ANTAGONISTIC TWO MIGHTS Ⅳ
常識では有り得ないことが不意に起きると普通ならば驚いたり、畏怖するだろう。
死後の世界だから、常識など通用しないのだろうか。仮にそうだとして、目前に自分自身が現れたら悪魔ですら驚愕するにちがいない。
「お、お前は…!?」
「あん…?俺様はお前だろうが…
まぁ、強いていえば…
お前に潜んでいた戦闘力を具現化した存在だ。」
こいつは元々僕の一部で…それが僕の前に現れたというのか。全くわけがわからない…。
そして、彼はゆっくりと腰から剣を抜いた。それは…間違いなく聖煌剣の形をしていた。しかしその刀身は白くなく、漆黒の色を纏っていた。
「てめぇは浄魂化したグロリア・ジルフォードによって殺され、そして外の世界ではマリオ・ボンテルが応急処置を試みたが、彼によって阻止された。
まぁ…今から消えるやつには関係のないことだがなぁああ!!」
アレンの注意が刀に向いた時には、もうそれは彼の体を一斬りしていた。
無惨にも崩れ落ちていく肉体…それを見下ろすリースとアレン…
「バカが…お前はこんなところで終わるわけにはいかねぇんだよ。
これでいいんだろう?リース・クロニクル様。」
「ええ…ありがとう。」
「アレン、俺様が戦いってものを見せてやる。
少しの間だけ、休んでやがれ……」
視界に光が差す。ここが外の世界か。ゆっくりと立ち上がると、グロリアとマリオは思わず驚きを隠しきれなかった。
あぁ、そうか。一度死んだやつが起き上がったんだからな。無理もない。
「小僧…何故生きているのだ……!!?」
「目が醒めたぜ…今から見せてやる。一瞬たりとも気を抜くなよ…?」
右腕に違和感を感じた。まるでとてつもない重力がかかり、潰されるような威圧感。それに気を取られた途端、腹部を剣が貫いた。
血に染まっていく白い羽、そして自分の結末を悟った。
…なんだ今のは……!!馬鹿な…小僧の魔力によるものなのか……!?
汗が全身にまわり、そして息を飲んだ。魔力だけでこんなに威圧があるとは……
「いいだろう…次は容赦はせん…!!」
「来いよ…」