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僕達は北高生  作者: かっつん
第5章「僕達は北高生と言うべきか」
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5-1.僕達の風景


『お前達が道を拓くんだ。俺達はそうして生きてきた。自分の手で、自分が起こした落とし前をつけてこい』


「……はっ!?」


 未来の俺の声で目を覚ます。あたりはまだ暗い。時計を見ると夜中の2時。……ここ最近ずっとこんな調子だ。俺、原秋葉は自分の未来に悩まされていた。どうやら俺は近い未来、強大な敵と戦う運命にある……らしい。


「SSK、世界を変える疑似STP、そして誰だか分からないSSKのボス……クッソ、なんだってんだよ」


 人知れず悪態をつき、頭を掻きまわす。未来の俺からあの言葉を言われてから早くも1週間が経過していた。だが俺はなにかする訳でもなくただ学生生活を繰り返していた。


「有希……」


 俺の彼女である有希。そのタブレットの影響で体躯が変わったせいか、体術を修得し始めたとかなんとか。


「何か、やらねぇとな……」


 SSKに指定された日まであと2週間と3日。とにかく今やるべきことは、寝る事だ。そう思った俺は布団に再度潜り込んだ。





―――――――――――――――――――――――――




「凄い顔してるわよ」

「……ああ」


 その日の朝。

 俺は結局ほとんど寝られず仕舞いで目の下に大きなクマを作り登校していた。机に突っ伏す俺を見て有希が心配そうに声を掛けてきたのだ。


「その様子だと、解らない敵に悩んでるのね」

「ああ。あの忍者野郎達との戦いでわかったことを瞬時にできるようにはなったんだが、如何せんそれ以上の事が思いつかなくてな」


 以前あの忌々しい忍者野郎共が襲ってきた時。俺は初めての事をいくつかした。絶対空間の設置、複数人が動ける時間停止、ナイフの加速……挙げていけばきりがないが、とにかくそういったことをした。そこでやれたことを近所の空き地で再現することは出来た。だが、不如帰に締め上げられた後見たあの黒い世界だけは再現できなかった。


「あの時の黒い世界を再現できたらなにか変わるかもしれないんだが……」

「秋葉の言うその黒い世界っていうのは、ひょっとしたら黑の力の精神世界なのかもしれないわね」

「精神世界?なんじゃそりゃ」

「今私が作った言葉なんだけど、秋葉に宿る黑の力をもっと引き出すための空間……ってニュアンス」

「なるほど。俺の知らない黑の潜在能力を引き出す世界、か」


 うーん。考えれば考える程、眠くなってきやがる。


「ところで秋葉、放課後空いてる?」

「特に用事はないよ。どうした?」

「ちょっとね……」


 理由を聞こうとした俺を制止するかのようにチャイムが鳴り響く。


「また後で説明するね」


 有希が小さく手を振り自分の席へ走り去る。俺はそれを返し、再度机へ突っ伏した。




―――――――――――――――――――――――――




 放課後。

 地方によっては放課後は授業じゃねぇかという突っ込みをされるんだとかなんとか知らないが、俺の言う放課後とは授業は全て終了し、下校もしくは部活動の時間の事である。これが放課後である。


「……秋葉」

「んあ?」

「もうST終わってるわ」

「ん、そうか……」


 大きく伸びをしてあたりを見渡す。教室には数人の帰宅部がいるだけで、ほとんどが部活へ行き閑散としていた。有希は小声で俺に耳打ちした。


「ここじゃまずいから……一緒に帰りながら話しましょ」

「お、おう。坂元達は?」

「準備があるからって先に帰ったわ」


 準備、か。何の準備なんだ?


「私が事前に話しておいたの。皆このままじゃダメだって思ってたみたいよ」

「何の話なんだ?」

「いいからいいから」


 そういうと有希は俺を押すように教室から追い出し、俺の腕をとり歩き始めた。一週間前の有希はこんなに積極的だったかな……?


