NIGHTMARISH INVASION Ⅳ
渾身の力を込めた突風はセルに襲い掛かった。さすがのファーストクラスといえどある程度の害は受けたはずである。
ジュリアは肩膝をぬかるんだ地面についた。ダイスによる能力は連発すればする程肉体への反動が大きいのである。
「なっ…」
「この子らは意思を持ってるんや…。僕の危機に反応して防御してくれただけのことや。
さて…生死の賭博は失敗やな。死んでもらうで!!」
その刹那、地面から冷気が漂う。雨に因るものではない。これは真冬の中の大地のように…氷を張っているのである。
それは無論自然なるものではない。唯一属性を所有することが可能なシオンが能力を発揮したのである。
「氷を張ってしまえばその能力は使えない…」
「そういうこった!!」
この時、エースはセルに対して大打撃を与えようと試みていた。地面に氷が張ってある隙に狙えば確実に命中するからである。
しかし、セルは未だに余裕のあるそぶりを見せていた。薄氷を一枚張ったところで樹木を封じられるのは一瞬の間だからである。
一瞬、その一瞬のチャンスあればエースにとって十分なのだ。目にも映らない速度で突進し、魔力を存分に込めたグローブによる一撃はセルを吹き飛ばし、大ダメージを負わせたのだ。
「賭けは成功だ…!!」
三人は負傷しながらもエデンの脅威を凌駕した。こうして侵略は終わるはずだった。
空が…紅く………
深紅の空を見上げた瞬間、突如ジュリアが気絶した。二人もただでは済むはずもなく、過度の重力がかかっているかのように体が重くなっていく。
「………なんや…やっと到着したんやな。エリオット…」
天地に怪奇的な笑い声が響き渡る。それと同時にセルは足を引きずりながら歩き出す。
シオンが剣を構えた時、空から黒い煙が降りて人の形を形成していく。そこに現れたのはエデンNO.4 エリオット・アンリだった。
「おや…傷だらけではないか。そうか…そうか…
彼らか……」
深紅の瞳がこちらを向いた時、体が震え上がる。
圧倒的な力の差にただ絶望する。
「……ヒ……ヒヒ……
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!」
彼らには何が起きたのかすらわからない。生死の狭間で瞼を開けた時、辺りを見ても、空を見上げても、深紅に染まっていた。
ネリスト城はもはや陥落しようとしていた。魔石はエデンの手に渡り、終焉を迎えていた…。