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命の魔剣に魅入られた僕は、裏切られる度に最凶へと成長する  作者: ヴォルフガング・ニポー


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第40話 Sランクとは

「なぜ……お前はこの子をそこまで殺したいんだ……?」


 もはや息も絶え絶えにジャスティンさんが答えていた。


「こいつはアルベリオを殺した」


「バカな……Eランクになったばかりの新人にそんなことできるわけないだろ……」


「じゃあ、あいつが仲間を守るために死んだって、本気で思ってるのか?」


「いいや、違うね。今のこの小僧の動きを見ただろ。こいつは何かおかしい能力をもっている。そして、それでアルベリオを殺したんだ」


 途中で目覚めた僕だけど、だいたい話の内容は理解できた。


「納得……できないな。だったらなぜお前がその手でやらない?」


「Sランクってのはそういうもんなんだよ。世の中きれいごとだけじゃ何もできないんだよ。Sランクになるってことはその仲間入りするってことなんだよ」


「新人殺しか……噂では聞いていたが……。無益な……」


「ふん……強くなりたいと上を目指しているうちは、みんなのために悪い魔物をやっつけてりゃそれでいいのさ」


 対してミシェルはしたりとした笑顔で答える。


「だけど上に行きついちまったらどうだ。もう何も目指すものはねえ。育ちがよけりゃ貴族どもが召し上げてくれるかも知んねえが、俺たちみたいなのにはそんなことはありえねえ。いつまでもいつまでも冒険者として命がけで戦い続けなきゃならねえんだ。うまみがねえとやっていけるわけないだろ」


 ジャスティンさんの腕はもう何の力を生み出すことができない。


 僕は自らの意志で庇護から離れることにした。


「マルク……」


 その一言にジャスティンさんのあらゆる感情が含まれているように感じられた。


「アルベリオは新人殺しの常習犯だった。ファルタだって、アルベリオの下でそうやってきたんだぜ」


「……ファルタがそんなことするわけないだろ」


 その一言こそが彼の愚直さを表わしていた。


 そして、僕の顔を見た。


 そんなはずないだろ、と言いたかったのだろうか。


 いや、ファルタさんは僕を殺そうとした。


 だけど僕の答えは決まっている。


「ファルタさんは、僕を助けるために死にました」


 ジャスティンさんはそれで満足したかのような笑みを浮かべた。


 そして、自らの焼けただれた肉体をぐるりと見渡し、わずかに残った鎧を叩いて「挑発」をした。


「何やってんの。魔物はもういないぜ」


 挑発と魔物呼びは似たようなスキルだけど、挑発は近くにいる魔物を自らに引き寄せる特徴があり、遠くの魔物を近づける魔物呼びとは少し違う。何より、挑発は必ず攻撃性をもった魔物が襲ってくることにある。


 天井から粘着質の音が聞こえたかと思うと、ジャスティンさんは僕を突き飛ばした。


 次にゼリー状の何かが落ちてきた。


 ミシェルはそれに気づいて避けようとした。が、なぜか足下がぬかるんでその場から逃げられなかった。


「土魔法!?」


 そしてそれは、ジャスティンさんとミシェルを飲み込んだ。


「スライム? まだこんな奴がいたのか!」


 それはただのスライムだった。かなり巨大だった。


「こんな雑魚、すぐにぶっ飛ばして……う?」


 スライムは攻撃能力の低い魔物として広く知られていて、Eランクでも簡単に倒せる。


 でも、それはあくまでも水分が豊富な条件の場合に限る。


 スライムは干からびると死ぬ。しかしその手前、死ぬ寸前までに乾いてしまった場合、生き延びるためにものすごい勢いで水分を吸収しようとする。


 先ほどの灼熱魔法は直撃しなかったが、その熱で死ぬ寸前まで乾いてしまっていたのだ。


 そして「挑発」された先には水分をもった人間がいた。


「ぎゃああああああ!」


 二人はみるみると水分を吸われていった。


「こ、こいつ……あ、あ、あ……」


 逃げだそうとしたが、ミシェルの右半身はすでに干からびていた。


「ふざけるな!」


 火炎魔法でスライムを吹っ飛ばしたけど、すでに老人よりもしわくちゃになってしまっていた。ジャスティンさんも同じくカラカラになって生きているのかどうかさえわからない。


 いや……今このとき剣が光った。


「残念です……」


 他人事のように僕は言った。

読んでいただきありがとうございます。

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