THE DIVINE JUVENILE Ⅲ
突如現れたのは既に魔人と化したスタークとドルコンであった。背中合わせの二人は瞬時にハルの前後に移動し、強靭なる攻撃を繰り出す。
しかし、彼は微笑むと周囲を囲む魔力の壁が現れそれを阻止する。
「なんて固いんだ…!!ユーの力でなんとかならないのかい?」
「無茶言うな。俺様は策を練ってるんだよ。」
「ほう…いかにして?」
「知らねぇ…来るぞ!」
ハルは再び火、雷それぞれ異なる属性の攻撃を放つ。
しかし、スタークは剣でそれを受け流し、ハルとの距離を縮める。
一撃を与えようと試みた時、足元が光り輝いた。
それは円陣を描き、スタークを包み込んだ。身動きが一切出来なくなった彼の頭上には刃の形をした無数の魔力の塊が浮上していた。
そして、ハルが指を鳴らす音と同時に刃はスタークに襲い掛かる。
まずい…スタークが…!
「くそっ…!!」
体中を貫かれたせいでひざまずくことしか出来ない。
するとハルは背中に背負っていた一本の剣を取り出した。
それは白く輝く…まるでアレンの聖煌剣のようであった。
「これは退魔剣…その名の通り…邪悪を消し去るための剣だ…」
もはや抗う手段はない。浄化されることしか…
突然、だれかが叫んだ。
それは悲しげに聞こえる…だれだ…?死に際の俺様に何の用だ?
その時、思い出した。これは…ビアンカの声だ…微かにしか聞こえないためはっきりとは認識出来ない。
何か囁いているのか…?
死なないで…。
二本の剣は火花を散らして競り合う。ハルは驚いた様子だった。
まだ抵抗する力が残っていたなんて…!!
弾き返して距離を置いたスタークは大きく息を吸って、体勢を整える。
「ふぅ…やっと頭が冴えてきたぜ。
待たせたな。てめぇに見せてやるよ…さらなる魔人の力をな…!!」