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ヒヅメキツネ

 馬車内の冒険者たちは慌ただしく動き出し、連なって走っていた後方の馬車に合図を出す。

 玲奈たちもフルーに言われて、外していた腕や足の装備を身につける。玲奈は頭の中で、パーティーメンバーのステータスを開いた。

 ギリムとスドンの名前を今そこに見ることはできない。彼女はフルーとともに、馬車の護衛の冒険者たちとパーティーを組んでいるからだ。しかしギリムたちはどういう扱いなのか、パーティーを解散しても、玲奈の仲間としてステータスを見ることができる。仲間とは、ゲームの頃パーティーを組んでいないが、いつでもパーティーメンバーにすることができる、味方NPCが振り分けられていた位置だ。


「すみません、お二人の今のHP量を教えてもらえませんか」


 玲奈は出会ったばかりの冒険者二人に尋ねた。本当は、ステータス画面で見ることができるのだが、普通の人は見えないものなので、一応尋ねておくのだ。実際の戦闘中は、数字で書かれた分かりやすいHP表示に頼る気満々だった。


 壮年のがっしりとした体格の冒険者が、彼女に答えた。見た目は荒くれ者で怖そうなのに、年下の彼女に対して丁寧な口調で答えてくれる。


「ああ、ありがとうございます、魔法使い様。俺はHPが180、こいつは150です。あっちの馬車に乗ってる盾使いは230、弓使いは140です」


「えっと、あなたと、盾使いの方が前衛ですよね。全員に防御上昇の付与魔法をかけます。攻撃上昇は、誰を優先してかければいいでしょう?」


 冒険者たちは、別に特に親しいわけでもなく、この仕事でたまたま一緒に組むことになっただけの関係だ。それでも彼らはこれまで、半月程一緒に戦ってきたらしい。


「それでは、俺と弓使いを優先的にお願いします。HP回復は、盾使いを優先してください。HPが60をきったら、声を上げて回復を求めます。HPが30をきりそうならば、回復を待たずにこちらでポーションを使います。その時はまた声を上げますから、ポーションを使った後に同じ冒険者を回復しないようにお願いします。それと、竜人以外の奴隷たちはどうしますか?」


 玲奈が話している彼は、4人の中で一番レベルの高い21、剣と盾使いだ。一番レベルが低いのは、この馬車に乗っている槍使いで、レベル14だった。彼は玲奈たちとほとんどレベルが変わらないし、HP量はフルーの方がかなり多い。


「えっと、まだレベル3なんですけど、どうすれば」


「そうですね。ポーションなどを出して援助してもらえればありがたいんですが。他の客と御者を一台の馬車に寄せて、片方の馬車を空けます。それに乗って、窓から手伝っていただけませんか。危険ならば、窓を閉めればある程度は防げますので」


「分かりました、構いません。一人は投擲が使えるんですが、投げナイフで攻撃しても邪魔になりませんか?」


「はい、お願いします。後でHPポーションをいくつかお渡ししておきます」


 初級HPポーションは、一つ600Gで、回復量は30くらいだ。一番安い武器や装備が3000Gあればひととおりそろえられることを考えると、ポーション類はかなり高価だった。初級MPポーションなんて、回復量が20くらいしかない。

 だから冒険者たちは、ポーションにあまり頼ることができない。活性や瞑想スキルでちまちま回復しながら、なんとか冒険をこなす。こちらのエリアでは、魔法職を仲間にして回復してもらうことは、かなり珍しく難しいことだ。

 玲奈も、フルーが調合スキルを持っていなくて、ポーションを買って入手しなければならないと思うと、ぞっとする。あまり使わないようにしているが、ポーションはいざというときの命綱なので、今だってアイテムボックスに各種100個単位で持ってきている。


「どのタイミングでポーションを使えばいいでしょうか」


「それは、魔法使い様が回復する補助にお使いください。魔法使い様の判断で使っていただいて構いません。弓使いが後衛に居ますので、魔法使い様の腕力では前衛までポーションを投げられないときは、弓使いにアイテムを渡して投げさせてください。

