番外:残念王妃に関する聴取記録 宰相編
番外編①。
周りの人たちの視点。
連続2話更新します。
番外編②もよろしくお願いします。
王妃様は大変優れたお方です。あれほど優れたお方はいらっしゃいません。
私が王妃様に初めてお会いした時は、お手に山程の青菜を抱えておられました。
当時まだ王子だった現王と共に、大変に驚かされたのを覚えております。
王子の訪問は事前に通達しておりますので、お支度もなさらずお庭で遊んでいらしたなど、到底信じられることではございません。
あれは、かの方が王子の愚行を知り、それを諌めるために敢えてあの様な事をなさったのだと思います。
同時に、王子を律する事も出来ぬ不甲斐ない私をも叱咤激励してくださったのでしょう。
あの後、私も王子も、研鑽を重ねました。
どうしても怠け癖の出る王子を嗜めるために、
「殿下がその様でしたら、私があの方に求婚してもよろしいですか?」
と申し上げたこともございます。
効果は覿面でしたね。
いや、戯れの軽口ですよ。本気? まさか。
王子はあの方に相応しくあるべく学び、鍛錬をし、あの方を王妃に迎えて強く賢い王となられました。それこそが天命です。
はい? 遠国の大使が舞踏会で絡んできた件ですか?
あれは王妃様への逆恨みですね。あの国の王女もかつて婚約者候補でしたので。
自国の言葉で早口に、王妃様を蔑み、下卑た冗談を言い、嘲笑いました。俗語も多く交え、正確に聞き取れた者は私と王妃様以外居なかったでしょう。
いえ、王妃様もご理解されていたのは間違いありません。見れば分かります。汚い言葉に目を見開き、下卑た発言に眉を顰めて、助けを求めるように王に縋り付きました。
ええ、あんな下品な発言にお言葉を返す必要などありませんとも。
私は王に小声で通訳をし、王は青筋を立てながらもその場は笑顔で流しました。
無論、その後の外交でこてんぱんにさせて頂きましたよ。王妃様があの国の刺繍糸をお気に召していたので、潰すまではしませんでしたがね。
私が侯爵になり、宰相にまでなれたのは全て、幼き頃に王妃様が庭土に擬えて私を激励してくださったおかげです。
そして、娘を王子の婚約者として頂いたときは、身に余る光栄だと思ったものですが……。
あの[検閲削除]、昔の王にそっくりだ……。王妃様の顔を立てて我慢しているが、そろそろ[検閲削除]を[検閲削除]して/(主旨から外れたため記録中断)
いや失礼。しかし本当に、王妃様はなぜあの様な評価に甘んじておられるのか。あの聡明さを表に出してご活躍いただけたらと願わない日はありません。
実に、残念な事です。
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