「未来の秋葉がくれたタブレットにね、私専用の特訓方法があったの。でもそれは一人じゃやれないものだから」

「どんな特訓なんだ?それに、他に何してるのか教えてくれよ。この間聞いたのに教えてくれなかったじゃないか」

「ごめんね。これまで、私はみんなの足手まといにしかなってないもの。少しでも差を縮めたかったの」


 有希は眉を寄せつつ笑った。昇降口で靴を履きながら俺は有希の言葉を否定する。


「足手まといとか言うなよ。有希がいるから助かってるんだよ」

「それでも、私も一緒に戦いたいの。私も秋葉と同じで、何者かに作られた人間なら……ね」


 俺からしたら、有希が傷つくところなんて見たくない。だが、有希がやると決めた以上、止められないのは昔からの付き合いだからよく知っている。俺が仮に立ちはだかり止めようものならば、有希は俺を押しのけて突き進むだろう。


「……そうかい。ま、危なくなったら俺が守るさ。いままでも、これから」

「あら、頼もしいわ」


 そういうと自転車に跨り、指を刺した。


「あっちに公園があったでしょ。魁皇川公園。あそこに坂元君達もいるわ」


 俺と有希は高校のそばを走る川沿いの道を走る。机の跡が未だついたままの俺の頬を秋風が撫でる。


「そうだ、さっき言ってた特訓の成果を見てほしいんだけど」

「ん?いいぞ。攻撃系じゃないなら」

「ええ。じゃ、ちょっと向こう向いててくれる?」


 俺は有希に従い、有希とは反対側の、川の景色を楽しむことにした。秋とはいえ動くと汗ばむ季節だ。だから涼むためにはこの心地よい水のせせらぎが……なんて感傷に浸れるようなきれいな川じゃあない。べとべとドロドロしそうな色の何かが浮いていて、気持ちいいとは思えないな。


「いいよ」

「ん…………ん?」


 俺が有希の方を振り向くと、そこに有希はおらず、前方200m先で自転車を止めて手を振っていた。俺も時間を止め、有希のいた方へ移動した。


「どう、びっくりした?」

「ああ。瞬間移動か?」

「空間を縮めて移動するの。瞬間移動とは厳密には違うけれど、それっぽく見えるでしょ。私の空間を制御する能力はこういう使い方ができるのね」

「これを使えば、相手は翻弄されまくりだな」

「そうでもないわ。移動できる距離にも限界があるし、間に何か物質があるとその物質まで空間の歪みに巻き込んじゃうから、結構使える場所が限られているの」

「なるほど、相手の武器とかが移動線上にあるとそれも巻き込んで移動するから怪我をする危険があるってことか」

「そ。あら、坂元君」


 有希が指をさした方に、坂元がいる……らしい。そうか、有希は空間を探知することも出来るんだったな。坂元はどうやら俺達の方へ走ってきているようだが、アイツの背丈と、かなり離れている状態だから俺には人影がひょこひょこと動いているだけにしか見えない。


「おーい!秋葉!」


 坂元がだんだん近づいてくる。多少息を荒げている様子が伺える。


「ねぇ秋葉?ちょっとびっくりさせてみる?」


 有希がいたずらっ子のように笑う。俺も同じように口角を上げ、笑い返した。


「あぁ、そうだな」


 有希が小さく飛び上がったのを確認した俺は指を鳴らし、坂元の背後に移動した。


「さて、どういった反応をするかな……?」


 指を再度鳴らし、止めた時間を動かす。坂元が立ち止まり、左右を見渡した。


「おーい……あり?秋葉?戸川?」

「後ろだよ」

「うぉわぁっ!なんだ、時間を止めてやってきたのかよ。驚かせやがって」

「ごめんなさいね。でも、これも実戦を想定した練習なのよ」

「どういう意味だ?」

「ああ、秋葉にはまだ説明してなかったわね。公園に向かいながら説明しましょ」


 有希曰く、未来の俺からもらったタブレットには能力の強化以外にも潜在された能力を発揮させるための特訓や、これから来るSSKとの戦いを想定とした実戦方式の練習をどうしたらよいか、等の情報が織り込まれていたらしく、ここ数日はそのメニューをこなしていたんだとか。ちなみにだが、これは坂元達も同様だそうだ。


「で、坂元はどうなんだ?この数日間、特訓ばかりしてたんだろ?」

「俺は主に肉体強化がメインらしいからな。動きの素早さなら誰にも負けない自信があるぜ」

「ほぉ、そりゃすごい」

「それとな、ツルギノカミから話を聞いたんだ。昔の話だけど」

「話?どんな話だ?」

「ちっと長くなるけど、いいか?」

「ああ、構わない」


 坂元は不安と悲しみの混じった表情で笑いながら、俺と有希を見た。


「じゃあ、聞いてくれ」



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