 また、俺たちが何かのアイテムを要求したら、すぐに出して渡してくれるようにお願いします」


 冒険の中で、臨時にパーティーを組んだ冒険者たちにとって、誰がポーションを使ったかという問題は、ドロップアイテムの分配に次いで、揉める元になるらしい。フルーが言っていた。

 ポーションを主に使用するのは前衛だが、前衛だけがポーション代を工面するのは不公平だ。また戦闘中の危険な局面で仲間のためにポーションを使ってあげて、後でその代金で揉めることがあるらしい。またポーション代を全員で出し合うことにすると、誰が無駄遣いだ、などと仲間の間で必ず文句がでるという。


 そういうことで、問題が起こりやすいポーション使用の采配を、パーティーで一番立場が上になりがちの魔法職に任せることは、処世術なのだ。魔法職はHPポーションの使用とはあまり関係ないので、第三者的な立場で揉め事をおさめることができる。


 パーティーメンバーも魔法職の人間の采配に文句は言えない。玲奈が思っていたよりも、このエリアにおける魔法職の立場はずっと強いようだ。


「モンスターが近付いてきたようです。そろそろ馬車を止めます。この馬車に乗っている一般人の乗客を、あちらの馬車に固めます。乗客たちを護衛しなければなりませんので、少し手伝ってください」





「《防御上昇(ディフェンスアップ)》」


 乗客たちが乗っている馬車に、大きなカバーをかぶせ、モンスターの餌として狙われるかもしれない馬を外す。

 こうしておけば、こちらの馬車はモンスターに気付かれず、無事にすむかもしれないのだ。その場合、護衛についていた冒険者たちはモンスターの餌になっているが、それも仕事の一部だ。


(もし、本当にやばそうだったら、パーティー組み直してうちのメンバーだけ連れて、ワープで逃げよう。もしもだけど、その場合、ちゃんとタイミングを見極めないと)


 玲奈は仕事を請け負っているわけではないので、冒険者たちの支援はするが、体を張ってモンスターの餌にまでなる義理はない。


 ギリムは馬車の窓から索敵を使って、モンスターたちの様子を伺っていた。

 玲奈はギリムたちの残る馬車の近くに立っていて、フルーは玲奈を守る盾として彼女のそばで身構えている。

 馬車の護衛である4人の冒険者のうち、後衛である弓使いも玲奈たちの近くで周囲を伺っていた。


「弓使いさん、《防御上昇(ディフェンスアップ)》。《攻撃上昇(アタックアップ)》。

瞑想(メディテーション)》」


「あ、ありがとうございます」


 玲奈は今、冒険者たちに順番に付与魔法をかけている。初めにフルーの武器に付与炎もかけていて、フルーに止められた。今から戦う敵が、どんなモンスターか分からないからだ。モンスターが属性をもっていたら、属性付与の魔法がマイナスに働くかもしれない。

 特に、草原や森で暮らす獣系のモンスターは、火属性を帯びているものが多い。

 火属性のモンスターには、むしろ水属性がきく。しかし水属性は、同じ水属性や地属性のモンスターにはあまりきかない。



「見えました!」


 索敵と遠見のスキルを持つらしい弓使いが、声を上げて仲間に知らせる。

 しばらくすると、木々の隙間にちらりと赤い体が見えた。玲奈はあまり目がよくない。


「何?」


「キツネだ」


 弓使いは、先制攻撃に弓を引き絞った。


 キャインッ。

 キツネは矢に当たったのか、一声上げるとその場に身を低くした。

 弓の攻撃力は結構高い。攻撃力が腕力のステータスにあまり依存しないので、腕力が低い人間にとってそこを補うことができる。しかし攻撃力が高いといっても攻撃魔法使いほどでもなく、なのに前衛と組まないとまともに働けない、なかなか難しいジョブだ。


