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命の魔剣に魅入られた僕は、裏切られる度に最凶へと成長する  作者: ヴォルフガング・ニポー


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第18話 絶望

 爆風から身を守るため、僕たちは岩陰に隠れた。


 その間にポーションでトリエルさんが魔法力の回復を図る。


 ヒュドラの肉片が飛び散る。そのおびただしい量が大ダメージを与えることができたことを物語っている。


 白い煙が洞窟内の視界を消し去る。その後に雨が降ってきた。つまりこの煙は水蒸気からできたものだ。おそらくヒュドラの爆発によって発生したんだ。


「体内の水分を一瞬で数万度の超高温にする魔法だ。水蒸気爆発を起こしてどんな巨体でも吹っ飛ばすぜ」


 アルベリオさんは満足げに笑った。


「この魔法を使える敵なんてそうそういないからな。へへへへへ……ようやく使うことができたぜ」


 煙が晴れると、胴体の下半分を残して骨だけを残したヒュドラがそこにあった。その骨も灰になってぼろぼろと崩れ始めていた。


「なんて魔法だ」


「さすがSランクなのにゃ」


「やった……」


 誰もが勝利したと思っていた。


 でも違った。


 一息ついたところでみんなが気づく。この異様に濃い紫の空気は何だと。


 もちろんそれは魔素だ。


 魔素がこれまでになく高濃度になっていた。そしてそれはヒュドラに集まっていた。


 魔物は魔素によって生きているといえる。


 それはボスが発していると考えられる。


 自らが生み出した魔素をヒュドラは今、自らのもとに戻しているのだ。


 そしてこれまでにないほどの速さで、いやまさに一瞬で、元の姿に再生してしまった。


「はあ? 何だそりゃ……」


 アルベリオさんがつぶやいた。


「不死身ってこと?」


「い……インチキなのにゃ」


「これは……これまでSランクが挑んでも倒せなかったわけだ。完全に疲弊しきったところで完全に再生されるわけだからな」


「あわわわわわ……」


 明らかにそれは絶望だった。


 爆発した瞬間に逃げていたなら可能だったに違いない。だけど、あの状況でその判断をする者なんていない。


 完全に詰んだ。


「あーあ……」


 この状況にリーダーは白けた表情になっていた。


「撤退だな……」


 その判断は適当だと思うが、どうやって? 僕にはこの先の戦術がわからなかった。


 みんなはどうすればいいかわかっているのだろうか。


 それは意外にも敵に背を向けてただ逃げるだけだった。


 僕も慌ててその後ろについていく。


 ヒュドラは僕らの位置を確認すると、うなり声を上げて襲ってきた。


「これって本当に逃げられるんですか?」


 走りながらセシリーさんが思ったことを口にする。


「あう!?」


 僕の目の前に目に見えない何かの壁があった。前に進めない。


「まさか……」


 トリエルさんの障壁魔法?


「ごめんなさいね」


 こちらを振り返って走り去るトリエルさんは笑っていた。


 衝撃を受ける僕の気持ちなどおかまいなしにヒュドラの頭が襲いかかってくる。でも短剣で斬ればその攻撃はかわせる。


「え?」


 腰の短剣がなくなっていた。


「にゃはははは、ウチは盗むのもうまいのにゃー」


 ライナさんがなぜか僕の剣を握っていた。その無邪気な笑顔が僕の心を抉る。


「これを売り飛ばせばかなりの金になるのにゃ」


 僕はヒュドラの攻撃をすんでのところで躱す。


「なんで!?」


 僕は叫んだ。


 アルベリオさんもフェアルタさんも笑っていた。


 僕は理解した。


 逃げるための生贄として取り残されたのだ。


「アルベリオさん! なんでマルクくんを!?」


 わかっていないのはパーティに加わって間もないセシリーさんだけだ。


 正直、アルベリオさんだけならこんなことをしかねないとも思えた。だけど、ファルタさんもライナさんもトリエルさんもこんな簡単に捨てるなんて考えもしなかった。


「悪いな。私たちが逃げるまで頑張って足止めしてくれ」


 ファルタさんの声には一切の罪悪感が含まれていなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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