THE DIVINE JUVENILE Ⅴ
ハルは全身全霊の魔力を出し切り、浄魂を行う。底無しの威圧感を覚え、そして敗北を悟った。
今度こそ本当に終焉の刻…。誰もが絶望した瞬間に先程までの勢いが若干乱れてつつあった。それはハルの異変が物語っていた。
「な、なんだこれは…!?」
彼の体から魔力が放出され、激しく乱れる。これもスタークの夢現による効果だろうか。しかし、スターク自身も目前の光景に驚愕している様子である。
「あいつは俺様の能力じゃねぇ…あれは…完全に魔力が暴走してやがる!!」
苦しみの中で、彼の視界に彼の部下が入る。助けを請うことを試みた時、彼の肉体を刃が貫く。
それを手にしていたのは…
「ミ、ミランダ…!!」
涙を目に浮かべながら、彼女は刃を引き抜く。崩れ落ちていくハル、神の玉座から追放された彼はようやく気づいた。
「…ま、まさか……」
「申し訳ございません、ハル様。私は…感センしテしまッタ…!!」
彼女の体はもう既に侵されていた。マリアというウィルスに。
次の瞬間にこの場に駆け付けたグロリアは彼女の靭帯を切ることで動きを封じる。
「すまない…後ほど必ず治そう…。
おのれぇ…!!モーファァアアッッ!!!!」
彼は激昂してエデンの総帥を叫ぶ。
ふいに空間が裂け、その空洞の奥からついにそれが姿を現した。
「久しいのぉ…平和軍といったか…?」
中世欧州の貴族が所有していたようなドレスを着て、肩から肩までの幅はある扇子を手にして、金色に輝く髪飾りをつけた女性が現れたのである。
そして、その背後には仮面をつけた集団が待機していた。
グロリアは怒りのあまりなりふり構わず女性に斬り掛かる。
仮面をつけた一人がそれを阻止するように剣を操り攻撃を防ぐ。
「貴様らだな…!ミランダを…そしてハル様にマリアを感染させたのは!!」
「ははは…その通りじゃ。話はそれだけか…?」
仮面の男はグロリアを押し返し、すかさず一撃を与える。早い…!!
「余談が過ぎたようだ。ここで消えてもらおう。我々エデンの障壁よ。」
とどめを刺そうと試みた時、仮面が真っ二つに割れる。それはスタークの攻撃によるものだった。
「やっぱりてめぇだったか…キース…!!」
兄は弟を冷徹なる眼差しで見下していた。