13. 進路は迷路
一週間も経てば転校生も物珍しい存在ではなくなり、すっかりクラスに溶け込んでいる。
三、四人の仲の良いグループに分かれてはいるが、それぞれのグループは対立することもなく、緩やかに交わっている。
総じて和気あいあいとした雰囲気だ。
俺は「刹那見」を編み出してから、不審がられることもなく彼女を鑑賞している。
それに注力する余り、授業内容はとんと頭に入っていない。
目をつぶって彼女の姿を思い浮かべている時に、「こら野木、寝てるんか」と先生に怒られたりしたけど。
そんな中、進路相談の順番が回ってきた。
「お前は今のままやと、西高か大央か頑張って湊川あたりやな。お前はやれば出来るんやっから、もうちょい上の南高とか富岡とか狙ってみちゃーどや?」
スーケンはそう言うけど、俺はこの中学の隣にある北高でいい。というか、家のみんなはほとんど北高だったから、俺も当然そこに行くつもりだった。
それに今の成績だと、そんなに必死に勉強しなくても入れそうだし。
「え、俺、北高志望なんやけど? ちゃんとそこに書きましたよね」
「第一志望しか書いちょらんやろが。もうちょい気張らんかい。お前はそういうとこあるぞ」
「て言われても……」
「まあ、もうちょい時間はあるやけ、しっかり考えてみーや」
「……はあ」
そんな暖簾に腕押しみたいな進路相談が終わってから、女の子たちの話が耳に入ってきた。
目をつぶっていると、耳ばかり良くなってくる。
「レミンはビッシーとおんなじとこ行かんのん?」
「西商の野球部は全員寮生活なんやて。せやから行ってもあんまし意味ないねん」
「野球部のマネやるとかは?」
「ないない。うちそこまで野球に情熱ないし。やっぱ水泉行って看護師になるわ」
「うちもや。一緒に行こな」
「うん。でもうち、もうちょー成績上げんとあかんて言われたわ」
「そやんなあ、看護科言うても偏差値高いんよなあ」
「入ってからも大変らしいで。バカにはでけん仕事ってこっちゃねえ」
「うんうん。あ、いいんちょはやっぱし中高受けるん?」
「いやいやいや、むりむりむり。東高か、よくて波高。まだ迷い中やけどね」
「そっか〜」
「そ言いえば、ユッキーはスーケンになんか言われた?」
「わたし、こっちの高校のことなんにも知らないから、とりあえず南高あたりどうかって言われた」
「え〜! ユッキーっちゃ頭よかやってんねえ!」
「ぜんぜんそんなことないよ〜」
「だって南高行けるんなんてクラスの上位三人くらいやよ」
「そうなの? 授業だってまだついて行けてないのに……」
「なら今度の中間、一緒に勉強せえへん?」
「ええな、みんなでしよ〜や」
「その前に球技大会や。今度のロングHRでチーム分けな!」
「今年は部活もないし、全力で優勝すんでえ!」
「おっしゃ〜!」
「ユッキーはなんかやってた?」
「ううん、なんにも」
「そっか〜。でも運動苦手ってわけでもないやろ?」
「うんまあ、上手ではないけど」
「なら、ソフトボール、バレーボール、ドッジボール、卓球のどれがええ?」
「ん〜、ドッジボールか卓球かなあ」
「あ、ドッジ甘く見とるね? あれはもう戦争やよ!」
「そそ、バンバン顔狙ってくるっちゃもんね」
「意地を賭けた負けられん戦いっちゃ」
「もう熱うなっとうとや」
困った顔と目を丸くした表情、いただきました。
じゃなくて、なんと彼女は南高レベル?
俺も狙えないことはないってスーケンも言ってたな。
うむむ、これはちょっと一考の価値があるかも知れんぞ……。




