ、と目を見はる。
遠目からみると、やはり二人は似ているような気もする。顔が、というよりも立ち振る舞いやちょっとしたしぐさ、目の配り方などに、頭の切れるわりに周りにあまり注意を払っていないといった感じが、なんとなく共通している。
シヴァが座ると、博士は少し神経質そうな微笑を浮かべた。何を飲むか聞いているようだ。
答えは知ってるぞ、コーラ。ちょうど来たウェイトレスにコーラを頼んでいるのが聴こえた。やっぱりね、とサンライズは口の端で笑う。
こちらに来たウェイトレスには「ホットコーヒー」と頼む。テーブルには乗ってないが、また四種の調味料がつきそうな雰囲気だった。
サンライズの元にコーヒーが運ばれてきた頃には、彼らの会話は少しは進んでいるようだった。
コーヒーには普通に砂糖とミルクがついて、少しほっとして座り直す。
シヴァも思ったよりよくしゃべっている。博士はやはり、コーヒーを飲んでいるようだったが、ほとんどカップを持ち上げず、彼の話にかなり興味を持ったように耳を傾けていた。
その様子を見るともなく目に収めながらサンライズは二杯目を頼んだ。少し泥っぽい滓が残るが、まずまずの風味だった。
二人が話し始めて三〇分くらいしてから、ようやくシヴァがこちらを向いて手まねきした。
彼はウェイトレスにいったんコーヒーの代金を払い、立ち上がって更に店の奥に進もうとした、が、ちょうどそこに通信機のバイブが反応した。彼らに軽く手を上げてからあわてて軒先に出る。
スイッチを入れると、片耳にさしたイヤフォンから押し殺した声。ボビーだ。
「ボーイが二人、外に来た、頼んでないのに」
「今どっちだ? オマエ」
「もう戻ったわよ」変装を解いてしまったと。
『雑誌をお飲み物をお持ちしました』と言われたらしいが、リーダーに固く言われていたように、さすがのボビーも、ルームサービスは一切頼んでいなかった。
「何て答えた?」
「声だけ博士の真似して、『頼んでないわ』と」
「ヤツらは」
「外で少し立って何か相談してた、もういなくなったけど。どうしよう?」
「絶対部屋の外にでるなよ。寝たふりをしてろ」
「そんなこと分かってるわよ」
どんどん、とまたドアをノックする音がサンライズにも聴こえる。「もう切るわ」急に通信が途切れた。
ボビーの事が心配だが、とりあえず今は目の前のことを片付けるしかない。キタノに連絡を入れる。今回はすぐにキタノが出た、奇跡だ。
「ボビーが二人組の訪問を受けた。部屋には入られていないがまだ部屋の外にいる」
「ええ?」使えない感じの返事。「ちょっと待ってくださいね」何かごそごそやっている。かなり待たされ、ようやくやって来て言うには
「カンナは早く寝ました。ちょっと熱っぽくて」
サンライズ、ついにぶち切れる。
「カンナじゃない、オマエが行け。すぐに」
何か文句を言いかけたが、「はよ行けや!」いつにないリーダーの剣幕に恐れをなしたのか、キタノはすぐに通信を切った。
同時に、店内が急に騒がしくなった。




