SHUDDER WITH FEAR Ⅲ
全身全霊の力で戦わずして勝利は有り得ない。現世で習得したこと…それを最大限に引き出すんだ!!
これは命を捨てる行為ではない。失われそうな命を救う行為だ!!
「………先程よりも魔力を上げたようだな。しかし、それでは私には敵わない。」
「試してみようか…」
引きずっていた白い刀身を上げて、真っ正面から斬り掛かる。男はそれを難無く避けて、アレンの丸腰の背中を斬る。しかし、完全にアレンを甘んじていた男は逆に背中から血を流した。
(………なるほど、全魔力を脚に上乗せして瞬間的に移動したか。だが、まだ私はー…)
「油断したね。」
アレンはわずかの隙を逃さない。懐に侵入し、そのまま聖煌剣で大きく振り一撃を与えた。
反射的に腕を出した時、腕に縫い付けていたネームがちぎれた。
「よろしくね、グロリア・ジルフォート!!」
「小僧…!!許さん!!果てろ…我々の能力によって…!!」
グロリアは両腕を大きく開き、無限に広がっている天を仰ぐ。その瞬間に魔力が今までの何倍にも跳ね上がったのを感じた…!!
だがしかし、それを阻止したのは周囲にいた仲間らだった。全身を取り押さえられたグロリアは落ち着きを取り戻して元に戻った。
その時、首筋に電気のように痛みが走った。平和軍の一人が不意打ちをしたようだった。そこで僕の意識は途絶えた。ここで死ぬわけにはいかないのに…!!
「グロリア…何もそこまでしなくても良いでしょう。その者は我々の敵ではないのですから。」
彼を宥めたのは第三席のミランダ・ルーラー。アレンを気絶させたのは彼女の能力によるものだった。
しかし、グロリアの表情からして腑に落ちていない様子である。そこで彼女はある条件を提唱することにした。
ビアンカだけでなくアレンも連行すること。そうすることでその他に情報を持っていたらそれを聞き出す…もしかしたら、エデンについて何か知っているかもしれない。
「いいだろう…行くぞ……ここに長居する理由はないのだ。」
皆の肩辺りが一斉に白く輝きだす。そこから天使のような羽が生え出し、そのまま天空を舞ってその場を去ったのだった…。
右も左もわからない世界でアレンはただ振り回されていた。そして、平和軍との戦いで彼の実力はまだまだ不足していると露呈されたのだった…。