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遠出

 

(一年目 七月二十四日)


 昨日一日は冒険の準備に当てて、今日早朝、朝の4時に起きて、5時には玲奈たちは皇都を出発した。

 絶対に今日中に目的地に着きたいので、できるだけ朝早くに出発することにしたのだ。夏なので、早朝でも寒くなく、空はうっすらと明るい。またこの世界の住民は早寝早起きで、皇都は宗教都市なのでさらに朝が早く、神官たちは大神殿に向かって街を歩き、その神官に朝食を売る屋台がすでに店を開いていた。


 玲奈はスドンに念のため2万Gを渡しておき、2000Gまでならば自由に使ってもいいと伝えた。

 この時間では流石に大神殿に観光客は来ておらず、大神殿では神官たちによる、真面目な朝のお勤めが行われている。

 あまり早くに大神殿に行くと、スドンが神官たちに顔を覚えられてしまうかもしれない。スドンが頻繁に聖堂で祈っていることが気付かれれば、神聖魔法のスキル上げの裏技を玲奈たちが知っているとばれてしまうかもしれない。

 もう少し観光客が増えるまで、適当な場所で時間をつぶすように、スドンには伝えた。


 スドンは知らない街で、落ち着ける場所も知らず、丸一日時間をつぶさなければならない。

 一日中スキル上げをしている必要はない、適当に出店をひやかして遊んでいてもいいからと、言い付けて玲奈たちは皇都を出発した。



 皇都の周辺部は平野が広がっている。

 平野では農業が盛んで、消費と交易が盛んな皇都に向けた農作物がたくさん作られている。皇都を出たからといってすぐにモンスターがとびまわっている危険な地域に出るわけではなく、しばらくは住宅地と農地が続いている。

 玲奈から見ると長閑な田園風景というところだが、田舎の農村出身のギリムに言わせると、こんなものは農村ではなく街だという。日本で言えば、近郊農業地域というところかもしれない。


「ギリム、《防御上昇(ディフェンスアップ)》。フルー、注意を引いて。ギリム、命中を使って」


「《活性(アクティヴィティ)》。《挑発(タウント)》」


 ノネズミが、飛び出してきた。


「はい。《活性(アクティヴィティ)》。行くぞ、命、中」


 この辺りは普通の村人が畑仕事をしている場所だ。危険なモンスターが出るようでは危なくて仕事にならない。

 村人たちでも追い払うことのできる、ネズミやウサギ、昆虫といったモンスターが一匹ずつ現れるだけだ。


 ギリムがステップを踏んで、ノネズミに一気に近付く。

 短剣を振り下ろしながら、バックステップで後退した。


(ノネズミ相手でも、相変わらず慎重っていうか、ビビりっていうか)


 ノネズミはギリムに斬りつけられても、挑発を使っているフルーが気になって、ギリムの存在に注意を払うことができない。

 ギリムは一拍置いてから、もう一度ステップを踏んで、ノネズミに斬りかかる。

 ノネズミの胴体に短剣を真っ直ぐ突き刺し、素早く引き抜いた。

 経験値がパーティーに分配された気配があり、ノネズミは絶命した。


「うん、うまくいった。ギリムが一撃も受けなかったら、防御上昇をかけても私に経験値流れてこないし、攻撃上昇かけてなくても二発で倒せたわ。このレベルのモンスターだったら、もう危な気ないわね。

 道中モンスターを見付けたら、できるだけ倒して歩くことにする?」


「マスター、あまりモンスターを倒すことに夢中になっていては、今日中に目的地にまで着けないぞ」


「ん、あー、そうかな」


 どこかに行く時、道中ついででモンスターを倒した方が効率がいいのは、ゲームの中だけの話かもしれない。少なくともゲームの中では、夜が来ても焦る必要はない。

 またゲームのように、旅の間中ずっと走り続けて進むことも、現実的とは思えない。もしかしたら、物理職の高レベルの冒険者たちならば、走って移動をしたりもするかもしれないが、玲奈にはぴんとこない。


