会心の一撃
「動くな」
「うっ何なんだこれは」
俺の魔力結界を奴は破壊しようとするが、そんな程度の魔力じゃあ俺レベルの魔力を打ち崩す事などできない。
完全にこの場は俺が支配していた。
「何をしても死なないんだよなあ。じゃあ俺の全力を食らいやがれ!」
俺はもう完全に殺る目をしていた。
「篠突氷」
俺は手を上に挙げる。
すると、氷の塊が上空に上がっていく。
俺は上にあげてた手を下に下げ合図を出すと打ち上げた氷の塊がバラバラに崩れ始める。
その氷は溶ける事なく大粒の雹が、この空間に雨のように降る。
その範囲は凄まじく、すぐに逃げれる場所は無かった奴は全ての魔力を防御に当てて上からの攻撃を防ぐ。
「ウオォォォッ」
上からの攻撃を防ぐのに精一杯な奴は完全に俺のことを視界から外していた。その隙を俺が見逃すわけがなかった。
「召喚魔法 【氷の双剣】」
「グオォォォッ」
俺は短剣を2つ出して、上の攻撃を意識してる瞬間に一気に距離を詰める。
そして片方の剣を奴の首にもう片方の剣は胸元に突き付ける。
「は、早く降参しろ。しないとお前激痛が来るぞ。いいのか?」
「ぐっ」
奴は完全に打つ手が無かった。
俺は落ち着いていた。できるだけ相手を傷つけることはしたく無かった。
「はっやれるならはやくやれよ」
奴もまた冷静だった。
俺の両手がブルブル震えているのが分かっているからだった。
何もしないので、ついに俺が最後の手段を取る。
持っていた片方の剣を落とし、その手から強力な魔力を凝縮させ、小さな塊を作る。
それは小さいコアだったが、周りを大気を動かすくらいのエネルギーがある。
「見ろよこれが俺の全力だよ。これを喰らったらお前死んじまうかもなあぁ」
死ぬことはないのにも関わらず、俺は奴を脅す。しかしその手も震えている。
奴も死なない事くらいは理解しているはずだ。だか、周りの大気が歪んでいる。こんなことは奴にとっても初めての経験なのだろう。
「わ、分かった降参だ、降参」
流石に食らったことない攻撃を受けるのは怖かったのか、ついに諦めた。俺の勝利だ。
「試合が終了しました。転送します。その場から動かないで下さい。」
「ウィーン」
───「転送完了しました。」
「かっ勝った。俺は勝てたんだ。自分の力で、」
初めて兄さんの力を使わずに自分で何かを成し遂げることが出来た。
─────一方その頃対戦をモニターで見ていた人達。
「なんかあいつ弱くね?」
流石に今日、証明書をとった人に自称強豪クランのメインアタッカーが負けるなんてことはまず無いと見ていた人達だったが、いざ対戦を始めるとまず初めの突進から違和感を感じる。
「なあ、今思うと本当にあいつ強えーのか?未知数の敵にいきなり正面から戦いに行くか普通?」
と、数人の人達が対戦のことで俺が勝ったことよりも、奴の嘘について話す人が現れる。
すると最初に奴の横にいた3人が、
「もう言ってもいいんじゃねーの?」
と何かを呟く。
この時、俺がやってしまった事の重大さはまだ何も分かっていなかった。