 ちらほらと、森の木々の隙間から現れるキツネの数が増える。


「ギリム、届きそうだったらナイフ投げてもいいよ。付与遅滞かけるね」


「あ、分かりました。

 玲奈様、リーダーっぽい奴を狙ったほうがいいですかね」


「うん。届くようなら。大した攻撃力は無いから、状態異常にかけるつもりでいいんじゃない。だから、リーダーとか狙って。

 リーダー、居るんだ?」


「はい、俺のスキルじゃまだよく分からないですけど、強そうなのが何匹か」


 弓使いは、少しでもモンスターを削っておこうとちまちま矢を放っている。

 ひらりと、遠くで一匹濃い赤色が輝いた。


(燃えてる)


「出ました!

 群れのリーダー、ヒヅメキツネ、火属性です!」


「「「おう!」」」


 前衛の三人が、ヒヅメキツネの方へ向かって寄り集まった。挑発スキルを使い、巨大な盾で身を守る。


「《防御上昇(ディフェンスアップ)》。剣っ、《付与水(エンチャントウォータ)》!」


 玲奈は、パーティーの中で一番レベルの高い盾と剣の冒険者に、付与魔法をかけた。彼が一番攻撃力が高い。


 ヒヅメキツネは、馬よりも一回りくらい大きな体で、盾に向かって駆けよってきた。

 その毛並みは美しく赤く輝いている。まるで炎でできたような体だ。


 弓を放ちながら、玲奈の隣の冒険者は解説した。


「キツネの群れの移動にぶつかったようです。ヒヅメキツネはレベル25相当で、多分なんとかなると思うんですが、取り巻きのモンスターの数が多いですね」


 ヒヅメキツネは、前衛の目の前で、頭を低く下げて前肢で地面をかいた。


「散れっ、散らばれ」


 リーダーの号令で、前衛たちがぱっと散らばる。そこに、ヒヅメキツネが突進して突っ込んで行った。

 ヒヅメキツネの突進を避けた冒険者たちが、素早く集まって挑発を使い、モンスターたちの注意をひきつける。


 ヒヅメキツネはキツネらしいしなやかな体を持っているが、馬のような力強い脚力をも持っている。前肢を振り上げ、盾を蹴りつけて攻撃している。


「《瞑想(メディテーション)》。《(ポイズン)》。《遅滞(スロウ)》」


 玲奈に使える攻撃的な魔法はごくわずかだ。種類の少ない暗黒魔法を地味に放ちながら、戦いを遠巻きに眺めている。この距離では、ギリムの投げナイフも届かない。


「弓使いさん、《付与水(エンチャントウォータ)》」


「はい!」


 弓使いは一心に、ヒヅメキツネに向かって矢を放っている。

 水属性を帯びた矢は、ツクリとキツネの背に突き刺さった。


 キュオーン!


 怒ったヒヅメキツネがこちらに駆けよって来ようとして、前衛の挑発がそれを邪魔する。

 そこにレベルの低い取り巻きのキツネたちが、彼らのリーダーを助けるように突撃してきた。


「盾、《小治癒(スモールヒール)》! 《防御上昇(ディフェンスアップ)》」


 玲奈は前衛に神聖魔法をかけた。まだHPに余裕があったが、小治癒を使う場合再使用のための待機時間が1分ある。切羽詰まってくると1分なんてとても待っていられないので、玲奈は余裕を持って回復したい。

 彼らがHPが50になったら、などというのはできるだけ回復を節約したい表れだ。減っていたHPは戦闘終了後は自然と回復するので、戦闘終了時にHPがマンタンだとその分回復が勿体ないという計算だ。魔法職に魔法を使わせ過ぎると後で請求されるかもしれないという、恐れの表れ。


(でも、あんなの中ボスじゃない。

 ボス戦で回復ケチってたら死ぬわよ。あの人たちが死んだら、私たちも危険になるし、手は抜かない)


