CHILDISH MIND Ⅲ
「な……ビアンカさん…!?」
「また会ったわね…アレン君。今度はあたしに恩を返させてちょうだい。」
炎はさらに猛るように燃え盛り、それは勢いづいてフィリアに襲いかかる。
対抗する彼女は大斧を前に置いて盾のようにして炎を防ぐ。しかし今の攻撃は囮にすぎなかった。炎が消えた時、ビアンカは剣を大きく振り上げ、大斧に打撃を与えた。
するとひびがますます大きくなっていき破壊した。どうやらフィリアはもはや武器を持っていないようだ。
王手をかけるが、それを仲裁したのは冷酷な表情のままのキースだった。彼女を見つめ、そして背向ける。
「………戻るぞ。」
「ま、待って!!どうしてあなたは組織に入ったの!?あなたは…!!」
空間が裂けて、中に空洞が続いている。これは移動空間と呼ばれ、異界での移動手段の一つである。
何も言わずにキース達はその中へと退避し、そのまま空間は元に戻った。なんとか危機を免れたが、スタークは起き上がらずに瓦礫に押し潰されたままだった。
アレンとビアンカは直ぐさま協力して瓦礫を除く。しばらくしてスタークの姿が現れ、ゆっくりと起きたが立ち上がる気力がないようだ。
「ちくしょう……やられたか……」
「スターク…これを飲んで。」
ビアンカは回復薬をいくつか所持していた。ここに駆け付ける際にくすねてきたらしい。どうあれこれでスタークの応急処置は済んだ。
彼は薄々気づいていた。もしさっきの一撃がフィリアでなくキースによる攻撃だったとしたら、おそらく死んでいたことに。
「……ビアンカちゃん、どうして戻ってきた?」
「あたしは…またあなたに助けられたから…また、あの日のように……」
彼女は先程回復薬をもらった時、数年前の出来事を思い出していた。あれは…雪解けが始まりつつあった季節のことだった…。