FAIR SACRIFICE Ⅲ
アルフレッドの能力により辛うじて危機を逃れたが、所詮その場凌ぎにしかならない。形勢は何も変わっていない。
ミランダはさらに魔力を放出させ、同時にゼロの力も増していく。間合いを縮め、鋼のような拳がバンテラの腹部に打撃を与える。
魔人と化していた彼でさえ大きなダメージを受けたようだ。万が一自分が受けていたら死んでいたかもしれない…アルフレッドはそう考え畏怖していた。
幾度ダメージを与えてもゼロは怯むそぶりすら見せない。
一つ、また一つ抗う術を潰されていく。
「さぁ…その魂をもって罪を償うが良い。」
だが、一人だけとあることに疑問を抱いていた者がいた。
ボサボサした黒髪をぼりぼりと掻き、さらには欠伸をしていた。
眼鏡の位置を正し、彼女はつぶやいた。
「……見えた。」
リサのその一声に誰もが反応した。この子はまた何を言っているんだろうとアルフレッドは内心考えていた。
だが、同志であるバンテラだけは確信していた。彼女の潜在能力に…
「何が見えたというのだ。まさか、勝機とでも言うのか?ならばそれは間違いだ。」
「それでも、視力が異常に低い私の目にさえそれは映っているのです。」
「ならばそれを証明するが良い!!出来るものならばな!!」
ゼロは絶対の自信を持っていたが、主人であるミランダは少なからず警戒していた。
相手は犬猿の仲な魔人旅団…どんな手段を使ってくるか予測がつかない。
しかしながら、それはあまりにも安易な行動のようだった。
アルフレッドやリサがゼロを自分達の方へとおびき出し、バンテラが瞬時に移動してミランダ本人に攻撃を仕掛けた。
無論、そんな単純な攻撃は通用しない。ゼロは主人の元へ駆け付け、攻撃を防いだ。
「ふん…何をするかと思えばこのような…」
すると、突如バンテラの体が煙となり、ゼロに纏わり付く。
これはいったい…!!
「あたしの…真の能力よん♪この煙に触れた部分以外の行動を一時的に封じるもの…そして、あなたは最初に触れた右腕以外の動きができないのよ♪」