2. 残念王妃のわがままによる保養地散財事件
1の続編として書いた短編の再録です。
1に合わせて1000文字縛り。
王子の婚約破棄騒動も未遂に終わり、全ては丸く収まったとご満悦の王。ご機嫌で侯爵令嬢を晩餐に招きますが……。
「……で、婚約は継続で問題ないな?」
「はい父上、お騒がせして申し訳ありません」
ある日の晩餐。
王と王妃は、王子の学園卒業を祝うという名目で、王子とその婚約者の侯爵令嬢を招いた。
王子は学園で複数の令嬢を侍らせて自由を満喫していたが、卒業後までそのような行いが許されるわけがない。
王はきっちりと釘を刺した上で、婚約について念を押した。
「良かったな侯爵令嬢。だから、悩まずとも悠々と待っていれば、王子は戻ってくると言ったろう」
王は一件落着とばかりに笑う。
侯爵令嬢はカチリとフォークを置き、俯きがちに小さくはい、と返事をした。
「そうですよ、令嬢。王子は戻るとわたくしも思っていました」
と王妃も言う。
「ですからその前にお一人で旅行でもいかが、と言ったのに。ねえ王子、令嬢にも、ちょっとした息抜きは必要ですものね」
王妃はにっこりと笑う。
「そっ……、なぜ知っ……!」
『ちょっとした息抜きは必要だよな』
それは、奔放な学園生活を諌められる度、影で友人に愚痴っていた台詞だ。
「ねえ令嬢、今からでも遅くありませんわ。北の大国にわたくしの姉が嫁いでますの。そちらへしばらく滞在するのはどう?
あちらの第三王子は、昔は体が弱く婚約者も決まらなかったけれど、今は元気だし、とても頭の良い子だから、話し相手として最適だと思いますよ」
「えっ」
と思わず声を上げた王子を無視し、王妃は侯爵令嬢にだけ話しかける。
「あとは、そうね、丁度今わたくしの兄が東国に遊びに行っているわね。そちらに同行させてもらうのは? 見識も広がるし、兄の護衛の子は年齢も近いからきっと楽しく過ごせるわ。
その子は公爵家の子で、すごく強いと評判なのに、剣に熱中しすぎて婚約破棄されちゃう抜けたところもあって」
可愛いわよね、と王妃は笑う。
「えっ」
「待て待て、王妃」
王がとりなそうとするが王妃は止まらない。
「そう、南の保養地! そこならわたくしも一緒に行けますわ!」
「えっ!」
「あ、南の保養地は昨年の水害からまだ復興出来ていませんでしたわね……。仕方ありません、北の姉のところへ、わたくしも共に参りましょう! ああ、楽しみですわ!」
「待て待て待て!」
その後、南の保養地は国の援助を受けてすぐに復興し、王家の滞在による経済効果で領民の生活は立て直された。
そこでは、王妃と令嬢が連れ立って買い物し回る後ろから、王と王子が見守るように付いていく、仲睦まじい姿が見られたということである。