A PERFECT MADNESS Ⅱ
「あぁ、だから俺は人間を探してこっちの世界に来たんだ。まぁ想像してたようなガッチリした野郎じゃなかったけどな!」
そういうとスタークは歯見せて大声で笑った。ムカつくけど…なんか慣れたよ、うん。
そんな僕の思いを気にもせず彼は静かな部屋の中を徒然と歩き回る。こんなに閑散としたハーレン街なんか未だかつてなかっただろう。眠らない街が今眠ろうとしているようだった。
何かを察知したかのようにスタークは窓を開けて外を見た。そこら中にさっきの悪魔がいるこの光景は恐怖以外の何でもなかった。
「スたーく……コロす…」
「ころしてヤル…」
「にんゲんの匂いスる…!!」
僕は思わず嗚咽してしまった。さすがのスタークも身震いしているようだ。剣を持った手が震えている。
しかし、僕の読みは今度は外れてしまった。彼は窓から飛び降りて石畳に着地した。どうやら疼いて仕方がないらしい。全く…こいつは怖くないのか…?
「さぁああて!!全力でヤろうぜ!!」
今の僕はただ傍観しているだけしか出来なかった。悪魔達がまるで赤子のように扱われている。戦慄を通り越してむしろ滑稽だった。
あんなに大勢いたのに…一分足らずで一網打尽してしまった。彼は戦いを享受しているようだった。
「さぁて、人間。行くぞ。」
「え、どこに…?」
「フィリップス・シャンデリアに決まってんだろ?バギーのおっちゃんをぶっ潰すんだよ。さて…人間、降りてこいよ!」
助走をつけて、僕は2階くらいの高いの家から勢い良く飛び降り、スタークを下敷きにして唾が飛ぶくらいにまで顔を近づける。唖然としているスタークにこう言いつけた。
「アレン!僕の名前はアレン・クロニクル!!」
にぃっと笑い、スタークは立ち上がった。
どこか自分の中で決心がついたんだ。僕は一緒についていく。どうせもう戻れない運命なら、この道を歩んでいけばいいんだ。
冷たい石畳の上を一歩ずつ進み、僕らはフィリップス・シャンデリアを目指した。
ここから先は命の保障はないにちがいない。それでも、僕らは行くしかないんだ。
「ほう…あれだけの悪魔を一人で倒すとは…さすが我々と同じ種族だ。」
「あーあ。フィリアつまんなーい。ね、あの赤髪と戦っていー?」
「待て、ここはまずバギー様に報告すべきだ。どうせ奴らは我々の手で消されるのだ。焦ることはない。」
髑髏の仮面を被った長身男キース・オーウェン。
そして栗色のおかっぱ頭の少女はフィリア・レジストブルク。
二人ともマリアの組織側の者である。これからスタークに立ち塞がる敵達は、さらに強さを増していく…