第8話
なんか怖いな、コレ
本当に現実であったかのようなそういう雰囲気を秘めていてそれでフィクション性があって、
この主人公が先生…?信じたくない。でも、こんな非常識で理不尽なこの世界だ。嫌だ、信じたくないとか言ってらんない。
「わかってる。」
私はミュートを解除して読み終わったことを示した。
「あ、はやいね、神代さん」
楓花さん、いつの間にこの通話に戻ってたんだろう…?
「本を読むのは苦手だったんですけどね。まやがおススメでたくさん押し付けてきてたんです。それで最近は自分から進んで読むようになってしまって。」
「敬語は堅いよ~どうせみんな読んでる最中で二人きりなんだし楽にしてほしいな」
楓花さんてこっちが素なんだ。いつも敬語でまじめな人だとばかり思ってた
「うん、わかったよ。」
「優奈~」
い、いつの間に呼び捨て!?
「あいつひどいと思わない?浦賀さ、チワワ使えなくしたのあいつなのに私に責任押し付けて…ハァ本当に嫌だよ」
それは…
「そうかも。」
「だよね!優奈もそう思うよね!なのにさあいつ自分は振り回されて苦労人です、みたいな顔してやがるの。てか態度からしてそうだし?押し付けられてんのは私の方なんだよ、バーカ!!」
浦賀…そういやなんでれいかさんを止めなかったんだろう?あの時、あいつなら絶対止めれたはずなのに…
「優奈!!優奈の家に今から行ってもいい?」
と、唐突だな…ま、いっか
「いいですよ、特に」
「敬語禁止!」
「っあ・・・特に用事もないから。これでいい?」
「もっちろん。じゃ、今から行くね!」
「みんな読み終わって帰ってきちゃうんじゃなってもういない!?」
通話からまた一瞬で消えた…どうやったらあんなに手際よくブチっと切れるんだろう?
「私の独り言言うだけの通話になっちゃう気がするなぁ、コレ」
「俺がさっきからいることになんでどっちも気づかないんだよ」
「え、あ、浦賀か。なんだ、謝ろうとしちゃったじゃん」
「黙れ。お前ら二人さんざん俺のこと言ってくれたなぁ」
「事実いって何が悪いの?ひどいのはあんたの人使いだと思うけどな、浦賀」
小説読む前はちょっと同情したけどよく考えればほんとになんであの時れいかさんのこと止めずに私に質問させて司会としての機能を失わさせたのかほとほと理解に苦しむ。そこから自分だけで司会を行ってみんなにいろいろ詳しく説明してしりぬぐいしたんならわかるよ。でもそこに楓花さんを巻き込んだ。人使いが荒いというか普通に自分がさぼりたいだけとしか思えない。
「はぁ…何でこう面倒なやつしかいないんだか」
「あの時、浦賀がれいかさんを止めてくれたらこんな無駄な時間もなかったし、れいかさんが慌てて視界としての役割を果たせなくなることもなかったんだよ?」
「あいつの勢いは俺でも止められない。」
言い返そうとする私にそれに…と浦賀は続けた
「楓花も含めてみんなそうだった。俺が止めれなかったのも確かに悪いと思うが他の奴らも突飛すぎてぽかんとしてて全く反応らしい反応を示せてなかったしな。その状況で俺に何を言えと?お前だって急に○○ちゃんがその話の黒幕なんじゃないかしら!?って全く話題にすら上がってなかった人間の名前が挙がって何か言えるのか?」
その言葉を聞いて少しヒートアップしてまともに考えられてなかった私の頭が少し落ち着いた。
「それは…いえないかも…?」
私が周りの意見に流されていた可能性はある。流されやすい人間だし、周りの言葉をマルっと信じてしまうから。そこからちゃんと考えると何を言っていたんだろう、と自分が馬鹿らしくなった。
「それならこの話はここで終了な。それにそろそろ楓花が来るんじゃないか?」
「あ、そうだね…ごめん、浦賀」
私はイヤホンを外した。そして、自分のスマホを操作してミュートにした。当然ながら楓花のようにブチっときれいには切れなかった。だからイヤホンからかすかに何かの音が漏れた気がするが、それは聞こえなかった。
ピンポ~ン
いつも以上に軽快に家に鳴り響いたように聞こえたインターホンに驚いた。
同級生が家に来る。あの夢が始まる前もそして、始まってからも初めてのことであり、本当にみんなあの夢を体験しているのだと実感できて安心した。でも、それと同時に悲しくなった。
自分以外に犠牲者がいることに対し、可哀そうとか、あぁこの子もこれに巻き込まれちゃったんだ、っていう感情とかじゃなくて安堵を先に感じてしまったから。
『やっほー』
インターホン越しの声に本人だと確認できた。
カチャ
「ごめん、開けるの遅くなっちゃって」
「いいよいいよ、私が強引に来たようなものだし。あ、お邪魔しまーす」
やっぱり楓花さん、じゃなくて楓花は礼儀だたしいな
「いらっしゃい、あれ?あなたは…」
「自己紹介遅れました、私は優奈さんと仲良くさせていただいてるクラスメイトの楓花と申します。急に訪ねてしまってすみません。」
「いえ、いいのよ。嬉しいくらいだわ」
「え、嬉しいってなんで?お母さん」
「優奈は最近、友達を家に呼ばないじゃない。ゲームを友達とやることはあっても、会って何かをしたりすることはなかったんだから安心しただけよ。楓花さん、うちの子学校で大丈夫よね、学校のこともあんまり話してくれなくて…」
お母さん、何も楓花さんに聞くことないじゃん…?
