表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/124

5. しんしんは却下


「そや、いいんちょ、ユッキーにあだ名付きの席表作って〜な。そんならみんなのことすぐに覚えられるっしょ」

「うん、ええよ〜」

 佐々村さんの前の席のクラス委員、平野香子(かおるこ)が笑顔で応える。


 メガネに三つ編みおさげの理知的な女の子だ。

 まあどこへ行ってもクラス委員に選ばれるタイプで、本人もそれが当然と思っているふしがある。

 レミンの「平野さんがいいと思いま〜す」の一言で決まった、ほぼ出来レースのような委員決めだった。

 体のいい雑用係ではあるのだけれど、それを苦にしない、と言うか喜んで引き受ける、と言うか生き甲斐のようなところがあるので、みんな「悪いな〜」と思いつつ心の中で拍手をしながら手を合わせている。

 

「なん、ユッキーで決まりなんか?」

ビッシーがレミンに言う。

「他になんかええのあるかね?」

「さっきパッツが言ってたん、なんじゃっけ?」

「え、しんしん、やけど……」

 遠巻きの端っこから俺が答えると、誰かが言った。

「なんかそんな名前のパンダおらんかったっけ?」

「漬物にもしんしんってあった気がするなあ」

「あかんや〜ん」

 どっと笑いが起こる。

「なあ、やっぱユッキーの方がかわいいじゃろ? ユッキーはどうね?」

「え、うん、いい、かな……」

 すでにユッキー呼びで尋ねられて、押し切られたように彼女が頷く。

 そんなタイミングで一時間目の予鈴がなった。

「じゃ次の休み時間にトイレの場所とか教えちゃるね〜」

「またあとでな〜」

 各自自分の席に戻って教科書を広げ始めた。


 夏休み明け&転校生というイベントのせいで、授業が始まってもどこかソワソワした雰囲気は消えない。

 たまに女子が佐々村さんと目を合わせて小さく鉛筆を振り合ったりしてる。

 俺はそんな彼女の姿をずっと眺めていた。

 どんな仕草も、どんな横顔も、どんな姿勢も、どんな足の揃え方も、俺をうっとりさせた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