「槍、《付与水(エンチャントウォータ)》! 《瞑想(メディテーション)》。《(ポイズン)》。《遅滞(スロウ)》」


 前衛は3人で隊列を組んで、ヒヅメキツネに常に盾の面を向けるように移動している。盾を持つ二人の後ろにから、中衛の槍使いが槍を突き出している。

 しかしそこに、レベルの低いキツネのモンスターたちが突入して、冒険者たちに噛み付こうとする。盾役の挑発スキルも、それらのモンスター全てをひきつけきれず、ちらほら後衛のほうまで流れ込んできた。


「槍、《小治癒(スモールヒール)》! 《(ポイズン)》。

 フルー、ヒヅメキツネに暗黒魔法きかないかも」


「ヒヅメキツネの魔法に対する防御力と比べて、マスターの暗黒魔法スキルでは低すぎるのかもしれない。

 雑魚を狩るから、暗黒魔法はそちらに振ってくれ。回復は自力でしよう。《活性(アクティヴィティ)》」


(自力で回復って、両手ふさがってるくせに、どうやってポーション出すのよ)


「ギリム、フルーの支援して。《遅滞(スロウ)》」


「はい」


 玲奈は、一番近くまで来ていたアカキツネに暗黒魔法をかけた。レベルの低いアカキツネには、一発でかかった。アカキツネは玲奈に気付き、駆けよってくる。その注意を、フルーが横から挑発で引っ張った。

 アカキツネは、魔法学園付近のフィールドでも見かける、無属性のモンスターだ。倒してもフルーには経験値は流れないだろうが、ギリムにならば流れるかもしれない。

 流れても、微々たるものかもしれないが。


 フルーは、盾でモンスターの攻撃をいなしながら、3回斬り付けただけでアカキツネを倒した。


 玲奈は頭の中に起動させている、ゲームの時計機能をちらりと眺めた。

 そろそろ2分。


(フルー、盾、剣、槍、弓。盾の次は……。

 ヤバッ、私飛ばしてた)


「《防御上昇(ディフェンスアップ)》」


 玲奈の防御上昇の効果は、15分間だ。その魔法の再使用待機時間が2分弱。

 戦闘開始の瞬間に全員が防御上昇を身に付けているには、戦闘開始の10分前からメンバーの誰かに魔法をかけておかなければならない。

 まだ玲奈のパーティーは人数が少ないから気にならないが、結構シビアな時間配分だ。もちろん、スキルレベルが上がればその時間も変わってくるし、レベルが上の魔法は待機時間がまた長くなる。

 全員一律に防御上昇をかける必要はなく、誰に防御上昇、誰に攻撃上昇と分ければもう少し余裕が出るが、心配性の玲奈は全員にかけたくなるのだ。


 パーティー6人全員に途切れなくかけることは可能だが、一人順番を間違うともうヤバい。


(次、剣、槍、でいいのよね)


「剣、《小治癒(スモールヒール)》! スドン、盾使いに回復」


「はい。《小治癒(スモールヒール)》。

 盾っ!」


 スドンは回復をした合図のために、珍しく声をはった。


 小治癒の魔法は、回復量が初級ポーションと同じくらいで、再使用待機時間が1分。

 こちらも、神聖魔法のスキルが上がったり便利なスキルを取れば、グループヒールを使えるようになったり、再使用待機時間が短くなったりする。ポーションを合わせて使ってもいい。

 バリバリの回復専門の魔法職である、聖職者なんかはそういった様々なスキルを合わせて使って、神聖魔法の使用回数や回復量を稼ぐ。


 今のところ、玲奈のパーティーにはスドンと玲奈という二人の回復魔法使いが居る。4人のうち2人も回復役が居れば十分な気はするが、スドンのMP量では2回しか回復魔法が使えないし、そもそも不器用な彼は自分が戦っている最中に魔法を使うことが、まだできない。


