表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ケサランパサラン王国VSトゲトゲ王国

作者: 昼月キオリ

一話 ケサランパサラン王国

ケサランパサラン王国。

ケサランパサラン達が住んでいる雲の上に存在する小さな国。


王様「皆んなに伝えておかなければならないことがある、

トゲトゲ王国の奴らがついに暴れ始めた、奴らは人間界もケサランパサラン王国も乗っ取ろうとしている、

いつ乱闘が起こるか分からない、いつでも戦えるように備えておいてくれ」

使用人A「承知しました国王様」

王様「華乃はまだ人間界から戻って来ないのか?」

使用人A「ええ」

王様「華乃が人間界へ行ってしまってからもう二年になるのか」

使用人B「華乃のことなんてどうだっていいじゃないですか」

使用人C「そうですよ、あいつは力が使えない上に人間界に逃げたんですから」

王様「いや、そうさせてしまったのは私の責任なんだよ、華乃は悪くないのだ」

使用人B「国王様は何も悪くないじゃないですか!」

王様「いや、本当のことを打ち明けず、華乃を追い込んでしまった、私の責任だ」

使用人C「え、本当のことって何です?」

王様「華乃は力を持たずに産まれてきたのではない、まだ眠っているだけなんだ」





二話 まさかの告白の返事

海斗「俺、先輩が好きっす!付き合って下さい!」

高校三年になったばかりのある日。

放課後に同じ美術部の華乃先輩を裏庭に呼び出し告白した。

華乃先輩が怯えた様子を見せないのはこんな俺でも信頼してくれているらしい。

それだけは救いだった。

他の奴にならどれだけ嫌われようが悪口言われようが構わないが、好きな女に警戒されるのは避けたかったから。

華乃先輩が描く絵は評判になるほど上手い。俺も先輩みたいに描けたらと常々思っていた。

俺はというと形上美術部というだけでほとんど活動には参加していなかった。

喧嘩っぱやくすぐに問題を起こすような俺だ。

いない方が良いだろう。

何故美術部に入ったのか、辞めないでいる理由は華乃先輩がいるからだ。

華乃「ごめんなさい!」

華乃は頭を深く下げた。

海斗「それはやっぱり俺が不良だからっすか?」

華乃「違うの」

華乃先輩は何か考えているのか下を向いて黙ってしまう。

海斗「そうっすよね、俺みたいな奴と先輩とじゃ釣り合わなかったっすよね、時間取らせてすみませんっした、俺もう行きますね」

華乃「違うの!あのね、私も海斗君の事は好きよ」

海斗「え、でもさっきごめんなさいって言ったっすよね」

華乃「そうじゃなくて、実は私・・・人間じゃないの!」(どーん!!)

カー!カー!

静まり返った裏庭にカラスの鳴き声がやけに大きく響いた。

海斗「せ、先輩、いくら相手が歳下だからってそんな嘘つかなくてもいいんすよ、

嫌なら嫌ってはっきり言って下さいよ

余計傷付くんすけど」

華乃「嘘じゃないよ!ほら!」

ポンッ。

海斗「え!?せ、先輩!?」

いきなり先輩が消えて海斗は慌てる。

と思いきや目の前には小くて真っ白でフワフワとした綿毛のようなものが現れた。

"私だよ〜!"

その小さな物体から華乃先輩の声が聞こえる。

海斗「!?」

ポンッ。

華乃はすぐに人間の体に戻した。

華乃「ね!言った通りでしょ?話すと長くなるんだけど私、ケサランパサランっていう妖怪でね、

どこから来たかっいうとケサランパサラン王国っていう国があってそこから来たの

そもそもなんで人間の世界で生活してるかっていうと」(ペラペラ)

海斗「・・・」(あまりのショックで聞こえてない)

華乃「と、いうわけだから私は海斗君とは付き合えないの、ごめんね!

