第12話
楓花はスマホを操作してボイセに入った。私が開くとマイクが近すぎて音が変になる可能性があったので開けずに、楓花のスマホの方から参加させてもらうことにした。
「みんな大丈夫そ?」
すごいな、と思った。自分が不安なことを一ミリも感じさせないテンションだったからだ。やっぱり、この人は私とは違う。
「俺は大丈夫だ。…れいかがどうなるかだな」
「あの子そんなにやわだったっけ?」
「脳のスペックはあんまり高くないからな、あいつ。その状態で急に先生が現実で殺しに来たんだ。何かあってもおかしくない…その様子だと楓花と優奈は大丈夫そうだな。」
その名指しの言い方に少し、ドキッとした。意識しすぎな気がするが、来未さんが消えたタイミングでこういわれると、まるで来未さんが消えたこと…そうじゃなくても、異変があったことに勘付いてそうな気がして警戒心が出てきてしまう。楓花が言わない限り、というか言ったとしても、私はベラベラと来未さんのことを話すつもりはない。私の問題ではない、と言ったら少しニュアンスが違って聞こえてしまうかもしれないけど…とにかく、私がとやかく言える問題じゃないというかなんというか。
…………日本語って難しいな。私の今日一番の発見だ。
「うん。平気だよ。」
「優奈いるから私も平気~…他は?」
「多分、パニックか何かじゃないか?どちらかというとこんな風に平気な顔して話せてる俺らの方がおかしいんだ。あいつらはまだまとも。あのままこっちに堕ちてこないといいんだが。」
「…それって私のことも頭おかしいやつって言ってるよね?」
「あれ、お前もこっち側だろ?楓花」
「…」
こっち側あっち側って何の話だろ…
楓花に聞こうと思ったけど、聞きにくかった。彼女の面持ちがなんだかとても深刻だったから。
「…精神が壊れてるのは認めるよ…でも、あなたたちみたいに思考放棄したからとか、逃げたからこうなったわけじゃない。」
「あぁ…そうかもな。でもな、」
世の中、過程じゃなくて結果なんだぜ______________
「っ…」
「まぁ、今それに関して話すのは時間の無駄だし今度にするか。」
「…そうだね」
フぅっと何かを押しとどめるかのように息を吐く楓花に私は心配になって思わず声をかけた。
「楓花、大丈夫?」
「うん。大丈夫、気にしないで」
「わかったよ」
人には踏み入られたくない領域というものがある。もちろん、私にもある。さっきの会話はきっとその領域内の話だと思う。浦賀がその踏み入られたくないところにずかずか入って話せるのはなぜだろうという疑問はさておき、私が深く聞いてはいけない話なのは確定だ。だから、一旦放っておく。問題を今日は後回しにしすぎな気もするが仕方のないことだろう…多分。
「それで、昨日?の夢に関して浦賀は憶えていることはある?」
「特にない、というしかないな。こうやってそのことについて他人と話してなきゃ夢を見たこと自体、忘れそうなぐらいにな。」
「私もそんな感じ。それでなんだけどさ、あの夢って結構大事なものだったんじゃないかなって」
「あり得るな。重要なこと知りすぎて記憶消されたってことか」
「うん。」
「あ、あのさ」
「どうした?」
「先生が急に現実で殺しに来た理由ってなにかな…」
「あぁ…そうだった…今回は俺たち殺されてから夢見るっていう、意味の分からない夢の見かたしてたもんな」
「なんだろ…」
「今回のってバグみたいなのじゃないのかなって思って…」
「確かに辻褄は合うな。」
「え?」
あれ?さっきの二人の話と真反対の意見でてっきり否定されると思ってたのに…
「お前が言ったことなのになんでそんな疑問形なんだよ」
「いや、適当な推測だし、否定されると思ってて…」
「あ、お前知らないのか。楓花、説明よろしくな。俺は寝る」
「あ!浦賀⁉」
ミュートにしてる…
この人絶対にやついてるんだろうな…楓花に前回のお返しできた形になるから。
「はぁ…じゃあ説明するね。〘無個性〙ってやついたじゃん?」
「確か、あのノートの一部分を朗読?した人だよね」
「そう、そいつ。んで、そいつが遅れた理由が『白』の反応があったかららしいんだけど…まず、『白』の説明するね__」
今回私たちが巻き込まれているこの呪い?〘無個性〙的にはゲームの方が近いらしく、とりあえずそのゲームみたいなののゲームマスター役、つまりはゲームを管理する管理者っていうのが〘無個性〙達。何人かいるらしいけどそれ以上の情報は皆無。
『白』とは管理者階級のこと。管理者階級っていうのは管理者の中の上下関係を表した階級のことで色でそれが割り振られている。現在最高管理者の色は『白』。つまり、一番偉い管理者。
『白』は基本一人でゲームを管理する。
〘無個性〙曰く、このゲームにはもう『白』の反応が一つあったらしくて、このゲームは滞りなく進んでいるものとしてみなされてしまっていた。しかし、途中で『白』がいるっていう反応は出ているのに、その肝心の『白』がゲームマスターとして機能していないことに気づいた。
慌てて対処しようとして現れたのがその〘無個性〙ってことらしい。
「慌てて出てきたからどこかでエラーが発生しちゃった、てこと?」
「うん。そういう風に考えると辻褄が合うし、納得できるぐらいだよね、ってこと。」
「適当言っただけなんだけどな…」
「れいかがいなくてよかったね。あいつがいたら『なんでそんなことまで知ってるの?神代さん。あなた、やっぱりその反応のあった『白』なのかしら!?』だよwwww」
声真似上手なうえに本当にれいかさんが言いそうな口調で云うものだから、私はクスッと笑みをこぼしてしまった。楓花は自分でもよく想像できたのか、思わずといった感じで腹を抱えて大爆笑している。
数分して復活した楓花は
「まぁ記憶消されたのもエラーのところを思い出してほしくないってことなら、記憶消された辻褄もあってるし、本当にそうなのかもね」
とマジな顔で言ったのだった。
自分が言い出したことが全部ぴったり当てはまっていくの怖い…
まるで誰かに誘導されてるかのような、そんな怖さがある。
「話おわったか~?ッフ」
絶対聞いてたよね私たちの話、と言いたくなるようなタイミングで帰ってきた。というか、絶対聞いてた。うん。そうに違いない。
そして、今気づいたけど、さっきは私たちと浦賀しかいなかったはずなのに何人かボイスに入っていた。
「漏れてますよ~?笑いが」
「わざとだけど?w」
「ひどいねぇ浦賀クン」
「その言い方やめろ…気持ちが悪い。てか、お前もやってただろ!?」
「知らないよ~ww」
「クソがっ」
うん。私、漫才でも見せられてるのかな。こっちの空気を考えてよ。二人は楽しそうだけど息ぴったり過ぎて周り空気だよ?「存在価値ないの?僕たち」みたいな状態なってるよ?