「槍、《小治癒(スモールヒール)》っ。《瞑想(メディテーション)》」


 前衛は混戦模様だ。盾でヒヅメキツネの攻撃は受け止めても、他の取り巻きモンスターの攻撃を防ぐことができていない。ただ、ヒヅメキツネもかなり傷付いている様子だ。


「《防御上昇(ディフェンスアップ)》。《攻撃上昇(アタックアップ)》」


 一方、フルーは特に困った様子もなく、弱いアカキツネや、少し上位のヒギツネを狩っている。


「ギリム、次はあのキツネを呼べ」


「はいはい。命中、えいっ」


 ギリムの投げナイフを利用して、混戦に巻き込まれないように少しずつ雑魚モンスターを削っていく。


「盾、《小治癒(スモールヒール)》。スドン、槍」


「ん、槍! 《小治癒(スモールヒール)》」


 前衛も、玲奈たちが絶えず回復をしているので、HPが50をきることがない。

 時折攻撃は受けているが、危険な様子はなく、そろそろヒヅメキツネが追いつめられてきていた。瀕死のモンスターが最後のあがきに、大暴れをしていた。


 死にそうなメンバーがいないので、このままもうすぐ倒せそうだが、中ボスクラスの瀕死の状態にはてこずるものだ。前衛のHPが結構消耗するかもしれない。


(もうすぐ勝てそうなんだけど。でもボスを倒した後も雑魚モンスター狩らないといけないし、そろそろMPポーション飲んどこうかな。初級で良いかな)


 スドンにはもう、回復魔法を使うMPがない。レベルが低いのでそもそものMP量があまり多くなく、MPポーションを飲ませても少ししか回復しない。MP量がもう少し回復したら、小治癒1回分になるので、MPポーションを飲むとしてもその1回分を使用してからだ。自然回復待ち。


 ただし、HPポーションを使うことと比較すれば、スドンがMPポーションを1本飲んで2回小治癒の魔法を使った方が、HPポーションを2本使用するのと回復量は同じで、ポーション代はお得だ。


 その時弓使いが、馬車の中の冒険者たちを振り返って告げた。


「すいません。預けていた、属性矢の水、取ってください」


 ギリムは慌てて、馬車の座席に並べてあるアイテムを漁る。スドンはその役目をギリムに任せて、ぼやっと座っている。

 ギリムが矢を探している間に、弓使いは一矢放っている。


 水属性の矢は、魔力を帯びてきらきらと輝いていた。

 弓使いはそれを受け取ると、普通の矢を放つ時よりもゆっくりと引き絞る。


「《溜め(チャージ)》。属性矢、放つぞ! 《強打(クラック)》」


 スキルで強化された矢は、まっすぐにヒヅメキツネに向かって飛び、そのこめかみに突き刺さった。

 前衛も畳み掛けるように、ヒヅメキツネに集中して攻撃をしかける。


 キュオーン!


 やがてヒヅメキツネは、倒れた。



(強打スキルもいいなあ。遠距離攻撃でも、強打スキルって使えるんだ。)


 ヒヅメキツネの経験値が、ふよふよと漂ってきて、玲奈の体に弾かれて消えて行った。ヒヅメキツネは、玲奈と比べてレベルが高すぎた。


 冒険者たちは、群れのリーダーが倒れたので、残りのモンスターたちを狩っていく。ヒギツネやアカキツネたちは、逃げたり狩られたりしながら数を減らしていった。

 玲奈の付与魔法をかけられたパーティーメンバーたちがヒギツネを倒すたびに、多少の経験値が彼女の中に流れ込んでくる。久しぶりの経験値入手だ。

 パーティーを組んでいない分少なくなるけれど、回復魔法を使ったスドンや投げナイフでフルーを援助していたギリムにも、アカキツネの分の経験値が入手できたようだ。


 レベル20を超える護衛パーティーのリーダーは、ヒヅメキツネの分の経験値しか入手できないようだし、パーティーの中でもレベルの低い槍使いは、せっかく倒したヒヅメキツネの経験値を入手できずに嘆いている。