あ、この事は他言無用でお願いね!」

そう言って華乃先輩は手を合わし・・・。

華乃「じゃあまた明日ね!」

固まっている俺を無視して先輩は手を挙げて走っていった。

パタパタっと遠くなっていく先輩の足音。

その音が完全に聞こえなくなった後。

海斗は両頬を押さえながら空に向かって叫んだ。

海斗「ノー!!」




三話 妖怪なのに・・・

数日後、気持ちがだいぶ落ち着いた俺は華乃先輩を誘い、公園のベンチで絵を描きに行く事になった。

その時、華乃先輩が絵を描きながら自分のことを教えてくれた。

華乃「私ね、妖怪なのに力がないんだ、

普通は魔法が使えたり、傷を癒せたりするんだけど、

私だけはどんなに頑張っても力が使えるようにはならなくて、

だから、ケサランパサラン王国の中でも浮いてて居場所がなかったの」

海斗「それで人間界に来たんすか」

華乃「うん、情けない話なんだけど」

海斗「情けなくなんかないっすよ、それに、先輩に魔法が使えなかったからこうして俺は先輩に会えたわけだし」

華乃「海斗君・・・」

海斗「今まで魔法が使えなかったとしてもこの先もずっと使えないかは分からないじゃないすか」

華乃「ありがとう」

海斗「ドキッ」

ドキッってなんだ俺!

相手はケサランパサラン!相手はケサランパサラン!

