BLOODY WOODLAND Ⅳ
高速で振り下ろされる魔力をまとった木の棒は刃にも匹敵する武器となるのだ。
スタークを斬って吹き出た血液が棒に付着した。それを邪桃花に垂らす。するとつぼみはまたさらに大きな花を咲かせた…!!
「…さぁ、暴れろ。」
ここからが、セルの力の発揮である。邪桃花は前に傾いて魔力の塊を発射した。
ただひたすら攻撃を受けたが、ひとつ気づいたことがある。さっき背中を貫かれた感触がしたにも関わらず、そこからは血どころか穴すら開いていなかった。
どういうことだ…!?
ほら…うしろ取ってるで…
脳に直接語りかけてくる奴のカンに障る声…どこを振り向いてもやつはいない。
今度はふと足元を見る、自分の膝下が無くなっていることに気づく。そのまま崩れ落ちる肉体、待ち受ける最期は……
「うおぉおおっ!!!」
セルには断末魔にしか聞こえないこの叫びは、彼の抵抗だった。魔力が急激に上がり、彼の中で何かが解けた。頑丈に絡んだ鎖をちぎったかのように、再びスタークは立ち上がる。
そう、全ては幻影にすぎない。
邪桃花の香りによる催眠術だったのだ。この手の術にはリスクがある。花を媒体にして自分の魔力を流すことで発動するため、術が失敗すると魔力が暴発する。その影響は、本人にもおおいに及ぶのだ。
「怖いなぁ…そないな魔力を持ってたなんて。」
「血、けっこう出てるぜ?お花に与えたらどうだい?」
「……せやな…」
セルはそのまま意識を失って倒れた。だが息はまだあるようだった。
とどめをさそうとしたけれども、エデンの部下達が現れ、彼の体を回収して姿を消していった。
しかし、現実に受けたダメージは想像以上に深刻だったため、スタークはその場で倒れてしまう。
今回ファーストクラスの者を倒したが、スタークですらここまで苦戦した。今後の戦いは更なる強敵が彼らの前に立ちはだかるのだった。