COMING TO A HEAD Ⅲ
異界に存在する者は皆多かれ少なかれ魔力を持っている。そして、それらはそれぞれの属性に分類されることで能力を発揮出来るのだ。
例えばビアンカの火属性…アルフレッドの風属性以外に水、雷、自然、闇、光…そしてスタークの魔人など例外が存在するのだ。
それぞれの属性が特性を持ち…さらにその所有者次第で能力も変わる。リースの聖煌剣は、魔力を一気に放出させることで莫大なダメージを与えられるものである。
アレンは剣を構えながらも彼女の攻撃を避けたり剣で競り合うばかりだ。決して自ら攻撃をしようとはしない。
いや、正確には仕掛けられないのだ。彼女の剣はアレンのものよりも長いため、むやみやたらに近づいたら返り討ちにあってしまう。今は機会を伺ってみるしかない。
「はっ……はっ……」
「アレン様…逃げてばかりではいけません。攻撃なさって下さい。こんなふうに。」
彼女はまた再び魔力を一気に高め、そして剣先からそれを放出させた。回避しようと試みたが…駄目だ…間に合わない!!
外の世界は今日はあいにくの雨だった。冷たい雨が麻酔のようにビアンカの集中力や感覚を奪う。一方アルフレッドは誰もいない街に出向いて食料の調達に励んでいて、その帰り道のことだった。なんと長身の男が歩いていた。まさか人間の生き残りがいたとは…
「もしもーし、何してるんだい?」
彼は俯いた男の顔を覗き込んでみた。その男はどうやら怪我をしているようだった。眼帯からはみ出ている傷が痛々しい。避難している最中に負ったのだろうか。
「あぁ…すみません。私はこの辺の者ではありません。ただ行く宛てもなくさまよっていたのです。よろしければご一緒させてくれませんか…?」
よく見ると痩せこけていたのがわかる。それから仕方なくその男を連れていくことにした。
扉の前に着いた途端に突然どこからともなく魔力の気配がした。今ここを襲撃されたら大変な事態を招きかねない…!!
浮浪していた男に避難するよう注意をしようとしたが、同時にこの魔力は男のものであるとわかったのだった。
「残念ながらあなたたちはまんまと罠にかかったのですよ。このリンセイによってね!!」
「くそっ…!!僕達の始末するために派遣されたんだね?」
「ええ…そして、ビアンカさんが守っているその扉…どうも怪しいですねぇ……」
早々と気づかれてしまった。アルフレッドだけでなく、もしビアンカまでもやられてしまったら、扉が消滅してアレンやスタークが閉じ込められるという最悪なこととなってしまう。
ビアンカが動けない以上アルフレッドがなんとしても死守しなければならない…!!