THE MALEDICTION OF ALLEN'S GODDESS Ⅴ
解除を宣言した途端に締め付けていた腕の呪縛がゆっくりと解ける。機能しなくなったそれはただの液体に戻った。
「ば、ばかナ!!ナゼ私のリキッドボディーが…!?」
「簡単だよ。魔人の第二の能力…万象還元。」
これを発動している間、自分以外の一切の特殊能力を無効とする。つまり、悪魔化状態も解除されてしまうのである。
しかし、その他の作用として自分の動きが完全に封じられてしまう。
つまり、悪魔化を封じたところで形勢はさほど変化しないというところである。
「ハッ…まぁいい。どうやら通常の魔力は使えるようだな。ならば私のしもべ達を使ってとどめをさしてやろう!!」
「残念、そいつは無理だ。お前はここで終わりだ。」
「ばかめ!!君は動くことすら出来ないんだろう!?そして、その魔人の能力を解除すれば私はまたリキッドボディーを復活させる!!そうすれば君はおわ……」
一瞬の出来事だった。御託を並べるレンブラントの額から血が流れ出る。原因は剣が貫通したためである。しかしながら無論スタークは動けない。これは…無意識なままのアレンによる攻撃だ。
「な……なぜ…だ……こいつは…私の手駒だったはず……」
「言ったはずだぜ。アレンを操れるのはお前だけじゃない…とな。」
「……だから……なぜ君が操作しているのかと聞いている……」
すると彼はアレンの持つ剣を見てみろと言わんばかりに指を示す。
その剣は…フィリップス・シャンデリアにはいる前に託したものだった。これはただの剣ではない。魔力を溜めることが出来るのだ。そして、それにはスタークの魔力が込められていたため、彼の魔力と剣が共鳴し合いコントロールを成功させたのである。とてもうまくいく可能性は低い技であり奇跡と言っても過言ではない。
「簡単なトリックだろ?お前の頭脳なら理解出来るはずだぜ。
…と言っても、もう死んでるか。はははっ」
目を見開き、口を半開きになったままレンブラントは息絶えた。その死に様はあまりにも自然すぎてまだ生きているような気さえしてしまう。
アレンはその後目を覚まし、起き上がる。どうやらこのシアタールームで起きたことを何も覚えていないらしい。
「……僕は何を…?母さんは?」
すると突然映写機がひとりでに起動し始める。スクリーンに何か映像がうつしだされた。それは、髪の長い女性がただこちらを向いているだけのものだった。彼女こそ……シェリー・クロニクル。アレンの母親である。
「母さん……」
しばらく映像に見入っていると、彼女はアレンに微笑みそしてそのまま消えていった。
さらにタワーの奥へと進むために跡にしたシアタールームには映写機の音だけがむなしく響いていた。