資産家独居老人の道楽12
ワシは脚部のスラスターを噴出しながら、下からは目立たないある程度の高度を維持したのじゃ。
上空から様子を見ると、黒い鎧を着た軍勢は非常に陣形が整っており、赤い鎧を着た軍勢は統制が取れておらず戦線が乱れており右翼が崩されてしまえば敗戦することは容易に推測できた。
「それにしても赤鎧は戦が下手じゃのう…。」
「やっぱりあなたにもそう見えるかしら?」
「なんじゃ?この世界か虫がしゃべるのかのう」
ワシの顔の横には虹色の羽虫の様な小人の娘が飛んでおったのじゃ。
「まあ、私のことを虫なんて言う人は初めてかしら!これでも私はレインボーピクシーのファンネルよ!この世界では最高位のピクシーなんですからね!ふん!」
薄い虹色のドレスを着た小さな娘にワシは尋ねた。
「ファンケルとやら、こやつらはなぜ戦をしておるのじゃ?」
「ファンネルよ!この世界では100年戦争と言って、飽きもせず、ずっーと戦争をしているのよ」
「しかし…およそ両軍が10万ほどじゃ。国の行く末を決める戦にしては少なすぎる軍勢じゃの?」
「もう人的資源が不足して世界に継戦能力のある国はないのよ!誰かが仲裁か調停をしないと泥沼でしょうね」
「ファン…ネルよあちらの神輿に乗ってるのは誰なのじゃ、両軍本陣に神輿に乗った奴がおるのう」
「黒い方の神輿がアイオス国王で赤鎧の方がアンドロイド国王よ」
なるほどのう。ワシ的には勝ち戦に乗るのは面白くないのう。
「ふむ、よし!ワシは決めたぞ!ワシのスマホはアンドロイドじゃからアンドロイド国王軍につくのじゃ!」
「じゃあ私はアンドロイド国王にそれを伝えてくるわね!奇跡のレインボーピクシーの話なら絶対に聞くし!」
「あいわかった!戦線を一次後退させるように伝えてくれると助かるのじゃ!」
「はーい!」
ワシは赤鎧のアンドロイド国王軍の最前線に降り立つ、敵も味方も同様しておるのじゃ。
ワシはアイオス軍を黒刀で斬って斬って斬り倒しながら叫んだのじゃ!
「一次後退して陣形を立て直すのじゃ!」
すると一騎の騎馬が現れてワシに話しかけてきたのじゃ。
「レインボーピクシーのファンネル様からお話は聞きました。私はエルミン・キルヒアイスです!軍を後退させます!」
「任せたのじゃ!」
エルミンとやらの号令で全軍が後退する。およそ100mくらいかの?
ワシは黒刀を鞘に納めて左腕の義手コブラを取外したのじゃ!
高周波ブレードに内なる氣をめいいっぱい込めてみる。
するとブレードから光の剣が途方もない長さに伸びたのじゃ!
ワシは光の剣を水平に構えて、右から左へと一閃させてみた!まったく手応えがないのじゃ。
「どこまで切れとるのかのう」
するとアイオス軍兵士は全員ピクリとして動かなくなった。
アイオス国王の載った神輿がドンッ!と地面に落ちると腰から切断された10万の兵士の上半身がボトボトと地面に落ちた。
「なんじゃ?これは…?……切れすぎてつまらんのう」
ワシは義手コブラをはめ直して、アイオス国王のところまで死屍累々の屍の間を歩く。
「ヒッ!バケモノ!」
「良いからこっちに来るのじゃ!」
ワシはアイオス国王の襟首を掴み引きずるようにして、アンドロイド国王のところまで運ぼうとするのじゃが…。
アンドロイド国王軍の兵士もワシを恐れて道をあけるのじゃった。
「やり過ぎたかのう。しかし…ワシにも分かるぞ、あれはイデソードと言う武器によう似ておる」
ボソッっと喋りながら歩いていたらアンドロイド国王の前に着いていた。
「アンドロイド国王とやらよ、こやつがアイオス国王で間違いないかのう」
「その前にそなたの名を聞かせてもらおうか」
「剛田甚左衛門だ」
「ゴウダ・ジン・ザエモンと申すか。この度の助太刀、アンドロイド国として礼を尽くすことを約束する」
「で、この男がアイオス国王で間違いないのじゃな?」
「ああ、間違いない。衛兵、アイオス国王を連行しろ!くれぐれも丁重に扱うのだ」
「は!」
何人かの衛兵がアイオス国王を連れて行ったのじゃ。
「では、ザエモン殿。王宮までご足労願えるかな?」
「ワシはかまわんのじゃ」
なにせワシはここへ来たばかりで住むところも食料も金も無いじゃないのじゃ。
少しばかり報酬がもらえればしばらく食い繋げるであろう。
それから3ヶ月馬車に乗って移動したのじゃ。
宿場町では寝床で寝れるが、大半の兵は野宿じゃった。
男爵領などを通過するときは、ワシも屋敷に呼ばれて美味い食事と豪勢なベッドで寝かせてもらえたのじゃ。
そして小高い山を越えると眼下には広大な王都が見え、ひときわ大きな王城も見えた。
その時はワシは気分転換で馬に乗せてもらっていたのお。
思い出すのは道すがらの途中で出会う兵糧を運ぶ部隊が王の帰還に驚いていたことが幾度もあったことじゃ。
ワシらは馬を走らせて王都へと入ったのじゃ。
住民の歓迎ぶりは凄まじいものがあり、紙吹雪などが舞い、沿道の娘からは花束がワシに贈られたのじゃ。
兵の数は気がつくと数百近騎になっており、ワシは馬を降りて城を下から眺めた。
ノイバンシュタイン城風の洋風の城じゃ。
アンドロイド国王は自らワシを城内に導いた。
ワシがどこから来たのか?
