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僕達は北高生  作者: かっつん
第3章「僕達は北高生らしく生きる」
13/33

3-3.転移・南京錠(ワープ・トゥ・ザ・ロック)


「ふーん、未来の秋葉と一緒に過去に……ねぇ」


 坂元は少し歯を見せつつ唇を曲げた。


「楽しい事してんじゃん」

「本人の命に関わらないんだったら楽しいと思うぜ」


 有希の指を指した方向に歩くこと15分。坂元に俺が経験した事実を説明すると、坂元は楽しそうに話を聞いたのだった。

 周りの世界は相変わらず反転したまま、黒いなにかも蠢いていた。


「それで?この黒い空間はどういったものなんだ?」

「それが……俺も長谷もさっぱりなんだ。不完全に停止した時間も、この色彩が反転した世界も」

「でもこうして外に出たってことは、なにか察するモノがあるんだろ?」


 坂元が長谷と有希を見つつ言う。2人はどうやら波長を探っているようで、時々ゆっくり目を閉じては耳を澄ましている。


「……ああ。SSKとかいう組織が俺と、有希の持つ力を回収したがっている。学校祭準備の時にも奴らは俺達を襲ってきて、俺と有希を回収しようとした」

「今度は組織の登場か。まぁいいや。そのナントカKってのはそんなに秋葉と戸川の能力が欲しいのか?」

「のようだな。それと長谷の能力についてもデータを残したかったみたいなことを言ってたな」


 坂元は腕を組み、細い目をさらに細めて首をかしげた。


「……俺は少なくとも秋葉よりは頭はいい方だと思うが、状況を理解できん」

「一言余計だっつの。で、だ。奴らは俺達を欲しがってはいるが、どうやら生死は問わないようなんだ」

「と、言うと?」

「俺も長谷も有希も、みんな生まれながらにこの能力を持っていた訳じゃない。第三者が能力を与えたことで能力を手にしたんだ。しかも有希に至ってはSSK自身が有希に能力を与えて過去の俺を襲うよう仕向けた。それが失敗した今、有希を回収したがっている。これから考えられるのは俺達の体は関係なく、能力自体を欲しがっているってことだろ」

「ふぅん……」


 思えば、未来の俺はどうしてSSKが欲しがるような能力を俺に与えたのだろうか。未来の俺がやってくる時代では既にSSKは存在しないのだろうか。

 思案が蠢く中、坂元はまたニヤリと笑った。


「でも、憧れてた非日常を楽しめるなんて羨ましいぜ」

「当事者の身にもなってくれよ……」


――――――――――――――――――――――――



「着いたわ」


 そうこうしているうちに、有希が呆れ顔で俺達を見る。


「まったく……下手したら死ぬかもしれないんだから、少しは緊張感持ってよ」

「すまん。それで、ここは……」

「県立東高校よ」


 県立東高校。俺達はガシ校と呼んでいる。俺達の通う北高から徒歩30分。俺の通学路の途中にある高校。制服はブレザー。


「ガシ校といえば……女子の制服が可愛いよな。特に秋冬に着てるあのブレザーがさ」

「坂元……」


 呆れ半分の長谷が咎める。


「まぁ気持ちはわからなくはないけどさぁ……確か、三季江もこの高校だったな」

「三季江って桜庭三季江か?」


 長谷の言葉に脳裏にふっと思い出す。学校祭の準備中、俺達を襲った桜の能力者。出会った刹那桜花結界とかなんとか張りやがって、いきなり俺達に襲い掛かりやがった。


「そう。北高の近くでこんなに広い何もない土地があるのはここだしね」


 校門をくぐり、運動場を見渡す。体育の授業の準備中なのか、数人の生徒がボールを手にしている。その生徒も全員停止している。

ふと、運動場の中央付近に目が留まる。


「あれは……?」


 俺達は運動場に転がる「何か」を見に走る。近づくと、小さな南京錠だった。


「南京錠……?どうしてこんなのがここに」


『それは触れた者を誘い込む為さ』


「!?誰だ!」


 どこからか声が聞こえる。その声の主を見つけ出す前に、俺達の足元に大きな穴が広がった。


「落とし穴!?」


『そう……古典的な罠、落とし穴』


「うわあああああああああああああっっ!」


 落ちていく。

  落ちていく。

   落ちていく。












―――――――――――――――――――


 俺達は同時に母なる大地に叩きつけられた。


「有希!長谷!坂元!」

「いってぇ!」

「秋葉、無事よ」

「なんだここは……」


 夜のような暗さ。見渡す限りの木、木、木……俺達が落ちたところはどうやら森の中のようだ。


「どうして俺達こんなところに……!?」

「どうやらこいつらで正解のようだな」


 突如、背後から俺達以外の低い声がする。あの声の主だ。俺達4人は車道に飛び出た猫の如く振り向く。

 後方3メートル。そこに2人の男性が立っていた。


「誰だ!?」


 暗い中目を凝らす。2人の男はどちらも伊賀や甲賀にいるなら違和感のない恰好をしていた。かつて戦国時代から影となり密偵や暗殺に活躍したとされる柿色の装束。シュシュッと参上しハリケーンを巻き起こすあの格好だ。


「忍者……?」

「そうだ。我らは忍者だ。貴様らには死んでもらう」


 片方の男がそういうと苦無を手に飛びかかってきた。3メートル程離れていたはずなのに男は一足で俺達の目の前にいた。俺達はとっさに2手にわかれて攻撃を回避、男は俺達のいた空間を抉り取った。


「おいおいおいおい!何の因縁か知らねぇがいきなり襲い掛かるなんて何考えてるんだ!」

「やはり……否、流石と言っておこうか。これまで10数人疑似STPの中で動ける者を罠に誘い込み始末してきたが……縮地の術に反応するとはな」

「STP……?やはりSSKの仕業か」


 男の単語に長谷が反応する。


「……貴様は長谷雄理だな。殺せとの命だ。おとなしく死ね」

「兄さん、自己紹介もせず襲うのはよくないよ。あの方も言ってたじゃないか」


 再び襲おうとした男を終始黙っていた片割れが口を開き、制した。兄さんと呼ぶということは兄弟……なのか。兄忍者は縮地の術とやらでもう一人の元へ戻りつつ、言葉をつないだ。


「あの方の指示は絶対。業腹だが、仕方ない……」


 忍者の2人は顔を覆っていた布を外し、顔を見せた。兄の方は険しく、どこかで一人二人殺めていてもおかしくない……いや、既に始末していると言っていたし殺めているのか。そんな表情をしている。一方弟の方は温厚そうな表情をしている。しかしどこか冷たい雰囲気を醸し出している。


「俺はSSK第肆(4)の識、かく

「僕はその弟、SSK第伍(5)の識、不如帰ふじょき

「あの方から命を受け、原秋葉と長谷雄理、そして名称未設定YUの回収をしに来た。そして坂元悠介……貴様をぶっ殺しに来た!!」


 鵤の表情が豹変し、苦無を手に坂元に向かって襲い掛かった。坂元は鵤の苦無を竹刀で受け止め、後ろに下がった。


「その言い方……俺だけ私怨っぽいな。どうやら理由もなく殺しに来たって訳じゃあなさそうだな」

「兄さん、僕はどうすればいい?」

「不如帰、お前は原秋葉と名称未設定YUを殺れ」

「わかったよ」


 そういうと不如帰は手で印を結ぶ。すると俺と有希の周りに結界が張られた。


「じゃあ、兄さん頑張ってね」


 その言葉がこの瞬間の俺の意識の最後だった。




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