DARING CHALLENGERS Ⅷ
その後も玩具操作によるティアの攻撃は連続し、ビアンカはただダメージをひたすら受けていく。稀に回避した時に攻撃を仕掛けてもその効果はあまり無い。そして、彼女はただ回避して逃げ回るという戦法を取り始めた。
「ねーねー、逃げるだけじゃ負けちゃうよー?」
確かに、ティアの言う通りこのままでは形勢は逆転出来ないだろう。ロボットは更に強化し続けて、ビアンカは追い込まれていく。
もはや、彼女は魔力を脚に掛けることによって走っていた。肉体はもう限界に近づいていたのである。
そして、とうとう魔力は尽きた。
「…どうやら、ここまでみたいね。」
「そーだね。どーするの?死んじゃう?」
「はぁ?何言ってるの?
遊びはここまでってことよ。」
そう言うとビアンカは自慢の剣を腰にしまった。これから彼女の本領が発揮されるのである。ビアンカは元々エデンの一味だった。つまり、悪魔化が発動出来るということだ。
しかしながら、彼女はもう脱退してずいぶんと時間が経過した。かつて程の力は残ってはいないだろう。
「それでも、魔人にならないあなたくらいなら勝てるわよ。」
悪魔化を発動するにはそれぞれ条件というものがある。例えばかつてフィリップスタワーにて現れたレンブラントは自らの体を液状にする能力を得た。その発動条件は狂気である。同様にビアンカにも条件がある。そして、それを満たしたのである。
「あたしの発動条件は、空白。つまり、魔力を空にすることよ。」
そのために炎や魔力を乱用していたのだ。そして、彼女は変化を遂げた。背中には紫紺の羽、凛としたその姿は蝶を彷彿とさせる。
「うわー!きれーだね!」
「ありがとう。試してみる?」
ビアンカは瞬時にその姿を眩ませてティアの操作するロボットを翻弄する。先程よりも速度は何倍にも飛躍的に向上しているため、ロボットの攻撃を容易に回避できる。
「あれあれ…?手を抜いてるのかしら?」
「むっかつくー!これでおわり!!」
するとロボットの胸元が開き、凄まじい量の魔力が集中し始める。どうやら、あれは砲撃のようだ。そして、ティアの合図と共に魔力の砲撃は放たれる。
それは異常なスピードで前方へと広がっていき、目の前の視界は爆風に包まれた。
「あーあ。死んじゃったかな?」
「だから…勝手に殺さないでよ。ここよ、こーこ。」
ビアンカは蝶の羽で上空で浮遊していた。そして、彼女は羽をはためかせる。するとそこから肉眼では確認出来ないほど細かい粒子がばら撒かれる。鱗粉である。
「あたしは蝶なんて綺麗なものじゃないわ。輝きを失った、ただの蛾よ。」
その鱗粉がロボットに付着した時、それは突然爆発した。それに誘爆して次々と無数の爆発が生じた。これがビアンカの悪魔化 翔蛾である。
ロボットは完全に破壊され、中にいたティア自身も止むを得ず魔人になることで体を守ったのである。
「まけちゃった…」
「さぁて、あとは…うちの暴れん坊だけね。」
こうして、戦いはそれぞれ勝利をおさめることに成功した。あとは最後の戦いを残すのみである…!!