「ギリム、モンスターの死骸ここに置いておいていいかな」


「そんなことまで気にしなくていいと思いますけど」


 ノネズミを解体して、体内の魔素の結晶だけをインベントリにしまう。


「ギリム、索敵したら、モンスターはどれくらい居る?」


「え、すごくたくさん、居ます」


「ん、そう? 索敵がどんな見え方をするのかいまいち分からなくて」


 ギリムは歩きながら、頭をかいた。


「見えるっていうのとは、ちょっと違いますよ。分かる、っていうか。あっちに居るな、とか。でもまだスキルが低いんで、ぼんやりとしか分かんないこともあります。

 スキルの指導役は、地図を見るみたいに意識しろって言ってたんですけど、俺最近まで地図とか見たことなかったし。

 モンスターの種類が多いから、迷宮よりもややこしいです」


「言っておくけど、迷宮は確かに外よりはモンスターの種類がすくないかもしれないけど、魔法学園の迷宮みたいに1階層に1種類って決まってるのはほとんどないからね。

 んー、でも、迷宮の方が分かりやすいんだ?」


「いえ、確かに迷宮の方が分かりやすいんですけど。

 迷宮は、索敵スキルが使える範囲がすごく狭いです。壁とかが特殊なんじゃねえかな、1枚2枚壁を隔てると、もう気配が分からないんです。

 外だと、大体見渡す限り索敵はできます。細かいことは分からないですけど、向こうの道の果てにでもすごく強いモンスターが居たら、気付けます。でも遠いと、細かいことまでは」


 長閑な田園風景が、はるか遠くまで広がっている。

 そしとこの見える範囲の中に、低レベルのモンスターたちは数えきれないほど生きているだろう。だが弱く人里近くで暮らしているモンスターなので、人間の怖さもよく知っていて、こちらから手を出さなければ襲いかかってくることもあまりない。


「強いモンスターの方が、分かりやすい?」


「まあ、そうっすね。強いモンスターの方が、はっきり遠くからでも分かります。

 弱いモンスターは、数が多いし、人里近くだと人間と区別がつきません。皇都の方角とかもう、数が多すぎて、何がなんだか」


「え、人間とモンスター、同じ扱いなんだ?」


 話している間に、目の前にバッタが跳びだしてきたけれど、今回はそれを無視することにした。


「どうする、マスター。倒すか?」


「モンスターにちょっかいを出すのは、もうちょっと目的地に近付いてからにしようか。今日中につけるメドがたってからってことで」


 玲奈を庇うように、フルーはわずかに彼女に近付いたけれど、特に警戒している様子はない。日本で、並んで歩いていて車が横を通過するときに、男性が少し歩く位置を変えて女性を庇うのに似ている。

 ギリムでさえ、当然のような顔でバッタを無視した。

 こちらの世界の人間にすれば、低レベルのモンスターはありふれた存在だ。普通に生活しているすぐ隣で、同じように生きている。元の世界の自動車のように、危険なのは分かっているけれど、身近に存在し過ぎていて、いちいち警戒していては身がもたない。


 そしてこの中で一番モンスターに慣れていないのは、比べるまでもなく、この世界で育っていない玲奈なのだ。


「ギリム、じゃあ、低レベルのモンスターはこの近くだったらどの辺りにどれくらい居る?」


「この近く、ですか。だったら、そことか、そことか」


 ギリムは、道沿いの畑の中をひょいひょい指差した。


「もうちょっとレベルのあるモンスターだと、そこの木の後ろにウサギか何か」


 ギリムがひょいひょい指を差すので、そこら中にモンスターが居るのが分かる。


「へえ。思ったより多いっていうか、これくらい多くて当然っていうか」


「いや、マスター。索敵スキルを持つ仲間でもいない限り、そんなにたくさんモンスターが居るとは気付けないものだろう」


 フルーはちょっと目を見張って、周囲を見回した。


 索敵スキルもなかなかに有用だ。なければないで問題は感じなかったかもしれないが、どんな敵が出てくるか分かりにくいフィールドで、索敵が使えることはかなりの安心感をもたらす。しかし、観察スキルも装飾細工スキルと相性が良さそうで、スキル20まで育ててしまえば捨てるのが勿体ない気がする。


「索敵スキルは、もしギリムが捨てることになれば、別のパーティーメンバーの誰かに取らせるつもりだけど……。取りたいスキルはいっぱいあるし、もうパーティーは残り二人しか枠ないしなあ」


「少し、気がはやくないか、マスター。まだ新入りたちのスキルはどれも、大してスキルが上がった訳でもないのだから。まともに試せてもいない」


 フルーは、気の早い玲奈のセリフに笑った。


「まあ、私の記憶違いで、観察も索敵もどっちも間違いだったって可能性もあるんだしね」


 それは困る、という顔で、ギリムは顔をしかめた。







「あ、川っ」


 田園地域と、人の手の回りきらない小さな草原を交互に抜けて、玲奈たちは道を進む。

 途中で小川を見付けて、そこで昼食をとることにした。自然の清流というよりも、畑などに水を流すための用水路か何かなのだと思うが、日本で見る用水路などよりはずっと綺麗な水だ。


