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59. うち、これになる!


 淡路島って知ってる? 大阪湾と瀬戸内海の間にある大っきな島。そこの真ん中くらいにある洲本市っていうちっさい町で生まれたん。


 あ、いなかのことしゃべると、なんかつい方言混じってしまうね。

 ハナも時々、関西弁っぽいイントネーションの時あるよね。へ〜富山も関西弁っぽいんや。


 洲本って、まあのんびりしたとこで、年に一回くらい台風がかすめるくらいで、気候もいいとこで、それでかな、穏やかというか、ゆる〜い感じで、なんやくたびれたパンツのゴムみたいな感じ。

 そこの神社の娘として生まれたの。五つ上の兄と、三つ上のお姉ちゃんがいて、私は末っ子で、お爺ちゃんが宮司でお父さんが禰宜ねぎ。末っ子やからけっこう可愛がられて育ったんだけど、お兄もお姉も真面目なタイプで、私だけヤンチャやったなあ。広い境内を走り回ったり、裏の山を駆け回ったり、海まで五分くらいだし、まあじっとしてへん子やったわ。

 で、中学ん時は陸上部だった。負けん気が強くって、運動会でも一等にならんと気がすまなかったしね。


 中二の時に人生を変えた出来事があったの。今でもはっきり覚えてる。

 部活の帰りに友達とラーメン屋に寄ってラーメンを啜ってる時に、ラジオから聞こえてきた曲に、なんか雷に打たれたみたいになってね、思わず立ち上がって「うち、これになる!」って叫んだの。

 ラーメン屋のおっちゃんが、佐野元春の『アンジェリーナ』ゆう曲やって教えてくれ。

 ハマショーの曲に「十五の時 通りのウィンドウに飾ってあったギターを見た時 イナズマが俺の心駆け抜け すべての夢が走り出した」っていうのがあるんだけど、まさにそれやったなあ。

 で、うちに帰ってすぐにお兄にネットで調べてもらって『アンジェリーナ』って曲が入ってるCDを注文してもらったのね。佐野元春のデビューアルバムで『『BACK TO THE STREET』』っていうの。もう何百回となく聞いたわ。1980年の古いアルバムなのに、どの曲も心が震えたなあ。今でも『アンジェリーナ』は私の憧れで特別な曲。

 そして、自分でもこんなふうに歌いたい、こんな曲を作りたいって気持ちが止まんなって、お年玉を前借りしてギターを買ってもらった。三万円の赤いテレキャスタイプの初心者セットやったな。

 で、すぐにバンド組みたくて、全クラスを回って仲間を集めたのね。まだコードも押さえられんのに。

 どうにか集めた三人に、あんたはドラム、あんたはベース、あんたはピアノってムリヤリ押し付けて練習を始めたんだけど、誰も楽器なんか持ってないし、ひとつのギターを順番に回しながら練習してた。最初はみんな面白がってたけど、すぐに指が痛いやのなんやのって二週間も続かんうちに解散しちゃった。

 他に誰かギター弾ける人おらんかなって探してたら、隣のクラスの男の子が弾けるって話聞いて、教えてくれへんって頼みにいったん。そしたら人のいないところに連れてかれて「キスさしてくれたら教えたってもええで」って言うから「ええよ」って答えて校舎裏でチューしたん。あれがファーストキスだったな。

 それから教えてもらうたびにキスされて、だんだんと、胸を触らせろ、パンツを見せろってエスカレートして行った。そんなんで、結局セックスまで行ってしまったわけ。

 そんなことがありいので、一ヶ月くらいしたら簡単な曲が弾けるくらいにはなったかな。でも会うたびにやらせろって迫ってくるし、ギターもたいして上手くないのが分かってきたんで、また他のメンバーを探すことにした。今では、その子の名前も顔も覚えてないけどね。


 昔からエッチなことにあんまり抵抗ないっていうか、むしろ興味津々だったかな。

 うちで猫飼ってたから、どの部屋も戸をきちんと閉めないでおくのが習慣になってて、子供の頃夜中にトイレに行く時なんかに、親のエッチしてる声とか、お兄やお姉が部屋でオナニーしてるのもちらっと見えちゃったりして、うちも小学三年生くらいからオナニーしてたしね。

 逆に、みんななんでそういうの隱すんやろって思ってたし、ぜんぜん悪いことやとか思わなかったなあ。


 で、部活も勉強もそっちのけで、毎日ギター弾いてばっかだった。夜中にシャカシャカやってるとうるさいって怒られて、布団かぶって練習してた。

 でもやっぱりバンドやりたくて、一コ上の先輩たちがバンド組んでるって噂聞いて、さっそく話聞きに行ったのね。

「じゃあ練習に見に来れば」ってことになって、放課後にギター抱えて行ってみた。海岸通りの廃屋の一軒家だった。

 破れた板塀の隙間をくぐって中に入ってみると、居間だったような部屋にドラムセットとギターアンプが二台置かれていて、四人の男の子がタバコを咥えながら雑談してた。ちょっと不良っぽい感じも、なんか本物のバンドみたいでドキドキしたなあ。

