第7話「今は付き合えないけどカレシ・カノジョになったつもり」
萌――いや、改めるか――モモは意地悪くも見せつける。レンちゃん気取りで頭なでてきた。そしたら即刻かわいいルインが飛んできて、一旦やめるもこいつはまたやって。いたちごっこ。仕舞いにバレてスマホは取られた・巡条さんは怒られた。僕らはバレてなくて黒川ときたら、グループルインでタクー、タクーと意味なく連呼。あとで見た巡条さんは嫉妬した・対抗した。『クマく~ん』『クマく~ん』『クマく~ん』『クマく~ん』『首』『クマく~ん』『クマく~ん』タクタク・クマクマこのルインうるさいな! 頼むから・拝むから仲よくしてほしいな……。
って、なにをミスったのか一個だけ『首』!
「はー、食った食ったー。今日もジュンガするー?」
ちょっとぎくしゃくしつつも迎えた・食べ終えた昼休み。テストも終わって僕らは遊んでる。積み木を抜いては積んでいくヤツだ。モモはやり慣れてて上手い。レンちゃんは普通に下手。
「ジュンガの前に言うこと聞いてを使うわ~」
『しおりのおしり』の視聴は僕のお願いってことにしたから使える。残るは僕から黒川のも。
「クマくんクマくん、あのルイン見せて~」
「あのルイン?」
「萌々奈が送った私に言えない・見せれないやつ~」
「…………」
困ってモモのほうを見る。とくに慌てたところもなく、さっくり・ざっくり言う。
「見せてってことは感づいてる感じー? だったらいいわー、見せてやってー」
件の二行までさかのぼってスマホを渡す。巡条さんは目に見えて驚く・わななく。
「好き――付き合って……!?」
準備中のジュンガぶっ飛ばした! 珍しく乱暴だ・乱心だ……傍目にもひいき目にも怖い。
「ダっル、なにすんの? あ、そうやって遊ぶ? ジュンガ壊し」
パーでぱーんってやっていくつ飛ばしたか競うわけー。一、二、三――数えながら拾いだす。
「萌々奈。まじめに聞いて」
はい、怒ってます。語尾が伸びない・温かくないトーンダウン巡条さんは百パー怒ってます。
「どういうつもり?」
「好きって気持ち伝えたんだけど? コクるくらいいいじゃん。タクもちゃーんとフったし」
隣の僕を一瞥した。椅子だけ持ってきてる。僕は机を反転させて黒川と向かい合わせてる。
「心配しなくてもクソカップルみたいにこっそり付き合うとかしないから。やられた身だし」
被害者だから説得力はあり余った。僕も横からそんなことしないって誓う。
「付き合ってっていうのは別れたらってこと。カノジョの予約したわけ」
「そんなの意味ないわ。別れないわ」
アンタと同じこと言ってんじゃんってこっち見て笑う。そうだぞ、意味ないぞ・別れないぞ。
「じゃあ呼びかたを変えたのはどういうつもり?」
「今は付き合えないけどカレシ・カノジョになったつもり」
手の甲で二、三段の残存ジュンガを払いのけた。巡条さんのスカートの上にばらばら落ちる。
「お、おい」
急なアクションやめろ・マジトーンやめろ……。かつてないほどピリピリ・ヒリヒリしてる。
「なにあれぇ? ジュンガでケンカぁ?」
赤崎が指を差して後青黄とあざ笑う。客観的には『ジュンガでケンカ』と映ってるらしい。『ぜぇったい許さないから。おばさん』と宣言したものの、今のところはなんの攻撃もない。黒川を・反撃を警戒してるんだと思う。モモは冗談抜きで核兵器、破壊力が過ぎて抑止力だ。
「セッター! すげーいい雰囲気だなー!?」
前田が皮肉って左右緑とあざ笑う。二分しても1軍はうっとうしいな……あいつ嫌いだな。赤崎を捨てるも黒川は振り向かず、トドメに巡条さんにも冷淡にあしらわれても反省がない。後藤たちに絶交されても左近・右京とよろしくやってる。女はもういいのかなんなのか……。
「…………」「…………」
読書してる小林・佐藤もチラチラ見てきてる。どっちだったか授業中も隠れて読んでたほど。巡条さんがかばった真犯人だとすれば、注意しておくに越したことはない奴らかもしれない。とくにメガネ小林は偏見で悪いけど、『ヤケクソでムチャクソ犯罪やるタイプ』に見えてきた。
「……レンちゃん。……モモ」
小声でおそるおそる呼んでみる。ふたりとも真顔で見合ったまま怖いから・長いから……。
「僕も言うこと聞いて使う。レンちゃんを煽るな」
具体的にはべたべたするな・見せつけるな。それが呑めないなら呼びかたも元に戻すからな。
「はいはい、ダエキでもセーエキでも飲む飲むー。カレンと別れてアタシと付き合ったらねー」
そんなもん飲むな! だから煽るな! ほら見ろ、巡条さん下向いてぷるぷる震えて――
「せ、せーえきって……その~……あの~……? 飲めるの~……?」
飲めません! インモラルな・アブノーマルなことはしなくても知らなくても結構です!
って、元に戻った。スカートの上のジュンガ少々を机の上に、飛ばした多々を拾いに行く。
「怒ってこんなことしてごめんなさ~い……。萌々奈に盗られたと思って~……」
「盗るわけないし・ゴカゲじゃないし。アンタん手ぇ離れたらもらうからそのつもりでー」
席は立たないまでもしゃがんで手の届く範囲で拾いだす。お互い一応和解した・了解した。
「しおりんさーん!」「しおりんさーん!」
直後、明るい二年女子がふたりやってくる。ダンス部部長と副部長で、再度のお誘いだった。
◎
文化祭が終わって翌週月曜(ナポリタン・カタパルトなんて言ってたあの日)に一度来てる。