 玲奈はしゃがんで水を汲もうとしたが、やはり綺麗そうに見えても用水路だと思い直し、止めた。今の玲奈は魔法で水が出せるのだ。

 皇都で買っておいた、スープと炒めた肉と野菜を挟んだパンを食べる。

 アイテムボックスに入れておいた料理は、こぼれないし冷めない。すごく便利だ。


 屋台で買った昼食は、ソースの味が濃くて、すぐに飽きてしまいそうな味がする。しかし、油っこくて安っぽいこの味が、玲奈は嫌いではない。

 ただし、この世界の物価と照らし合わせて考えると、この屋台の料理も結構高価だ。


「この川がこれだから、今ここらへんかな」


 玲奈は料理をこぼさないように気を付けながら、地図を覗き込む。

 腕や膝の装備を外して、草の上に座り込む。早朝5時に皇都を出発して、今で6時間程歩きっぱなしだ。


「思ったより順調に来てるじゃない。この調子だったら余裕でしょう」


「私の経験から言わせてもらうと、道程の後半の1割が、一番辛いんだ」


 距離は、予定の街までもう6、7割くらい進んでいる。この調子ならば後3、4時間で、夕方までに目的地に着けるかもしれない。


「そうなの?」


「まあ、これまでの経験から言うと、というだけの話だが」


 玲奈の倍の量の昼食を素早く食べ終えたフルーは、全身の金属鎧のうち、頭装備と膝当てだけを外して地面に座っている。

 堪らなく、暑そうだし、重そうだ。重さの方は、腕力が上がるにつれて気にならなくなるのかもしれないが。でないと、レベルが上がるほど身につけられる装備が変化する理由がない。


 玲奈も魔法職だからあまり自覚はないけれど、レベルが上がるにつれて腕力や体力が上がっているはずだ。レベルが12になったのだから、ステータスだって元々と比べれば数倍に上がっているだろう。

 ちょっとした、化け物だ。


 だからこの世界では、レベルの高い相手ならば、奴隷だろうが料理人だろうが尊敬される。

 生き物としての次元が違う。文字通り、レベルが違うのだ。


(そういえば、半日も結構早いペースで歩き続けてるのに、意外と平気だよね。

 レベルが上がってるせいで、体力上がってるんだろうな、本当に)






