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命の魔剣に魅入られた僕は、裏切られる度に最凶へと成長する  作者: ヴォルフガング・ニポー


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第10話 ゾンビの群れの倒し方

 ゾンビやスケルトンなどのアンデッド系の魔物の特徴は何においても再生能力だ。


 剣や魔法で一部を砕いても一分もすればまたつなぎ合わさって再生してしまう。つまり、理屈の上ではどれだけ攻撃をしても倒せないということになる。


 百年ほど前までは骨や肉を灰にまで粉々にできる魔法がなければ絶対に戦ってはならない魔物として位置づけられていた。


 しかしその後、それぞれの個体に核と呼ばれる小さな虫のようなものがついており、これを破壊すると再生できなくなることが発見された。


 ほどなく核を見つけるスキルが開発され、アンデッドは討伐可能な魔物になった。かつてはあちこちの墓地で出現していたが、地上のものはほぼ駆逐され、現在ではダンジョンでしか現れなくなった。


「右から、肩、右膝、仙骨、頭、肋骨なのにゃ!」


「ありがとうございます!」


 高ランクのレンジャーは核を見つけるスキルをたいていもっており、ライナさんもその例の通りだ。


 指示の通りに攻撃するとスケルトン五体の群れを次々と砕いていった。


「ほう、スケルトンよりも素早いじゃないか」


【スケルトン】骸骨の戦士である。筋肉がないのに筋肉があるかのように核が動かしており、その軽さから単純には人族の二、三倍の素早さがある。力も強い。


 ただし敵の動きに対する反応が鈍いので、身体能力を生かせていない側面はある。核をできるだけ早く潰してしまわないと、Cランク冒険者にとってもかなり危険な敵となるので注意が必要。


「マルくん、攻撃が的確なのにゃ。一発で仕留められるから簡単にやっつけられるにゃ」


「いいえ、ライナさんの指示のおかげです」


「ずっきゅーん。ねーえ、マルくん。ぶちゅぶちゅしていいかにゃ?」


「やめんか! ここはダンジョンだぞ!」


「ライナ、それはハラスメントよ」




 ダンジョンには初めて潜るけど、天然の洞窟のようなところもあれば、レンガが積み重ねられてできた人工のような壁があるところもある。しかもこれらは人族が手を加えたのではなく、勝手にできているのだという。


 そして数カ月あけて同じダンジョンに潜ると若干様子が変わっているとか、不思議な要素が多い。多くの冒険者はダンジョンは生きていると信じている。


 ただ、地面や壁面は間違いなく岩石であり、コケやキノコが生えてたりするけど確かにただの鉱物である。


 このダンジョンは湿っぽく、いかにもゾンビとかが出てきそうな不快な空気感だけど、他のダンジョンだと魔物さえいなければそこで暮らしたくなるような快適なところもあるらしい。


 通路は狭かったり広かったり様々で、狭い場所で大きな剣は振り回せないし、強い衝撃のある魔法を使えば崩れて生き埋めになってしまう。広かったら広かったでその空間を埋め尽くすほどの大量の魔物が襲ってくることもある。森と違って魔物との遭遇率が極めて高いのがダンジョンの特徴だ。


 湿度のせいで地面や壁は濡れていて滑りやすく、壁や天井があることによってこちらの行動が制限される。


 魔物が現れればその状況に合わせて戦い方を考えなければならないが、壁を蹴って三角飛びなどをすれば敵を翻弄することができるなど戦術的にも工夫ができる。


「うおお、今度はゾンビの群れかよ」


「さっきのスケルトンとは比べものにならない数ね。五十体はいるかしら。ここは半分くらい私が浄化してからの方がよさそうね」


 トリエルさんが浄化魔法を唱えようとした。


「いや、まずはこの数を相手にどこまでやれるかだ。坊主、お前の次の課題は魔法だ」


「魔法ですか?」


「ああ、お前が使えるのは火炎魔法と旋風魔法で、いずれもまだまだちっこい。だから性能のいいその短剣に頼って敵を倒している。だがそれじゃあ魔法剣士とは言えねえ。もっと効果的に魔法を織り交ぜて戦え」


「わ、わかりました」


「剣は攻撃以上にその身を守る防具でもある。だから剣を使うなって意味じゃねえぞ。織り交ぜて戦うんだ」


 それ以上のことは言ってくれなかった。


「行け」


 どうしたらいいんだ??


