3 ENEMIES Ⅱ
緊迫した空気の中アルフレッドの案内に従ってネリスト城への道を進んでいく。スタークは退屈そうに欠伸していた。到着を促すように愚痴を漏らしていたが、マイペースなアルフレッドはそれを無視する。
「なんだか…やっぱり怖いとこっすね…」
マリオは草原でウロウロ徘徊している狂犬に怯えながら周りに同調を求める。そうしている中でジュリアはただ黙って俯いていた。そんな彼女を慰めるかのようにビアンカは話しかけていた。戦いが始まろうとしている今はこうしてそれぞれの時間を過ごすのも悪くはないだろう。僕は少し遠方を見つめた。するとそこには高くそびえ立つ城のような建物が見えた。あれがネリスト城なのだろうか。
「あれだよ…あそこに化け物がいる。」
ジュリアは体を震わせながら前方を見つめていた。たしかにそこからは異様な魔力が感じられる。平和軍本部にエデン総力が侵入した時に感じたものによく似ている。
それから暫し歩くと開放している城門に辿り着いた。厳密に言えば開閉する役割を果たす鎖が切れてしまっているのである。そこをくぐり抜けると寂しれた城下町の光景が広がる。複数の悪魔が上空を徘徊し、周囲は黒い霧に包まれていた。どうやら毒ではないようだが、忌むべきものであることには変わらない。そして、侵入したアレン達に悪魔が降りて襲いかかる!!
「くるぞ!!」
全員が武器を構えて接近する悪魔に対抗する。悪魔の形態は人型から獣型まで様々であり、それらは従来よりも明らかに強い。おそらくこの黒い霧やこのネリスト大陸全体の魔力に当たっていることにより強化されているに違いない。一体の悪魔を倒すだけでも一苦労である。
「なんとか…倒したみたいね…」
「ビアンカちゃん…大丈夫かい?」
「えぇ…ありがとう。…あれは誰?!」
ビアンカが指をさした先には明らかに住民ではない人物がいた。彼はエデンの刺客…それは彼女やアルフレッドがよく知っていた。
「よく来たネ。僕の名前はゼトー、エデンNo.20さ。ここはエリオット様の領域…見てくれ!素晴らしいだろ!?ここには多くの民が眠っている…」
「なーにが眠ってるだと?てめぇらが殺したんだろうが。」
「オォ…君はたしかスタークとかいったかな?はじめましてダネ。」
「さぁて…やるのか?やらないのか?俺の昔の番号、知ってるだろ?」
「あぁ、もちろんサ。でも、ここでは戦わない。ネリスト城の中で待ってるから…」
そう言い残すとゼトーは黒い翼を利用して城へと向かっていった。彼らは追いかけるように走る。そして、目の前には大きく頑丈な門が現れる。全員が門の前に立つとそれはゆっくりと開いた。
赤い絨毯の上を進んでいくと、三方向に枝分かれした通路が待ち構えていた。おそらく、ここで全員が一つの方向へと進み全滅する可能性も皆無ではない。その点を考慮した時、危険であることは踏まえた上でアルフレッドは三つのグループに分かれて三方向へと進むことを提案した。無論それを拒む者はいなかった。そしてそれぞれスターク・マリオ、ビアンカ・アルフレッド、アレン・ジュリアという編成で組まれた。こうして、皆生きて再会することを誓って道へと散らばっていったのである。