海斗は自分に言い聞かせると首を横にブンブンと振った。

華乃「海斗君?どしたの?」

海斗「なんでもないっす!」




四話 特殊な力

華乃がいない隙にケサランパサラン王国の王様という人?ケサランパサラン?が海斗に会いに来た。

ふわふわとした綿毛が近付いたと思った瞬間、男の姿に変身したのだ。

通常ならここで叫ぶかひっくり返るだろう。

しかし、海斗は一度華乃が変身をしているところを直近で見て話を聞いていた為、落ち着いていた。

海斗「・・・」

もう何もツッコむまい。

王様の話によると、俺には特殊な力があるらしい。

海斗「俺に特殊な力が・・・」

王様「その力を使えばこの世界を救える、しかし、その力を使う時、君の体はこの世界から消滅する」

海斗「どうしてそのことを俺に伝えたんすか?」

体が消滅するって聞いたら、俺が力を使わないかもしれないのに」

王様「私は嘘が言えない性格なんだ、この事は華乃も知らない」

海斗「え」

王様「華乃に言ったら君を止めると分かっている、それだけ華乃の中で君の存在が大きくなっているんだ」

海斗「え、先輩がそんなに俺のことを?」

王様「ああ、華乃は君に恋をしてしまったのだ」

海斗「え、何で知ってんすか?」

王様「だが・・・」

海斗「無視された!何この王様!」

王様「人間とケサランパサランとでは住む世界も寿命もあまりに違い過ぎる、人間の体はあくまで仮の姿、本当の姿はただの綿毛に過ぎない」

海斗「それは、分かってるっす」

王様「酷いと思われるかもしれないが私は人間よりも私たちケサランパサラン王国の皆の命を守りたいのだ」

海斗「そりゃ、国王として当然じゃないっすか?」

王様「だからこの事は君には秘密にしておいてほしいんだ、

華乃が無茶をしないようにね」

海斗「俺は正直、人間界がどうなろうとケサランパサラン王国がどうなろうとどうでもいいっす、

でも、先輩だけは助けたいっす」

王様「そうか、君たちはそれほどまでにお互いのことを思い合っていたんだな」


王様が帰った後。

風がサーっと吹き、髪が乱れる。

まるでこれから物事が動くのを予測しているかのように。

海斗「先輩、俺はどうしたらいいんすか」

海斗は空を見上げてポツリと呟いた。




五話 ケサランパサラン王国VSトゲトゲ王国

ケサランパサラン王国と人間界を脅かす敵が現れたと王様は言っていた。

王様はザックリとした言わなかったので華乃先輩が改めてちゃんと説明してくれた。

その名もトゲトゲ王国。

そいつらはケサランパサラン王国も人間界も乗っ取る気でいるらしい。

見た目はケサランパサランをトゲトゲにしたような見た目だそうだ。

ようするに丸か三角かみたいな話だ。

性格は荒く、攻撃的なんだとか。

いわゆる、漫画でよく見る典型的な悪い奴。


頭を抱える海斗に頭にはてなを浮かべた華乃が質問する。

華乃「海斗君?どうかした?」

海斗「いや、だってトゲトゲ王国って・・・何なんすかその名前・・・」

トゲトゲ王国。

ふざけてるとしか思えない絶望的なネーミングセンスだ。

華乃「そう??普通じゃない?」

華乃は首を傾げる。

華乃にとってはこれが普通なようだ。

海斗「普通なんすか・・・」

海斗は呆れて何も言えなかった。

いや、そもそもケサランパサラン王国がある時点で普通という概念は皆無だ。

もう何もツッコむまい。


そして戦いが始まった。

戦いは難航したが、最終的に海斗の力と華乃が力を合わせてトゲトゲ王国をなんとか倒した。

と言っても相手を無力化しただけなので犠牲者は出ていないのだが。

本来ならば海斗の命を全て捧げるはずだったが、華乃の力が開花したことにより互いの寿命の半分で済んだのだ。




六話 平和

その後、華乃はケサランパサラン王国に一度帰り、誤解は解かれた。

国王を筆頭に皆んなから謝られたが、当の華乃はけろっとしており、気に留めていないようだった。


二人は部活がない日。一緒に下校した帰り道に河原に寄った。

海斗は河原に寝そべって空をゆっくりと流れる雲を眺め、華乃はその隣で座りながら川の流れを見ている。

海斗「平和っすね」

華乃「ほんとねー、一時はどうなるかと思ったけど、

それに海斗君、最近喧嘩しなくなったよね」

海斗「あーまぁ、そうっすね」

華乃「あの戦いが終わってから急にじゃない?」

海斗「だって俺ら寿命半分っすよ?喧嘩してる時間もったいないじゃないっすか」

華乃「海斗君、成長したねぇ、よしよし」

華乃は海斗の頭を撫でた。

海斗「む・・・だって先輩も喧嘩する彼氏は嫌でしょ?」

華乃「そうねー、喧嘩する時間があるのなら私とデートして欲しいかな」

海斗「じゃあ次の日曜日もデートしましょうよ」

華乃「どこ行く?」

海斗「森カフェとかどうっすか?最近人気らしいんすよ、先輩、自然が多い場所の方がいいでしょ?」

華乃「いいね!ひょっとして調べてくれたの?」

海斗「まぁ、彼氏としてそれくらいのことは」

海斗は人差し指で頬を掻きながら言った。

華乃「立派になって!!」

海斗「先輩、最近俺の事子ども扱いし過ぎ」

華乃「それはそうと海斗君」

海斗「?何すか」

華乃「いつになったら私の事名前で呼んでくれるの?」

海斗「え?」

華乃はにまにまとしながら海斗を見た。

これは言うまで折れないやつだ。

海斗「は、はなの先輩・・・」

華乃「だーめ、デートの時は先輩はなしだよ?」

海斗「はな・・の・・・(ぼそっ)」

華乃は依然としてにまにましている。

海斗「先輩、俺いじめて楽しいっすか?」

華乃「ごめんごめん、いじめたわけじゃないのよ」

海斗「むぅ・・・」

華乃「もー、むくれないむくれない」

またも華乃先輩に頭を撫でられる。

先輩は相変わらず俺を子ども扱いだ。

海斗「むくれてなんかないっす」

でも・・・。

華乃「ふふ」

華乃先輩が幸せそうに笑ってるから。

先輩が楽しそうにしてるから。

まぁいいか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