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命の魔剣に魅入られた僕は、裏切られる度に最凶へと成長する  作者: ヴォルフガング・ニポー


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第4話 冒険者登録をしよう

「では、あなたの名前と職業をこの紙に書いてください」


 受付嬢はカウンターに戻ると、一枚の紙を差し出した。


「あの、職業って何て書けばいいですか?」


「剣で戦うなら戦士だし、武術で戦うなら武闘家、魔法で主に戦うなら魔法使いとか。まあ、これは魔物と戦うことを目的とした人の職業ね。そういうことを考えてないなら……」


「だったら、剣も魔法もできます」


「そう、だったら魔法剣士ってところかしら」


 その他にいくつかの事項を記入して紙を渡した。


「はい、これで仮登録ができました」


「仮ですか?」


「ええ、あなたの冒険者としての適性は不明なので。三つの条件を満たしてから本登録となります」


「適性ってのは、冒険者としてのルールをきちんと守れるかとか、戦闘能力に問題はないかってことだ」


 ファルタさんが補足してくれた。


「ルールが守れない人は論外です。あと、魔物と戦うにしてもどうしようもないくらい向いてない場合はやはりお断りしないといけません」


「た、確かに……」


 これまで田舎で魔物と戦ってきたから、どうしようもないってことはないと思うけど、自信があるわけでもない。


「まずは、経験のあるパーティに見習いとして一ヶ月間加入していただきます。そこで問題が報告されたら評価が下がります。これが三回あると適正なしと見なされて本登録できません」


「え?」


 一ヶ月なんて思った以上に長い期間だ。悪いパーティに入って、わざと悪く評価されたらどうすればいいんだ。


「ただ、安心していただきたいのは、事実から大きく離れた評価をされたと思われたなら異議申し立てをすることができます。そしてその主張が正しいと判断された場合、虚偽報告をしたパーティにはペナルティが課されます。ですから、悪い報告をされる心配はないと思ってください。ギルドが信頼するパーティを紹介しても構いません」


「そ、そうですか……」


「もう一つが、ギルドが行う新人講習を十日受けていただきます。講義のときはもちろんパーティでの見習いはできません。最初の四日はすべて講習です。それからは見習いと講習を交互に行います」


 このような教育システムのおかげで冒険者は現在のような地位になったんだ。


「これをきちんと欠席せずに受講しないと本登録はできません。もちろん、見習い中の怪我や体調不良による欠席は認められます。その場合は別日に受講してください」


「わかりました」


「最後に一つ、仮登録冒険者のための保険に入っていただきます。新人はとにかく怪我をする可能性が高いです。切り傷くらいならたいていのパーティには簡単な治癒魔法が使える人がいるでしょうから、その人に任せればいいでしょう。


 ですが、魔物に肉を食いちぎられたとかになると止血が精一杯で、街に戻って修復師による再生を受けなければ治すことはできません。その治療費は通常、個人でまかなえるものではないでしょう。


 面倒を見る側のパーティがその分を負担しなければならないというのも筋が違います。そのための保険です。なのでこれは義務です」


「保険料っていくらですか?」


「銀貨二枚です」


「に、二枚……。持ち合わせがほとんどなくなっちゃう。無傷で本登録になれたら返ってくるとかあるんですか?」


「いいえ、それでは保険の意味はありません。決して安い金額ではありませんが、保険なしで治療を受けるとなるとその百倍以上の費用になってしまいます」


「なんだ、マルク。そんなことも知らないで冒険者登録するつもりだったのか?」


「ははは、すみません。田舎の村だとそういった情報はなくって」


「急がないなら、しばらく冒険者以外の仕事でお金を貯めるというのもひとつの手段です」


「この年齢で銀貨二枚なら二ヶ月くらいかかるぞ」


「そうですね、見た目が幼いから子供向けの仕事しかないかも」


「じゃあ、二ヶ月どころじゃないじゃないか」


「あ、あの、見習い期間中に魔物を倒せば報酬とかもらえるんですか?」


「パーティによりますね。指導料として報酬をくれない場合もあります。ひどいと思うかもしれませんが、そのやり方は必ずしも不適切ではありません。新人研修のためにわざわざ低いランクの依頼を受けるわけですから、そのパーティは報酬が減ってしまいます。なのでそれは事前に確認しておく必要があります」


「…………!!」


 悩んだけど、保険に加入してしまった方がいいと思った。理由はとくにないけど、ちんたらと時間を過ごしてたら目標にいつまでも近づけないような気がする。


「では、後は面倒を見てくれるパーティを探すだけですね。わからなければこちらで斡旋しますが、ある種人生がかかっているわけですから、自分で探す方がうまく行かなかった場合の後悔がなくていいですよ」


「あはははは……」


 その言い回しはうまく行かなかった人の割合がかなり多いように受け取れる。苦笑いするしかなかった。


「とはいえ、よほど協調性がないとか弱すぎるとかない限り、変な評価する人なんていませんから」


「なんだったら、うちのパーティに加入してみるか? きみならひとまず協調性がないなんてことはないだろう。一応Aランクパーティだし、リーダーはSランク冒険者だ」


「え、Sランクですか?」


 Sランク冒険者とは、もはや人を超越した存在とまで言われる能力の持ち主らしい。


「ああ、そういう奴を見ておくのはいい勉強になると思うぞ。ランクの高いパーティに守ってもらえば怪我もしないだろ。きみがよほど鈍くさくない限りな」


 それは願ってもない話だ。


 少なくともこのファルタさんは面倒見がよさそうだ。


「とりあえず、パーティに紹介してみるか。報酬についても相談してみよう。気に入ったなら加入してみるがいい。それなりに頑張ってくれれば晴れて本登録だ」


「わかりました。ひとまずお会いしてみたいです」


 トントン拍子で話が進む。これはラッキーだ。


「はい、ではひとまず仮登録のための条件はすべて完了しました。その袋は城壁の門番さんから預かったものでしょう。暗号魔法で解除しますから、中の武器を取ってください」


 受付嬢に袋を渡すと何やら詠唱を始めた。そしてパキンと音がすると袋は簡単に開いた。


「どうぞ」


 マルクは中に入った短剣を取り出した。


「冒険者らしくなったな」


「ありがとうございます」


「じゃあ、行こうか」


 ファルタさんについて行くことにした。


「おい、ちょ……」


 そんな彼に誰かが後ろから声をかけようとしてやめた。


 僕はこのとき、まったく気づいていなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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