「優奈ちゃんはとっても優しくて気配りができていい子ですよ。学級討論でもよく友達と話して積極的に意見を出してくれるんです。」
そんなことして覚えは…ま、まぁ私たちのクラスも他のクラスと変わらずあんまり意見出す人いないけどね?それにしてもだよ…褒められることになれてないし正直微妙だなぁ
「楓花さん、早く行こ」
「お母さんまだ話したいんだけど…」
「楓花、いこ」
「うん!わかったよ。」
「あらあら、ウフフ。ゆっくりしていってね」
「はい!ゆっくりさせていただきます」
「もう、早く!」
「あ、ごめんごめん。」
お母さんもひどいんだから…
はぁ、とため息つきながら急ぎ足で二階へと向かった
「大丈夫?」
楓花に聞こえないくらいの小さなため息だったはずだが、楓花には聞こえていたらしい。心配そうに尋ねてきたところを見るとやっぱりいい人なんだな、と思った
「うん。そういや、楓花」
「ん、なに?」
「なんであんなにスムーズにミュートできるの?」
「え?普通に押してるだけだよ…まさか機械苦手?」
「そんなことはない、と思うけど…」
「苦手なんじゃない?やっぱりそういうのって結構無自覚な事あるし。」
「そうかも。」
「あ、ここが私の部屋」
かちゃりと普段通りの音がして戸が開いた
「へ?」
間抜けな声が出たのは仕方のないことだろう。なぜならそこは自分が部屋を出た時とは全く違う風貌になっていたのだから。
ペンキが飛び散ったかのような、赤色でまだら模様となった壁。床は当然のように真っ赤になっていた。もちろんそれは机の上のものもベットも例外ではない。イヤホンとスマホには血がかかっていて壊れていることが簡単に予想できた。最近は恐怖するようになったベットはまるで手術後のようだった。そしてそのど真ん中に、血まみれの腕と元の色がわからなくなった服をまとう先生がたたずんでいた。
さっと私の前に楓花が出て先生に話しかけた
「先生、これはどういうことですか」
立ちすくんでしまった私を守るような立ち位置にびっくりした。
れいかさんだったらきっと、私をおとりにしてでも先生を殺そうとするだろう
「…」
何も答えずうつむき続ける先生。その姿にただひたすらに恐怖した。
「まさか、みんなを殺し回ったんですか?その鉈で。次は私たちの番ってことですか?」
「…」
「あーもう。らちがあかないなぁ…」
一言目と二言目でがらりと雰囲気が変わった。
威圧されたように息がしにくくなったように優奈は。まるで凍てつく氷のような、はたまた熱く篤くゆらゆらと燃え盛る炎のようなそんな雰囲気があった。
さらさらと流れる髪はきれいだった…ってそんなこと考えてる場合じゃない。
今はきっと来未さんなんだ。楓花じゃなくて。
「先生…この呼び方は正しくないよね、」
その続きが聞こえることなく意識が落ちた。
いつものように強制的な感じではなく、ただスッと、眠りに堕ちた。
やほー!読んでくれてありがとうございました。連載していく予定なので心待ちにしてくれると嬉しいです。高評価、感想、誤字脱字などたくさん送ってくれると嬉しいです。
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