 太陽が高いところに存在する。

 午後になって、気温が上がった。

 いくら涼しい地域とはいえ、もう7月、真夏なのだ。



 林の中の道は、案外歩き易かった。

 林と言っても人里近くにある、人の手の入った人工林だ。村人たちが木材が必要になれば、探しにくる林なのだ。

 それなりに人が歩いたせいで踏み固められた道は、畑の中の農道とあまり変わらない。

 木々で頭上に影ができて、涼しくてあまり疲れないで歩くことができた。


 そのことに気付いたのは、林から出て畑の中を久しぶりに歩き始めた時だった。



「ギリム、一応、周りに強いモンスターが居ないか、索敵」


「……ぁい」


 顔を真っ赤にして、のろのろと顔を上げたギリムは、索敵を使いながら周囲を見渡す。

 玲奈が貸してやった木の杖に体重をかけて凭れながら立っている。


「ぃません」


 昼食を食べた後くらいから、徐々に口数が少なくなってきていたが、今は玲奈が声をかけてもろくに返事もできていない。

 玲奈はギリムに、水の入った水筒を押し付けた。


 玲奈だって暑くてたまらない。

 皮の頭装備は汗がこもり、蒸してすごく気持ち悪い。しかしこれを外すと直射日光を受けることになるので、それはそれで別の種類のたまらない暑さだ。


 玲奈は時々装備品を外して、汗に風を受けて涼む。

 しかし、ギリムはそんなことをする余裕もないらしい。

 玲奈が声をかけても、面倒そうに頷くだけで、話すために頭を使うことだけでも、今の彼から体力を奪っていくらしい。


「ちょっと休憩する?」


「休憩か……。座り込むと、もう立ち上がれなさそうだが。

 日向で休んだところで暑いだけだろう。向こうに木が立っているから、あの下まで行って休もう」


 フルーはそう言って、遠くにぽつりと見える一本の木を指差した。

 見えるところにあるとはいえ、周囲には一面に畑が広がっている。あの木が、遠いのだ。


 さらに遠くには、目的地の街が小さく見えている。後一時間くらい、良いペースで歩ければ着くだろう。

 玲奈から見れば街ともいえないような集落だが、この世界ではワープポイントが設置されている程度には大きな街に当たる。


 ギリムは玲奈たちの会話が聞こえているのかいないのか、木の杖に体重をかけて、一歩ずつのろのろと進んでいる。ヘッドギアのように頭を覆っている合皮の頭装備が重くてたまらないように見えて、玲奈は彼の頭からそれをむしるように取り外してやった。

 水筒を傾けて頭から水をかけて、タオルを頭からかぶせる。


「ギリム、《小治癒(スモールヒール)》」


 魔法をかけてみるが、ステータスを見たところで、HPが減っていたわけでもない。しかしHPが減っていなくても、このまま歩かせ続けていれば、ギリムは死んでしまいそうだ。


 もしかすると、疲労やスタミナといった隠しステータスが存在するのかもしれないし、この世界はゲームではなく現実なのだから、HPでははかりきることなどできないのかもしれない。


 三人は、ギリムのペースに合わせてのろのろと農道を進んでいく。


「うーん、やばいなあ」


 玲奈はギリムに目をやって、困ったように言った。


「残りは、私が背負って連れて行くしかあるまい。

 私も、全身金属鎧を着たまま、誰かを背負うのは難しい。あそこに着いたら着替えることにするので、そこまでは頑張って歩いてくれ」


「道程の最後の1割が一番つらいって、こういうこと言ってたの?」


「ああ、マスター。最後で力尽きるのは、よくある失敗だな。

 大して親しくもないメンバーでパーティーを組んでいたならば、途中で置いて行かれてしまうだろう。

 ドロップアイテムがたくさん入っているインベントリと比べれば、ギリムは軽いくらいだ。特に問題なく歩けると思うが。私も、旅の途中で誰かを背負うのは初めてなのでな」


 フルーはやや困惑した様子で言う。


「ごめん、フルー。背負っていける? 大丈夫? インベントリは私が持つから。

 本当、ごめんねー。

 ああ、失敗しちゃった。計画が甘すぎたかなあ」


「マスターが気にするようなことではない。奴隷の私たちがマスターの期待に応えられなかったのは、私たちの力不足だ。

 計画を立てる最中に、私たちだって意見を述べる機会は与えられていたのだから。

 最も冒険の経験を持つのは私であるのに、レベルの低いギリムをフォローしきれなかった」


「……うん」


 玲奈は、あいまいに頷く。


(でも、やっぱり、私の計画が甘かったからだよ。このパーティーのリーダーは、私なんだから)


 のろのろと三人は、葉を茂らせた木の下にたどり着くと、そこにギリムは座り込んだ。


「ギリム~、大丈夫?

 悪いんだけど、一応索敵して」


「……はい。さ、くてき。

 強いのは、居ません。木の枝に、低レベルの、ちょっと」


 下から木を見上げると、スズメのような鳥が何羽か木にとまっている。

 普通の、玲奈の世界にも居そうな攻撃力のなさそうな動物だ。同じ低レベルのモンスターでも、サイズの大きい虫なんかにはぎょっとしてしまうが、これくらいならば心配はいらないだろう。


 玲奈はギリムに水筒を渡して、背後に回って彼の体の皮鎧を外すことにした。

 普段のギリムならば、他人にそんなことをされれば黙ってされるがままになっていることなど絶対にないが、今は何も考えられない様子で、ボーっとしている。

 フルーは二人の隣で、木の上の鳥を睨み付けながら、低レベルのモンスターとはいえ一応の警戒を怠らない。



「でさあ、フルー。今回の遠出、何が問題だったかなあ。距離が遠過ぎたのか、ペースが速すぎたのか。

 目的地が遠過ぎて、たどり着けないことは想定してたけど、ギリムだけがダウンしちゃうとか。

 やっぱりレベルの問題?」


「そうだな。レベル、というか。

 見た目やイメージに惑わされていたが、マスターよりギリムの方が、体力や腕力が低いということを忘れていたのが、敗因ではないだろうか。

 私は、本来ならばもっと早いペースでも進むことができたが、今回歩くペースを、マスターに合わせて落としていた。だがマスターではなく、最も体力が低いギリムに合わせるべきだったのだろう」