 この世界の、経験値入手の判定は厳しい。


 冒険者たちは倒したモンスターを集めて、ドロップアイテムの収集を始めた。

 馬車から出てきた御者たちが、モンスター避けにかぶせていたカバーを外して、走り始める準備をしていた。


「マスター。ドロップアイテムは皇都でまとめて売って、代金を分配することになるらしい。何か欲しいアイテムがあれば、分けてもらえるようだ。どうする?」


「何か欲しいものある?」


 玲奈はギリムたちを振り返って尋ねた。


「別に」

「金属系のドロップアイテムとか、キツネからは出ねえよな。特にありません」


 フルーを振り返ると、フルーはきりっとした顔で言った。


「マスター、ヒヅメキツネの肉は、どうだろうか」


「ええ……。属性が付いてるモンスターの肉って、私まだ食べる勇気が出ないな。美味しいものなの?」


「さあ。だが、属性が付いているモンスターは、ある程度料理スキルが無いと料理するのが難しい。マスターなら、できると思うんだが」


 その話を隣で聞いていた弓使いは、笑いながら教えてくれた。


「ヒヅメキツネの肉は、属性を帯びた肉じゃありませんよ。普通のキツネの肉とあまり変わりありません。

 ヒヅメキツネは、毛皮に属性を帯びているので。あれを腕の良い革職人のところへ持って行ったら、火属性を帯びた革装備を作ってくれると思います。まあ、俺には材料を持ち込みにしても、まだ手が出ない装備品です。

 アカキツネもヒギツネも、毛皮が良い値段で売れるドロップアイテムですね。かさばりますけど」


 そういえば、燃えているかのように輝いていたのは、ヒヅメキツネの毛皮だ。


「攻撃魔法使い様と一緒に戦うと、燃えたり大穴が空いたりして、毛皮系のドロップはダメになることが多いんです」


 冗談めかして、弓使いは言った。それから、改めて向き直って、お礼を言われる。


「付与魔法使い様と、一緒に戦ったのは初めてなのですが、とてもすばらしいサポートだったと思います。ありがとうございました」


 普通にパーティーを組んで一緒に戦っただけなのに、丁寧にお礼を言われるのは明らかにおかしい気がする。玲奈は、特に大活躍をしたというわけでもなくて、一番低レベルのメンバーだったのだから。

 玲奈は曖昧に頷きながら、相槌を打っていた。



 その日は、そこから少し走った駅宿で馬車は停まった。夕飯は、キツネの肉が御者の手で調理されて出てきた。料理スキルを持っているらしい。

 翌日夜明け前、馬を交替して馬車は出発し、昼過ぎくらいに玲奈たちは皇都に着く。







 Lv12 見習い魔法使い

 レイナ・ハナガキ ヒューマン 

 HP/MP 76/114

 スキル 杖Lv19 瞑想Lv18 魔術運用Lv12 付与魔法Lv15 神聖魔法Lv11 四元魔法Lv17 特殊魔法Lv30 暗黒魔法Lv13 料理Lv39


 Lv12 見習い戦士

 フルーバドラシュ ドラゴニュート

 HP/MP 182/35

 スキル 剣Lv25 盾Lv16 重装備Lv11 活性Lv17 戦闘技術Lv12 挑発Lv16 調合Lv29


 Lv3 見習い戦士

 ギリム ヒューマン

 HP/MP 27/6

 スキル 短剣Lv5 投擲Lv3 命中Lv4 活性Lv3 踏舞Lv9 跳躍Lv4 観察Lv2 索敵Lv3 装飾細工Lv1


 Lv3 見習い戦士

 スドン ハーフフェアリー(アース)

 HP/MP 56/17

 スキル ハンマーLv8 盾Lv5 重装備Lv2 活性Lv3 戦闘技術Lv2 挑発Lv4 魔術運用Lv0.5 神聖魔法Lv1 鍛治Lv7




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