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僕達は北高生  作者: かっつん
第1章「僕達は北高生になったばかりだ」
4/33

1-4.時を超えた想い

 結局数学については自分から聞いておいてなんだが右から左で聞き流した。だが、結局学力テストは延期となり、今日は半ドンになった。その帰り道。俺は坂元と長谷と帰っていたのだが……


「帰りにゲーセンでもよってかね?」

「おっ、いいねぇ」

「あっやべぇ!忘れ物した!」

「おいおい坂元、大丈夫か?」

「明日いるやつだから取りに戻らねーと!俺今日はパスするわ!」

「気を付けてなー」

「おう、じゃーなー」


 坂元が元来た道を戻る。長谷と自転車でしゃべりながら帰っていると、長谷が深刻そうな顔をして問いかけてきた。


「なぁ、秋葉」

「ん?」

「お前、時間を操れたりしないか?」

「な……何をいきなり言い出すんだ」

「ちょうど3年前の今頃、お前たちと遊んだじゃん」

「ああ、遊んだね」

「その前に俺は学校の用事で北高に資料をもらいに行ってたんだ。その時にお前とお前によく似た人を見かけて……それからずっと気になってたんだ。どうして3年前なのに、お前が北高の制服を着ているのか。そしてお前がお前によく似た人と一緒にいたのか」

「……、……。禁則事項、だな」


 俺達は顔を見合わせて笑った。夕暮れ空が美しい。俺が見とれていると長谷が言ってきた。


「夕日はなぜ赤いか教えてやろうか?」

「この理科オタクめ。たしか赤外線がどうとかっていうやつだろ?」

「ちげーよ。夕日ってのはな……いや、今日はやめとこう。用事を思い出した。じゃあな!」


 長谷はさっさと帰ってしまった。珍しい。


―――――――――――――――――――――――――


 結局1人で帰宅中、時の架け橋にさしかかったところで人影が見えた。戸川だ。また殺されるのかと少々たじろいだが、戸川は暴走していなかった。


「秋葉」


 顔が紅潮しているのは夕日のせいだと思った。が実際はそうでなかった。


「どうしたんだ?こんなところで顔を真っ赤にして」

「貴方に……いろいろと言いたいことがあって。ここにいれば貴方が通るだろうって思ったの。ありがとう。操られた私を助けてくれて」

「ああ、それなら俺じゃないけどな」

「いいえ。貴方よ。貴方が存在するから未来の秋葉も存在していられるんだもの。全てを破壊する能力なんて私には要らないわ」

「喋り方も元に戻ったんだな」

「ええ。私の感情を抑え込んで得られたエネルギーを奴らは利用したの。利用されている間は物凄く辛かったわ。何を考えてもネガティブに繋がり、誰と話しても面白くなかった。でも、貴方だけは別だった。貴方と話していた間だけはとても楽しかったし、もっとも素に近づくことが出来たの。でも貴方に近づけば近づくほどそのエネルギーが奴らに利用されるの」

「そうか、だからあの時答えが……」

「そう、それで……秋葉に一番言いたいことがあるの……」


 戸川の顔が一層赤くなる。


「あ……あのね。わ、私はあなたのことが好きです。付き合ってください!」


 いきなりの告白。なぜか俺には心の余裕があった。戸川は続けた。


「小学校2年生、初めて会った時から、ずっとずっと思ってた。その思いを利用されて貴方を殺しかけた。迷惑なのはわかってる。ただ、貴方に思いだけは伝えたいの。組織に利用され、暴走した私を助けてくれた貴方に」


 俺も前から戸川のことは気になっていたが、所詮青春の気の迷い、すぐに消える夢だと思っていた。だが戸川の思いを聞き、言葉は自然と出た。


「お、俺もその時から気になってて……こんな俺で良かったら、こちらこそ」


 戸川は夕日より顔を赤くし、目に涙が溜まっていた。しかし、3年前の悲しみの涙ではない。喜びと幸せの感情があふれた涙だ。その証拠に戸川の顔はうれしさにあふれた満天の笑顔だった。



 夕日は煌々と輝いていた。日常と異なる日常というのも、また乙なものかもしれない。

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