「うん。そうだね。

 実は私も、自分が一番体力がないと思ってた。今日の遠出でも、私、この距離あるけるかな、とか心配してたけど、他の子のことあんまり心配してなかったよ。

 でも、ギリムのほうが私よりずっとレベル低いんだもんね」


 ギリムは全身の合皮の鎧を全て外してやり、ぐったりと地面で寝転がっている。フルーはギリムを背負うために、胴の装備だけを外すことにしたらしく、金具を外して装備を脱いでいる。


「いや、マスター。必ずしもレベルの問題ではない、ステータスの問題だ。

 レベル4のギリムと、レベル12のマスターでは、ステータスが違う。だが同じレベル4でも、スドンのHPは今74だったか。体力のステータスにおいては、マスターよりも優れているだろう。スドンは体力と腕力が高いタイプだ。

 だがギリムは、敏捷と器用さのステータスが高いタイプだ。これは、長距離の移動に関してプラスになるステータスではないだろう」


 確かに、素早いタイプの戦士は、スタミナがすぐに尽きるイメージはある。


「んー。じゃあ、スドンだったら、遠出に連れて来ても問題なかったかもしれない?」


 フルーは、難しい顔をして少し考え込んでいる。


「いや、考えてみると。

 スドンは、あいつはマイペースな男だ。その上、動きが遅い。敏捷のステータスが低いせいだろうが。

 ギリムのように途中で倒れることはないだろうが、今度はマスターが心配したように、夜までに目的地にたどり着けていなかった可能性が高いだろう。そして、あいつを背負って歩くよりは、私はギリムを背負って歩くほうを望もう」


 玲奈はフルーが脱いだ鎧を、アイテムボックスにしまった。

 フルーは、ギリムを背負っていても、剣は念のために装備したままにするらしい。

 玲奈がインベントリを持ってみると、予備の棍棒やら短剣やら着替えやらで、大したものは入っていないはずなのに結構重い。フルーが持ってくれるからと言って、必要のない荷物が多いことに、やや反省をする。


「じゃあ、ギリムのレベルが上がって、体力とか腕力が上がって。スドンのレベルが上がって、そこそこのスピードで歩けるようになるまで。うーん、私たち二人で、あちこち探索するしかないかな」


「ふんっ。そうだな」


 フルーは、ギリムを背負って立ち上がった。

 炎天下の農道を、歩き始める。


(なかなか、ゲームの世界が現実になると、簡単にはいかないな)


 玲奈は重いインベントリを持ち上げて、その後を着いていく。






 目的の街に到着したのは、2時間後。

 ギリムはその夜、夕飯を食べる余裕もなく寝込んだ。

 汚れたままで水浴びをすることなくベッドに入ったので、翌日彼は、手入れを怠った皮鎧とベッドのシーツを必死に洗っていた。


 ハチの巣退治のクエストの実行は、さらにその翌日のこととなる。






 Lv12 見習い魔法使い

 レイナ・ハナガキ ヒューマン 

 HP/MP 76/114

 スキル 杖Lv19 瞑想Lv18 魔術運用Lv12 付与魔法Lv16 神聖魔法Lv11 四元魔法Lv18 特殊魔法Lv30 暗黒魔法Lv13 料理Lv39


 Lv12 見習い戦士

 フルーバドラシュ ドラゴニュート

 HP/MP 182/35

 スキル 剣Lv25 盾Lv16 重装備Lv11 活性Lv18 戦闘技術Lv12 挑発Lv16 調合Lv30


 Lv4 見習い戦士

 ギリム ヒューマン

 HP/MP 35/8

 スキル 短剣Lv5 投擲Lv3 命中Lv4 活性Lv4 踏舞Lv9 跳躍Lv5 観察Lv4 索敵Lv7 装飾細工Lv1


 Lv4 見習い戦士

 スドン ハーフフェアリー(アース)

 HP/MP 74/21

 スキル ハンマーLv8 盾Lv5 重装備Lv2 活性Lv5 戦闘技術Lv2 挑発Lv4 魔術運用Lv2 神聖魔法Lv4 鍛治Lv8




あけましておめでとうございます。

お久しぶりです。

しばらく間が空いてしまいました。

またのんびりと、ほのぼのと、物語を続けていきたいと思います。

素早くレベルアップしたり、強敵と戦うことはあまりないと思いますが、のんびりこの作品を楽しんで頂けたらと思います。

今年もよろしくお願いいたします。


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