 みんな思ったよりも優しくて、にこにこ歓迎してくれた。先輩らが練習しているのを隅っこで見てたんだけど、レッチリとかいうぜんぜん知らない外国のバンドの曲らしくて、音がギャンギャン歪んでて、いいのか悪いのか、上手いのか下手なんかもよう分からんかった。ただ、大きな音でギターをかき鳴らして、それに負けんようにマイクで叫んでるのはすごく気持ち良さそうだった。


 何度か練習を見に行っているうちに準メンバーみたいになって、タンバリン叩いたり、ハモをつけたり、サイドギターで適当なコードを鳴らしたりして、一緒に笑い転げたりしてたなあ。


 それまでは「悦ちゃん」って呼ばれてたんやけど「そんなん普通過ぎる、ロックやないわ」って新しいニックネームを付けられたんよ。それが「エッチ」。まあ、ふざけ半分だったけど、私はわりと気に入ったの。

 自分から「私はエッチです」って言うのはなんだか面白いし、ぜんぜんホンマのことやし、みんな隠してることを大声で言ってのけるんは、なんかすごく自由のような気がしたのね。

 ついでにバンド名も変えようって『エゴエッグス』から『エッチ&エゴス』になった。「メインボーカルもエッチでええんやないか?」って、ただノリだけでそんなふうになってしまった。それからは、先輩たちの足を引っ張らないように、ただギターと歌だけに全エネルギーを注ぎ込んだ。意味も分かんないままカタカナ英語で歌ってたわ。特別歌が上手かったわけじゃないけど、そんな下手でもなかったしね。

 それまではみんな好き勝手に音を出していたのが、だんだんとバランスが取れてきて、まだ自分の歌とギターに必死だったけど、バンドの気持ちよさが分かってきた感じだった。そうすると今度は人前で演奏したいって気持ちが出てきて、秋の文化祭でいっちょやったるかって頑張り出したの。


 そんなある日の帰り道、元ボーカルで今はサイドボーカル兼サイドギターの先輩に、こっそり「俺と付き合わへんか」って言われて、そんな告白初めてだったから、一も二もなく「ええよ」って返事したの。

 そしたらそのまま物陰に連れて行かれて、キスされて胸を揉まれて。加減も知らないような手つきだった。そのままスカートの中に手を突っ込まれ、パンツをずり下ろされ、アソコをごしごしとこすられて。「痛いよ。そんなに焦んなくても大丈夫やから」って言うとしょぼんとしてしまったから「そっと優しくね」って自分でパンツを脱いで先輩の指をアソコに当てがって、先輩の勃起したアレをズボンから出してしごいてあげたん。先輩はあっという間に出しちゃって「ごめん」って照れ笑いしてた。

 次の日の放課後、いつもの練習場所に行く前に先輩の家に連れ込まれてセックスしたの。先輩は初めてだったみたいで、何度か挿入に失敗したけど、なんとかコトを終えたら、コンドームのサイズが合ってなかったんか、ゴムだけがアソコの中に置き去りにされてて、バカみたいに笑ってたな。

 遅れて練習に行くと、練習中にも私の顔を見てはニヤニヤしていた。練習が終わってから「俺、エッチと付き合うことになったから」って自慢気にみんなに言ったら、他の三人は「ずっこいわ」「もげてまえ」「俺が先に言うんやった〜」とかって悔しがってた。

 つき合い始めたのはいいけど、やたらベタベタするし、毎日したがるし、夜中に呼び出すし、独占欲が強くって「こいつは俺の女」みたいな露骨な態度がだんだん鬱陶しくなって来たのね。練習も適当になってきて、他のメンバーともヘンな感じになってきちゃったし。で「うちはあんたのもんやないで」って怒ったらぶたれて、他のメンバーと揉み合いになって、それっきりバンド練習にも来なくなっておしまい。私はそのままバンド続けたんだけど、みんななんか前より優しくしてくれるようになった。


「うち、日本語の曲をやりたいんやけど」って、佐野元春や、浜田省吾、尾崎豊、大瀧詠一、山下達郎、サザンオールスターズ、松任谷由実、世良公則、相川七瀬、BOOWY、矢沢永吉なんかの1980年代から90年代の曲を聴かせたら、みんなわりと面白がってくれた。こういうほうが簡単そうやし、ってバンドの方向性が変わったんだけど、言うほど簡単じゃなくて、なかなかああいう感じにはならなかったなあ。あ、バンド名も『エッチ&エロス』に変えたんだった。

 文化祭までになんとか二曲出来るようになって、中学の体育館で初めて人前で歌ったの。みんなあがってしまって散々な出来やったけど、逆にもっとやる気出てきたの覚えてる。


 先輩たちはそれぞれ違う高校に行ったけど、バンドはそのまま続いた。誰かがキーボードの女の子を連れてきて、またメンバーが五人になったのね。私だけがまだ中学生だった。


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