THE PAST Ⅳ
距離を常に数メートル離して戦うのがレオンの決まったスタイルである。しかも今回の相手はさらに予想外な攻撃を仕掛けてくるにちがいない。そしてその推測は的中した。ラットの背の皮膚が裂け、その中から鋭利な角を生やした獣がゆっくりを姿を現した。彼は本物の化け物なのだろうか…
獣は雄叫びを揚げてレオンへと勢いよく突進する。彼は獣の背に手をおいて跳び箱を飛び越えるかのようにして回避した。それと同時にグローブから爆発を起こし、巨大な体の獣は大きな音を立てながら倒れた。
「おい…旅団、もう終わりか?」
「………………」
顔を背けたまま何も言葉を発しない。一瞬気を緩めてしまったが、まだ油断は出来ない。しかし彼はそのまま全く動かない。どうやら、本当に策が尽きたようだ。
ゆっくり歩み寄る。その時、彼の肩が小刻みに揺れ始める。ついにラットは大いに吹き出した。甲高い笑い声は腹立たしく思うほど激しかった。
「かかったなぁ!!レオン!!」
足元に違和感を覚える。ゆっくり見てみると、そこには死んだはずの蛇達がまとわり付いていた。いつのまにこんな…!?
「僕の蛇はね…狙った獲物は決して逃がさないんだ。そして…こいつらは……どっかーん。」
魔力のこめられた蛇達の凄まじい爆発により、レオンは逃げる術もなくダメージを受ける。もちろん、彼は倒れたままである。
「はっ……平和軍のくせによくやったよ…」