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夜の夢  作者: ルナ
10/16

第10話

短くてすみません!!

目を覚ます。

天井は、あの血にまみれた無機質な白いコンクリではなく、自室の温かみを感じる、あの、いつものものだった。

多少、黒く感じるが、気のせいだと思った。

しかし、体中が筋肉痛のように痛い。

ツンとする鉄の匂いが鼻をくすぐる。

そして、息が荒いのに起きてから一瞬遅れて気が付いた。それと同時に、気持ち悪さが胃の中を駆け巡る。

夢の後遺症かも知れない。ぬめりと湿るカーペットに手を添えて、少しずつ、収まるのを待つ。冷静になろうと夢のことを整理しようとして、あまり、記憶が残っていないことに気がついた。なんというか、曖昧になっていて釈然としない。それほど、ヤバいものだったという証なのだろうか。

嗚咽を漏らしそうになってすんでのところで食い止めて、それを幾度か繰り返す。気持ち悪さが残ったまま、優奈は自分がカーペットの上で寝ていたことを知った。

カーペットの上とはいえ床は固い。だから、体が筋肉痛のように、軋むように痛くなるのは別におかしいことではない。

そのことを理解してはぁと大きくため息をついた。

ふさふさという感覚が手に届く。ベッドでこのまま寝てしまいたい…そう思った。

憂鬱そうな顔持ちでベットがある、そう、右側を眺めた。


「っえ?」


そこには楓花がいた。

優奈は驚いた顔になった。

そして、戸惑いと、悲しみが溢れてきた。

彼女の姿があまりにも現実離れしていて…夢ではない、こちらの世界では、見たことがなかったから。


「楓花…?」


楓花に近づく。その華奢な方を少し揺らす。しかし、それだけだ。

何も反応は帰ってこない。

楓花の姿は酷かった。寝ているようだが、うなされているようで、それだけだったら、優奈もここまで戸惑い、悲しむことはなかっただろ。

彼女の肉がえぐれていたのだ。

それも、一箇所だけではなく、ふくらはぎ、指、腹、腕。何箇所もえぐれていた。それだけじゃない。

かすり傷も多く点在していた。

首から上だけが唯一きれいで、何も外傷はなかった。


「楓花?うそでしょ、ねぇ」


優奈だって昨日のことを忘れたわけではない。

血まみれの先生が部屋の中にいて、部屋も血で汚れていて、スマホも壊れただろうと思ったのだから。

スマホが壊れた?

優奈はスマホを思わず触る。そして、あのいつものブルーライトが自分の顔を照らした。

暗いなかで急な明かりが目の前に発生して視界が一瞬黒と白に点滅して、クラリと目眩がした。


「なんで、ついた…?」


驚きと喜びが入り混じる中、スマホを操作した。

確認しても血で汚れたり、液体がかかったことによる不具合などが感じられる様子はなかった。

恐る恐る、電源コードにブス、とさしてみても、いつも通り充電され始めるだけだった。

火が吹き出たり、漏電したりしてしまう可能性を考えていた優奈からしたら、拍子抜けもいいところだった。

それでも、ほっとしたのは紛れもない事実であった


「っ、楓花!!」


安全を確認してから、少し、動いた気配がした気がして、楓花の方を振り返った。

すると、目がきつく結ばれたかと思うと目が開いた

パチリと黒く大きな目が露わになった


「ん…あれ?優奈?」

「楓花、起きたんだね」


暗くて楓の表情はよく読めない。


「よかった…か、体は!?」

「え?体?」


楓花は何を言ってるんだ、とでも言うような顔をして自分の体を見た。

そして、その顔をゆっくりと上げ、こちらに向けて言葉を発した


「何もなってないよ?」

「え?」


優奈は、何度も何度もその体を見返した。たしかに、暗がりの中で定かではないが、今の楓花にえぐられたような傷もなければ、かすり傷さえ存在しない。

でも、優奈は本当に見たのだ。あの、華奢な体にボコボコと穴が空いているところを、かすり傷がひどく、しかしながら、血が流れていない、そんな体を

まって、血が流れてない…?

優奈は自分の思考を訝しみ、少し遡る。

確かに、優奈の記憶の中の彼女には血が流れていなかった。

混乱する頭を行動で押さえ込むように立ち上がり、手探りながらも灯りのスイッチを押した


「え、どうしたの?優奈…」


光をつけても、特段おかしいところは見つからなかった。

いや、と思った。

そう、あのツンとした鉄の匂い…あの、ここ数日で嗅ぎ慣れてしまった血の匂いが消えているのだ。

すべてが、昨日先生が部屋に来るまえと同じ様子をしていた。

私達がカーペットの上で寝ていたのはなぜなのかはよくわからないが、とりあえず、私たち以外はすべて同じ配置で、血や切り傷などなどの、あのひどい惨状を思い出させられるようなものは一切なかった。

まるで、昨日の事自体がなかったかとのように過ぎ去ってしまうかのように。

数分、理由を探して意味もないことに気づき、今まで放っておいてしまった楓花に声をかけた


「あ、楓花、昨日のこと覚えてる?」

「………」

「楓花…?」


楓花はというと、悲壮感のあふれる、絶望したかのようなかーきっと本当に絶望したのだろうー顔で下を向き、何かかすれるような声でつぶやき続けている。同じ言葉をただひたすらに、狂ったように、

どこか遠くに消えてしまいそうで優奈はとっさに肩を掴んで揺らした。

しかし、彼女は変わらない

その姿を見て優奈は恥ずかしいとかそういう感情を一旦捨てて抱きついた。

これにはさすがに放心状態の楓花も驚いた様子で顔を上げた。涙で顔を濡らして、呆然とした表情で。


「楓花…大丈夫だよ…大丈夫。何があったの?」

「ゆ、優奈、優奈ぁ…お姉ちゃんが、」

「お姉ちゃん?」


優奈は思った。楓花にお姉ちゃんはいなかったはず…と。しかし、気づいてしまった。

気付かなければまだ夢を見れたというのに。

ただの二重人格だと思っていた

彼女にとっての姉とは…


「来未っぃ…」


来未さんが、彼女の中から消失したのだった。

やほー!読んでくれてありがとうございました。連載していく予定なので心待ちにしてくれると嬉しいです。高評価、感想、誤字脱字などたくさん送ってくれると嬉しいです。

ブックマークもよろしくお願いします。

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