A PERFECT MADNESS
夜の風が痛いくらい顔や手を突き抜けていく。もはや声すら出ないくらいのスピードが出ていたのだろうか。イカれたように笑うスタークの横顔を見るのが精一杯だった。
やばいよ…やばいって!これ絶対死ぬよ!諦めて目をとじた。次に開けた時には魔の絶体絶命空中ダイブは終わっていた。
そこには天井があった。見知らぬ部屋、ここには誰もいない。いや、窓側にスタークがいた。
こいつといると嫌なことがいっぱい起きる気がする。残念ながら、僕の直感は見事的中した。
「やばいな、またあいつら来てやがる。」
「ね、ねぇ!あいつは一体なんなのさ!?まるで悪魔じゃないか!!」
「へぇ、案外鋭いね。そうさ、あいつらは皆悪魔…いや、元々はお前と同じ人間だった。
しかし菌にやられた感染者、それがあいつらなのさ。」
菌…さっきも同じようなことを聞いた。するとあいつらは皆菌を持っていて、それが暴走か何かして悪魔となったのか。
「いや、ちょっと違う。暴走じゃない、完全に一体化したのさ。
究極完全悪魔型ウィルス「マリア」の一部とな。そして、それはもう世界中に撒布されている。」
スタークの話で次のことが明らかになった。
数年前に欧州で起きた複数名の失踪事件。あれは、菌の感染つまりマリアによる完全コントロールである。
マリアは凄まじい勢いで世界中に広まっていき、ついには壊滅状態にまで陥った地区も次々と現れてきた。
その菌は三段階のフェーズに分かれて感染者の体内の細胞を破壊し、そして新たな生物として転生させる。
この過程を経て誕生したのが所謂悪魔である。
この菌が短期間で広まった要因は、ある組織による陰謀があった。その組織の一員が先程の髭男であり、スタークと同じく異界の住人だという。
彼らの目的は、異界との結合を実現し新たな世界を創造することである。それを阻止するためには、菌を排除することらしい。
そして、菌を排除する条件は……
「お前が必要なんだよ、人間。」
「え…えぇえええ!!う、嘘だろ!!??」
菌を排除することが可能なのは、人間だけだということだ。