まぁそんなのをぶった切ったのはこの方。というかぶった切れるのこの方ぐらいなのでは…?
「お戯れはほどほどになさったらどうですの?」
久しぶりに聞いたな、この声。それにしても、さっきの声真似本当に似てたな…
「あれ、チワワじゃん。それなら、司会進行変わるね。よろしくお願いしますよ?」
「わかってますわ。あの無様な醜態を二度もさらすような真似は致しません。」
「それは安心できるね」
顔が見えている私にはわかる。安心どころか、全く信用すらしていないのが。楓花の顔がやばい。マジでヤバい。こういう時、私って本当に語彙力がないんだなって思う。えと、そう。私や浦賀と話していたさっきまではほころんでいた顔が、れいかさんの声が入ってきた瞬間に一瞬で真顔になった。
ごめんだけど、マジで怖いよ…目が、目がさ?「殺気出てるでしょ、それ」ってぐらいに圧があって…
ちょ、ちょっと目をそらして楓花の顔を見ないようにしよ…
「では、皆さん、ノートの方はお読みになられたということでよろしいですか?」
「あぁ」「読んだよ~」などの数人の声が上がる。そこからやるんだと思いつつ、楓花の方を見たけど特に反応らしい反応はしていない。きっと、とりあえず司会進行はれいかさんだから口は出さないようにしようってことなんだろうな。
「わかりましたわ。では、話が飛ぶのですが、つい先ほどの夢に関して憶えていることは?」
「特にないね」
「同じく。れいかは?」
「私も申し訳ないことに憶えておりませんの…何かこの現象についての考察、もとい、これに関しては考えなくてもいいかどうかに関して意見していただきたいですわ」
「お前が撤回した現象についての考察なんだが」
あ、浦賀。まさかさっき私が言ったことを言うつもりかな…またれいかさんに勘違いされるのちょっと嫌なんだけどな…
「俺が考えるに今回のはバグやエラーの類。つまり考えるだけ無駄ってことだ。」
え、浦賀まさか庇ってくれた?庇うって言い方は違うかもしれないけど、私の名前を出さないでくれたのはありがたい。今度お礼言わなきゃな。
「それはなぜ?」
「まず、夢を見るときの入り方憶えてるか?」
「先生に殺されましたわね…今までそんなことなかったうえに現実で殺されてひやりといたしましたわ」
「そう。そこがおかしい。夢の記憶がないことも含めて考えると、今回のはエラーやバグで不都合なことがいろいろあったから、記憶を失ってほしかったんじゃないか、と考えれるわけだ。」
「そういうことなのね。それなら納得できるし辻褄も会うわね」
「なんでエラーやバグが起こるって前提があるの?」
あ、河井だ。珍しくまともなこと言ってる…
他のみんなもそう思ったのか、呆気にとられたようにボイスはしんと静まり返った
「え、あれ?僕おかしなこと言った?」
「いや、まともだぞ?まともだからこそ、みんなお前が頭を打ったのかと思って心配してくれているんだ」
「へぇ…心配してくれてありがとう!でいいのかな?」
「いや、ここは怒るところだな…で、お前は知らないのか。」
「知らないって何を?あ、さっきの前提の根拠の話?」
「それだ。説明してやるからちゃんと聞いとけよ?」
浦賀は楓花が私に説明した内容と同じ説明を河井にした。まるきりほぼ同じだったからこれを説明する用の台本があったりしたりするのかなと思ってしまうぐらいだった。
「そうなんだ。それならまぁ一応根拠にはなってるかな」
「とりあえず他に質問は?」
誰もリアクションしなかった
「それならその話は一旦忘れてクリア条件の考察をしましょうか」
れいかさんのその言葉で少し、場が凍った。
みんな、本当に死ぬかもしれないという事実から目をそらしたかったからかもしれない。
そんな中で
まるで、死ぬことに対して何も感じないが如く。もしくは、こういう死ぬかもしれない状況に慣れているのかの如く。
私はなぜか、心が静かだった。
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思考誘導…僕がする前に誰かが行ってる…見つけた、※※