年齢は何歳か?
質問だらけじゃったのう。
「では、ザエモン殿の居室へこの者が案内いたしますので、晩餐までは部屋でお休みください」
紹介された娘はラムネと言い、ワシを部屋まで案内してくれたのじゃ。
しかし…案内された部屋はちょっとしたスイートルームより広くて豪奢な部屋であった。
「ザエモンさま、何かご入用がございましたら遠慮なくこのラムネへお申し付けください」
「水をもらえるかの?」
「かしこまりました」
夜の晩餐はそれほど大きな宴席ではなかったのじゃが、王国の要人が多く集まっているようじゃった。
ワシは腹が減っていたので大いに食べて飲んだのじゃ。
異世界の酒も食事もなかなかのものであった。
「では、あすの正午に叙勲式を行うので謁見の間に集まってくれ、ザエモン殿も必ず来て欲しい」
「うむ、わかったのじゃ」
そして、ワシは居室へ戻りラムネに酒を1杯頼んで、それを味わってから寝たのじゃ。
「ザエモンさま、朝でございます。入浴の準備が出来ておりますので、こちらへどうぞ」
「風呂か、それは良いのう」
するとじゃ、大きすぎる浴室には2人のメイドが待機しいて、ワシの服を脱がそうとするのじゃ。
「1人で出来るから大丈夫なのじゃ」
「そういう訳には行きません。国王よりザエモンさまのお世話を任されておりますので、お断りされてしまうと私達は解雇されてしまいます」
「ならば仕方あるまいのう」
そこからワシはされるがままに入浴させられたのじゃ。
まあ、悪くはなかったのじゃがの。
そして朝食じゃ。朝から豪勢な食事じゃった。
そしてその次はお着替えの時間じゃ。
懐かしい燕尾服が容易されており、それをメイドたちに着せられたのじゃ。
謁見の間に向うと鎧兜を着て槍を持った兵が数十人、参列するものは昨日の晩餐のメンバー。
玉座には誰もいない。
「アンドロイド国王のお見えである!」
なんか吹奏楽の音楽隊が演奏を始めて、奥から正装をしたアンドロイド国王が現れて玉座に座った。
「皆の者よ!楽にせよ!」
「ははーーっ!」
「先ずは叙勲式を行う!ゴウダ・ジン・ザエモン殿前へ!!」
ワシはアンドロイド国王の前に立ってこう言った。
「ワシに何かくれるのかのう?」
「国王の御前であるぞ、控えよ!」
国王の隣にいる若造がうるさいのじゃ!
「構わん!」
アンドロイド国王は玉座から立ち書状を手に持って話し始める。
「この続く世界戦争でわが国は多くの臣と民を失った。先の戦いでは、ここにいるゴウダ・ジン・ザエモンの働きで我々は大勝利を治めた!よってゴウダ・ジン・ザエモンを空位であったギャラクシー辺境伯とし、ザエモン辺境伯と名を改めて統治をしてもらう。重ねて金1000万ガラゲと褒賞の宝物を三点下賜する!構わないな?ザエモン辺境伯」
「ワシは住む家と食事と寝るところがあれば構わんのじゃ。ありがたくその任を受けようとするかのう」
「尚!エルミン・キルヒアイス将軍を補佐役に命ずる!以上だ」
それから何人かに叙勲が行われて叙勲式は終了したのじゃ。
それから1週間の間、ワシはアンドロイド国王からザエモン辺境伯領の現状をレクチャーされた。
領主が居て、臣下が居て、兵士がいるこれは隣国と接しているので兵数は50000人ととても多い。さらに市民と多数の奴隷がいるとのことじゃった。
ワシは奴隷制度に対して、アンドロイド国王に疑義を申し立てて、ザエモン辺境伯領に限り奴隷制度を廃止して、奴隷の所有者からワシが奴隷を買い取る形にし、パソナという組織を立ち上げて奴隷や職を求める市民を派遣する人材派遣会社を創設することに決まった。
そしてワシとエルミン・キルヒアイス一行は与えられたザエモン辺境伯領へと向かった。
しかし…ワシがザエモン辺境伯領に限り奴隷制度を廃止したことが、あんな事態を呼び込むことになるとはその時はまったく予想だにしてなかったのじゃった。
ザエモン辺境伯領に入ると山あいから歌声が聞こえたのじゃ。
「ハイリハイリフレハイリッホー!ハイリハイリフレッホッホー」
「エルミンよ?なんじゃあれは?」
「あれは無害な巨人たちです。この春の季節になると歌いながら、ザエモン辺境伯領を通り過ぎます。まあ、春の訪れを告げる光景ですね」
「無害のお…。」
「ザエモンさま、古い伝説によりますと数千年に無害な巨人に攻撃を加えた王国が先頭を行く獣の様な巨人の投石により滅びたというものが伝わっています」
「それは難渋じゃの」
「はい」
「それにしても…。ハンバーグが食べたくなる歌じゃの」
「ザエモンさま?ハンバーグとは?」
「材料さえあれば作ってやるわい」
春の陽射しとそよ風は歌声をいつまでも運んで来た。
「ハイリハイフレッハイリホー!ハイリハイフレッホッホー」