 火炎魔法で火をつけて旋風魔法で風を起こせば、炎は大きくなる。


 ゾンビは火に弱いけど、そこまでよく燃えるわけじゃない。一体に火をつけて風で燃やしても、これだけの数全体を焼き尽くすのは無理だろう。


「アルベリオ、ゾンビはさっきのスケルトンより動きは緩慢だけど力が強いからやばいのにゃ。助けてあげないとかわいいマルくんが怪我しちゃうにゃ」


【ゾンビ】スケルトンと同様に取り憑いた核によって死体が動いている。筋肉があるせいでそのパワーは段違いである。また、剣が刺さりにくい。


 これはすべてのアンデッド系の特徴だが、自らの肉体が破壊されても元に戻せることから、あらゆる攻撃が力任せである。ゾンビの場合これが直撃すると、常人はその肉体が砕け散る。うかつに近寄ると命に関わるので、注意が必要。


「だからちょっとは怪我くらいしたほうがいいって言っただろ」


「うにゃー!! ちょっとじゃないにゃ! かすめただけでも骨が砕けるにゃ!」


 とりあえずやってみるしかない。


 火炎魔法で一体のゾンビに火をつけて、火を消さない程度の旋風魔法で火を大きくする。するとそのゾンビは燃え始めたが、大したダメージにはなっていなかった。


 ここでさらに風を強くすると他のゾンビにも燃え移ったが、それ以上強くすると火は消えてしまう。これは戦闘としては効果的とは言いがたい。


 っていうか、そんなことしてたらもうすぐ目の前にまで敵がやってきてるよ!!


「うわあああ!」


 仕方なく短剣で攻撃する。五体ほど倒したところで、別の角度から攻撃してきたゾンビの攻撃がかすめる。ちょっとかすっただけなのに、皮がめくれて肉が見えた。


「いかん、戻れ! セシリー、治癒してやれ!」


「はい!」


 首根っこをつかまれ、セシリーさんの前に転がされると、治癒魔法を施してもらえた。


「アルベリオ、治癒が終わるまでに近づいてきたゾンビは浄化するわよ」


「ああ、そうしてやれ。どっちにしてもここはゾンビが湧く地点だったみたいだ。どんどん増えてもう百匹超えてるぜ」


 トリエルさんが結界を張ると、近づいてそれに触れたゾンビは光に包まれて消えた。祈祷師はアンデッド系にとくに強いというけど、Aランクともなればその能力はすごい。


 どうしたらいいんだ?


 アルベリオさんはこれ以上教えてくれる様子はないし、他の仲間も魔法剣士として訓練してるわけじゃないからアドバイスのしようもない。


 ――魔法と剣を織り交ぜて……織り交ぜることはできてない。


 せっかく燃やしたゾンビは燃えながらもそのダメージを感じさせることなく他の敵と一緒にこちらへ向かってくる。


 アルベリオさんは僕に何をさせたいんだ?


「たぶん、アルベリオは明確にこうすればよいという答えはもっていない。勝つためならあらゆる工夫をしろと言っているのだと思う」


 トリエルさんがこちらを見ることもなく言った。


「ただひとつの正解はない。勝てるならなんであっても正解。勝てるまで試行錯誤しなさい」


「だけど……そんなことしてたら」


「安心しなさい。あなたは私が守るから」


 ただ迫りくる敵だけを見据え、非常に強力な結界を張り続ける彼女の目には絶対的な自信があった。


 それは百戦錬磨の冒険者の顔だった。


「わかりました!」

読んでいただきありがとうございます。

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