DARING CHALLENGERS Ⅴ
アルフレッドはルドゼラを収めてキューブから離れた。彼は通り過ぎていったアレンとハイタッチを交わした。その時さりげなく彼は小さい声で耳打ちしていった。
「あいつら、魔人化なんかしなくても十分手ごわいよ。気をつけて。」
「あぁ、任せてくれ。」
次なる相手側の魔人は第五の魔人アギラ・マホラ。ゆっくりとした歩き方をしていて且つ盲目というハンディキャップがあるのである。本当に戦闘を行うことが可能かどうか大変気がかりだが、あくまで相手は魔人である。それに第五という序数が実力の順番であるならばそれなりの実力者ということは間違いないだろう。
そして互いにキューブの前に立ち、再び完全密室内での戦闘が繰り広げられようとしていた。この時スルガ・マルコヴィッチはウィスキーを片手にして独り言のようにつぶやいたのだった。あのガキ、苦戦するだろうな・・・と。
・・・目覚めると自分の体は仰向けに横たわっていた。起き上がって周囲を見渡してみても杖を使って立ち続けているアギラを除いて誰一人として存在しない。ただ彼は無表情のままアレンの方向を向いていた。
「どうですか、この空間の居心地は。最初は慣れないでしょう。無理はありませんよ。この空間だけでなくここの洞窟自体に我々魔人の魔力が込められています。常人の肉眼には映ることすらないようになっているのです。」
「丁寧にどうも。風貌のわりにずいぶんと謙虚な口調なんだね。」
「ふふふ、よく言われますよ。そしてこれもよく思われてしまいますよ。私は盲目なのにも関わらず戦闘を行えるのか、だが第五魔人である以上油断はできない・・・とね。違いますか?アレン・クロニクルさん。」
その言葉を耳にして思わず驚愕してしまう。それは思考を見破られてしまったことに対する驚きである。そしてアレンは聖煌剣を構えて一気に距離を縮めて接近していく。剣を振り下ろした時に確実にダメージを与えた感覚を覚えた。
しかし、アギラは回避してアレンの背後に立ってその隙を杖で突いた。突かれたことによって何か能力が発動する可能性を恐れたが、何も変化は見られない。
「安心してください。何も小細工など仕掛けていませんよ。」
だがアレンは屈することなく次なる手段に移った。彼は脚にさらに魔力を上乗せることによって移動速度を急激に向上させた。アギラの周囲を駆け回り、背後から斬りかかった。またもやアギラは絶妙なタイミングで回避したのである。どうやら魔力を察知して行動しているようだ。
「いえ、それだけでは今の襲撃を回避できませんでした。信じていただけるかわかりませんが…私は、相手の思考を読み、そして行動することが可能なのです。」
つまり、アギラは相手の心を読み取ることが出来るのである。それはまさに超能力とも言えるだろう。その言葉を聞き、アレンは急に不安が込み上げてきた。それが真ならば、勝てる術がないだろう。
「先程ラストが言っていましたように、これはテストに過ぎません。私はあなたを殺すつもりは毛頭もありませんよ。
私はただ、あなたの実力を見たいだけなのです。」