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僕達は北高生  作者: かっつん
第2章「僕達は北高生として学校祭を楽しむべきだ」
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2-4.祝福が欲しいのなら

 広く開けた青空、転落防止の柵に、やはりブレザーに身を包んだ少女が腰かけていた。少女はウエーブのかかったロングヘアーを靡かせ振り向くと、笑顔で挨拶を交わした。


「やっと来た。こんにちは、原秋葉君。それと、確か君は、サブターゲットの戸川有希、さんだったね?」

「誰だお前……どうして俺の名前を知っている?なぜ俺達を監視するような真似をする!?」

「およよよ、質問は一問一答形式でお願いするよ?えっと?私の名前は、SSK第陸の識、桜庭三季江よ」


 やはりなにかこいつは違う……俺は手元のナイフを握りしめた。


「いや、SSKと言うより、戸川有希……別名名称未設定YUワイユーを操った組織……と言った方がわかりやs」


 ブレザー女子、桜庭が言葉を言い切る前に俺はナイフを投げつけた。しかし桜庭は首を少しそらして回避し、やれやれ、と肩をすくめた。


「危ないじゃない。今日は戦いに来たつもりじゃあないんだけどなぁ。次の質問だよ。どうして君の名前を知っているか?答えは簡単。君の時間を止める力、それはあまりにも強力すぎる。それ故に私たちの組織では君の力を借りたい、そう思って今日はやってきたんだ。それと、監視しているわけじゃなくて、できれば任意で同行してほしいから説得がしたかったんだよ。もっとも、SSKとしては生死は問わない、って言ってるんだけどね」


 桜庭はくるくると回り、スカートを翻す。そこから出てきた白衣を羽織り、襟を立てた。


「出来たら、力をどうやって使うのか、またどれだけの力を持っているのかが知りたかっただけなんだ。……もっとも、力を借りたいのは君だけじゃあないんだけどね」

「君だけじゃあ……?他にも力を持っている奴がいるのか?」

「およ?知らないのかい?それh……」


 ドカン


 そんな音が似合うだろう。屋上と階段をつなぐ鋼鉄の扉が大きな音を立てて吹っ飛んだのだ。俺と有希は横っ飛びで回避し、飛んだドアは桜庭の足元まで転がった。


「ほら、やっと来たよ。いらっしゃい。もう1人の歓迎者……長谷雄理」

「なっ!?」


 俺は振り向いた。そこには長谷が居た。馬鹿野郎、坂元と一緒に作業しててくれって言ったのに。こいつがやばい能力を持ってるのは確かだ。万が一にでもお前が死んだらどうすんだy


「久しぶりだな、三季江」

「うん、久しぶりだね。ユウちゃん」


 ……えっ?


「連絡が途絶えてからどうしたかと思ったら……」

「ごめんね?心配かけた?私は元気だよ。ほら」


 またくるくると回る桜庭。桜庭は少し距離を置く長谷を見て、少し悲しそうな顔をした。


「おい、長谷。一体どういうことだ」

「ああ。お前がブレザー少女がどーのって言ってたあたりからピンと来てたんだ。俺の幼馴染、三季江もブレザーの高校だったことに気づいていてね」

「だがこいつは……!」

「ああ。さっきまでそこに隠れていたから聞いていたよ。SSKの第陸の識、だろ?未来のお前から聞いていたんだよ。『SSKには気をつけろ、会ったら敵と思え』……ってな」


 未来の俺?長谷にも会っているのか……いったい未来の俺は何をやってるんだ?いや、今はそれよりも目の前の桜庭だ。目の前に組織の人間がいるんだ、情報を少しでも聞き出したい。


「そもそも、SSKってどんな組織なんだ」

「う~ん……言っていい事とダメな事が多いから簡単に言うと……今存在している汚れた世界を滅ぼして新たなる汚れ無き世界を作り出す為の組織、って言うのが一番わかりやすいかな」

「な……っ!?」

「ユウちゃんなら知ってるよね。世界の仕組み。私たちが存在する世界『現実界』をはじめとする数多の世界を統括するすべての収束点Ω、それと個々の世界の収束点ωの存在を……そのωを無に帰す為の名称未設定YUだったんだけど、未来から邪魔が入ったのよね。

 無の継承者であるYUにはそのまま力を引き継いでほしかった……でも未来の邪魔が大きすぎた。SSKとしても不覚だったそうだよ。伝えておくといいよ。だから間接的にではなく直々に君たちを回収しておく任務が出来た……」


 桜庭の表情に影が差し、少し涙目で訴えた。


「ねぇ!争いはしたくないよ!やめようよ!だから……お願い、私と一緒にSSKに来て!」

「断る!そんなことの為に俺達がなぜいかなくちゃならん!」

「ユウちゃん……」

「悪いが俺も断る。任意同行で何されるかわかったもんじゃない」


 桜庭はうつむいた。肩を震わせ、スカートと白衣をギュッと握りしめて。


「うん……そう……だよね……」


 絞るように声を発する桜庭。もしかして泣いているのか……?そう心配しなくてもよかったようだ。桜庭は大きく息を吸い、顔をあげた。……その顔には確かに涙も流れていた。ただ、表情は泣き顔とは異なっていた。笑っていたのだ。さらに桜庭の眼の色が変わっていた。さっきまでは澄んだ茶色だったのに、今は濁った緑色に光っている。


「あは……そう。なら……仕方ないよね。あは、だってそれは……ユウちゃんが悪いんだもん……ね?」

「な、なんかまずいスイッチを踏んだようだぞ」

「そのようね。何かが彼女に集まっている気がするわ」


 有希の言うとおり、俺達の背後からと言うより桜庭に向けて風が吹いている。桜庭の足元を見ると緑色の魔法陣が描かれている。


「やっぱりコイツもなんだかわけのわからんトンデモ能力者だったか……」

「実はな秋葉……」


 長谷が俺を呼ぶ。なんだよ、と言いつつ長谷を見ると、長谷の足元にも青色で魔法陣が描かれていた。長谷の目が蒼く光っている。お、おいまさか……


「そう。俺もお前の言う『トンデモ能力者』ってやつさ」

「なんだって!?そうか、だからあの女……」

「……そう。ユウちゃんのその……力。それも測っておきたかった……」


 桜庭が諸手を冷たいコンクリートに付ける。すると地面から木が桜庭の回りに生えだした。しかもヒョロっちい細い木ではない。大木と言えるレベルの木だ。ちょっと待て、ここは屋上、鉄筋コンクリートの上だぞ。いったいどうして……


「能力の説明はしてあげられないよ……残念だけど。あは、さて……どっちから殺して欲しい……かな?……かなぁ?」


 何故2回繰り返した。俺は有希を背後に回し庇いつつ、桜庭との距離を取った。長谷は長谷で何かぶつぶつ言っているし、どうすりゃいいんだ、おい……


「ああもう、ままよっ!」


 俺はもう訳がわからず叫んで指を鳴らした。

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