FAIR SACRIFICE
平和軍の本拠地にいるのは兵士だけではない。内部から発生する魔力の塊が人型に変化して侵入者を排除するのだ。たいていの侵入者ならば太刀打ちできないほど強力なトラップである。
そして、それらは彼らにも襲い掛かる。スターク、ドルコンと分かれたアルフレッド達の前にも立ちはだかる。
だが、ルドゼラを巧みに使いこなすアルフレッドや異次元に直通する棚から機関銃を取り出して応戦するリサ、
その機関銃からは魔力が込められた銃弾を放つ強力な武器である。そして不思議なことに棚は綿のように軽いという。
それだけではない。彼女の身体能力は女性とは思えぬ程異常に高い。やはり魔人旅団の一味だ。
そしてバンテラは魔人解放し、猛る虎のような容姿へと変貌を遂げて、トラップを次々と倒していく。
魔人旅団は皆ここまで強大な力を持っているのだろうか。決して敵には回したくはないが、仲間としては頼もしいかぎりである。
どうにかトラップを一掃した後、彼らは長い一本道に出た。正確にいえば、連絡橋の役割を果たしているようだった。
さらに反対側から何者かが歩いてきた。アルフレッドらは足を止め、十分に身構える。
どうやら、女性である。だがもちろん制服を着ている以上、安心できる存在ではない。
「皆さんはじめまして。私は、平和軍第三席ミランダ・ルーラーと申します。」
「元エデンNo.14アルフレッド・トルネードだ。こりゃあ強そうな人が出てきたもんだ。」
「私は無用な戦いはいたしません。ですから、皆さんがここで退くなら争いは起きないのです。」
微々たる笑みを浮かべ、意外な交渉を仕掛けてきた。
しかし、気を緩めてはいけない。いつ、どのような攻撃を仕掛けてくるのか予測がつかない。
「悪いけど…こんな場所で引き返すわけにはいかないんだよ。」
「そうですか…では、やむを得ませんね。」
ミランダははめていた手袋を外した。するとある程度離れたこの距離でもたしかに感じ取れるほど強い圧力を受ける。
その場にいた誰もが動きを止めた。そして、彼女がはめていたリングが光りだし、その光は人の形へと変わった。
それは先程まで行く手にはだかったトラップだった。ただし、今までのものよりもはっきりした体つきをしている。
「ゼロ…今こそ戦いの時です。」
「御意………」
ゼロという名の光の塊は、瞬時にアルフレッドの喉元に手を伸ばし強く絞める。
辛うじて反応は出来たが、回避は間に合わなかった!!
体が軽々と持ち上がったが、バンテラが突進したおかげで吹っ飛ばせた。
あいつはいったい…!?
「彼の名はゼロ…私のパートナーであり、私の魔力を具現化したものなのです。」