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命の魔剣に魅入られた僕は、裏切られる度に最凶へと成長する  作者: ヴォルフガング・ニポー


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第2話 エリメルの町

 門番の言う通りに道を進んだけど、噴水はなかなか現れなかった。


 町が大きすぎるんだ。


 僕が暮らしていた田舎なんて、数分も歩けば集落の端から端まで行き着いてしまう。建物がこんなにも延々と続く風景は初めてだった。


 領主の城下町だから人が多いのはわかっていたけど、想像を超えていた。


 中には武器を携えた者もいる。


 冒険者だ。


 思わず目が奪われてしまう。


 自分もあんな感じになれるのだろうか。


 三〇分ほど歩くと町並みが古くなってきた。


「そうか、町が拡大したってことか」


 昔はこの古い所までが人間の生息域だったはずだ。魔物がいるからここまでが生活範囲だったんだ。でも冒険者が魔物を撃退して、住む場所を広げることが可能になった。


 これは冒険者という仕事ができたから急にできたというものじゃない。冒険者たちの質が向上したからだ。


 なぜ質が向上したのかといえば、もちろん冒険者ギルドによる教育の成果だ。


 ギルドは冒険者の管理のみならず、生き残るための知恵や魔物の攻略法など過去の蓄積の講習を行っている。教育水準の向上はそのまま冒険者の資質の向上につながり、魔物に奪われた土地を取り戻すことに成功しているのだ。


 という風に聞いている。


 とはいえ、この道はどこまで続いてるんだろう。


 いつまでも見つからない目的地を探すというのは想像以上に体力を消耗する。一時間も歩くと自分でも驚くほど疲れ切っていた。体力には自信があったのに。


 いよいよ困り果てた頃、噴水のある広場が見えた。


「はぁー、ここかな?」


 ついひとりごとしてしまった。


「あれは……」


 近づくと、噴水の横には五人の勇ましい佇まいの銅像が立っていた。


 人間と巨人とエルフとドワーフと狼人。


 彼らはかつて魔王を討伐した五人の勇者パーティだ。


 その偉業に敬意を表し、ある程度大きな町にはこのような銅像がたいてい置かれているらしい。その足下にはたくさんのコインが置かれていて、二〇〇年経った現在でも崇拝されていることがわかる。


 自分もこういう英雄になりたい。


 ただ――、彼らは勝利の凱旋をしていない。


 誰一人として帰ってはこなかった。


 だけど確かに魔王の影響は消えたから、魔王を倒したのは間違いないだろう。


 おそらく相討ちになったのだ。


 戦いを見届けた者は誰もいないから真実はわからない。


 多分そうに違いないと推測するしかない。


 通りがかりの老婆が銅像の足下にコインを置く。そして連れている孫に勇者たちに感謝しなさいというと、子供は素直に手を合わせた。


 僕もそれに倣った。


 しかしながらこの銅像は目標ではあっても、今の目的ではない。


「えっと……」


 広場を中心に立派な建物が円形にぐるりと取り囲む。


「あれか」


 冒険者ギルドはその中でもとくに目を引く大きさと絢爛さですぐにわかった。


「うわ、こんなすごいところなのか……」


 美麗な石造りの建物に僕は思わず尻込みした。ちょっと入りづらい。


「どうした、迷子かい?」


 声をかけてきたのは驚くほどの巨漢だった。立っているだけで圧迫感が半端ないのに、分厚い鎧と背負った巨大な剣がさらに威圧的だ。


 でもその表情は思いのほか柔和で、僕の目線に合わせるためにしゃがんで話してくれた。それでもこの男の人の方が大きいのだけど。


「あ……ぼ、冒険者ギルドに登録しようと思って」


 巨人族に会うのは初めてだった。


 成人になると最低二メートルの身長になり、人によっては三メートルを超える。とくに上半身の骨格は人間よりも二回りくらい大きく、筋肉質だ。


「君は知らないのか? 登録は十六歳以上だぞ」


「あの、僕、十七です」


「え、十七?」


 この人も驚きを隠さなかった。


「……まあ、年齢はギルドできちんと調べられるか」


 巨人の人は慣れているのか、このことについて悩んだりはしなかった。


「冒険者になって村を守っていくということかい?」


「あははは、そんな感じです」


 実は村から追放されたなんて、見ず知らずの人にべらべらしゃべったりなんてできない。


「でも、どうかな、もっと大きな目標を持ちたいです。伝説の英雄とか」


「はははは、高い目標を持つことはいいことだ。私についてきなさい、案内しよう。私は見てのとおり冒険者だ」


「そうなんですか。ありがとうございます!」


「ほう、元気がいいな。大変結構だ」


 威圧感はすごいけど、話せばとてもいい人だった。


「私の名はファルタ。君の名前は?」


 初対面の人の名前を聞くときはまず自分のほうから名乗る。どこかで聞いたことのある作法をそのままやっている人を見ると、なんだか知らない場所にきてしまったんだなと改めて感じた。


 でもこういうきちんとした態度には、きちんとした態度で答えないといけない。


「僕はマルクといいます」


「よし、じゃあ行こう」

読んでいただきありがとうございます。

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