GET RID OF DESPAIR Ⅵ
突然傷だらけのアレンを助けた救命リカバリー・チーム所属のマリオ…
彼はアレンに頼みがあって命を救ったという。それは、死刑囚でありアレン達の仲間であるビアンカ・アンデリカを連れ戻すことだった。
マリオは、かつてのビアンカの恋人だったレオン・レスタークに憧れて平和軍に入隊したという。
彼が入隊して間もなく、例の事件が起こってレオンは魔人旅団によって実質殺され、ビアンカはスターク達の元へとついて行き行方を眩ませた。
しかし、マリオはこう考えた。
レオンが認めていた人ならば…きっと彼女は悪ではない。彼のように、清らかな心を持っているのではないかと。
それならば…彼女を救い出したいと……。
「……おいらは弱いやつだから…あんたに頼んだんだよ。」
「マリオ。」
アレンは彼の名を呼び、手摺りに捕まって立ち上がる。
「…もし君が本当に彼女を助けたいなら、僕と一緒に来てくれないか?
僕は、君の力を信じているよ。」
信じることは相手を愛することであり、敬意を示すこと。
たとえ嫌いな自分を卑下しても、きっと誰が自分を必要としてくれる時がくる。
そして、今がその時。
「あんた…名前は?」
「アレン、アレン・クロニクル。人間だよ。」
「あぁ、やっぱり…」
あの人と同じ雰囲気…
懐かしいなぁ……やっぱり、ビアンカさんを救えるのは、あの人に似た彼しかいないや…。
「よしっ!それじゃあ、行こう!」
「…あぁ。」
彼らは部屋を出て、マリオが案内する方向へと進んでいった。
だが、部屋にいたのは二人だけではなかった。
アレンたちが去った後、設備されていた水道の蛇口から自ずと水が溢れ出した。
部屋中が水浸しになった後に拡散していた水が集まり人の形を作り上げていく。
金色の髪をしたそれは裸体の女性となった。
「シルヴァ様、御召し物でございます。」
部下の兵士が部屋に入りシルヴァという女性に制服を差し出す。
「ったく…相変わらず服は窮屈だぜ…
さぁて、脱獄犯と裏切り者…いいねぇ…」
御馳走を目の前にした獣のように長い舌を出し、彼女は笑う。