STERN DISCIPLINE
若干まだ残っていた眠気が覚めて意識がしっかりしたあと、アレン達は誰もいない街路を歩き、とある広場へと向かった。
大きな噴水のあるこの広場はかつて多くの人通りでたいそう賑わっていた。今となっては、いくつかの小鳥が集まり巣を作り住み着いているくらい閑静な場所だ。ここに来たのにはしっかりした理由がある。
「よし、ここならいいだろう。」
「スターク、僕らはここで今から何をするんだ??」
「お前に魔力を持たせる修業をするんだ。これから先、俺らは異界へと向かうことになるだろう。その時、魔力を持たざる者は通れないんだよ。
そのために、ここで修業をやるんだ。」
突如、広場に鋼のような重みのあるの扉が出現した。中は別の空間にリンクしていて、そこで三日間スタークとアレンは滞在するのだ。
しかし、この扉の形態を維持するには魔力とのリンクを続ける必要がある。そこで、その役割はビアンカとアルフレッドが務めることになった。
「さて、準備はいいか?止めるなら、今のうちだ。」
「………始めてくれ。」
彼の眼差しには力強さが宿っていた。今更スタークはそんな心配をしたことを自ら悔いた。
ゆっくりと扉が開いていく…。後戻りはもう出来ない。いや、することなんかないんだ!
空間は何の変哲のない小さな小部屋にすぎなかった。
「つまらないか?」
スタークが指を鳴らすと小部屋が一気に広々とした砂漠へと変わった。しかし不思議なことに、全く熱くはないのだ。
「さて、早速始めるか!!」
「何をするの?」
するとスタークは何枚かコインを取り出した。上へ投げると、それらは砂漠の奥へとそれぞれ拡散していった。
「いいか?今日はこれから俺とゲームをやってもらう。なあに、簡単だ。もう察しているだろうが、さっきのコインを探すゲームだ。」
なんて無茶苦茶なことを言っているのか。こんな無限のように広がる場所の中からあんなちっぽけなコインを探すなんて。しかし彼は発言を訂正しようとはせず話を進める。
「いいか?実は、あのコインには魔力が込められているんだよ。だから、あれから発する魔力を感知して見つけるんだ。
制限時間は10時間。ハンデとして、俺は今から9時間後に始める。そうしないと、お前は勝てないからな。」
魔力を察知すること…それが最初の訓練だった。そして開始と同時にアレンはとりあえず行動に移った。彼の頭には、開始した時に言い残したスタークの言葉が再生されていた。
初めて魔力を察知するには…精神を研ぎ澄まし、自分がコインになった気持ちになれ。
類は友を呼ぶ…ってな。まぁ、ガンバレ。
……いいかげんな奴だ。