第1話「芸能界は暗黒界ということで、高木に戻ってきたライトサイドの聖女とDVD観はじめる」
今日(12月11日)でクマくんとお付き合いして一か月~。関係は良好で~す・健全で~す。公園でバトミントン、一緒にお料理・ゲーム、アイススケート――と~っても楽しかったわ~。けれど恋の・心の距離は縮まっていないの~。お付き合いする前とそんなに変わらないの~。やっぱり……ッチなことをして初めて恋人かしら~。付き合った意味も実感も増すかしら~。そうじゃなくっても危機感があって~、クマくんが萌々奈のおうちに行くようになったこと~。テスト勉強っていってもふたりきりで~、舞歌に言われたとおり本当に盗られちゃうかも~! クマくんがどう思っているかはわからないけれど~、萌々奈はきっと好きよ~、わかるわよ~! バシバシ叩くのも愛情表現で~、ちょっくらウン――なんて飾らないのも素が出せるんだわ~。だって前田くんと恋仲だった頃は~、赤崎さんほどじゃないけれど女の子女の子してたもの~。かわいく・かよわく演じなくていいなんて――真の恋人じゃな~い! ダメ~、私の恋人よ~!
距離を縮めるために・萌々奈に盗られないために、文字どおりひと肌脱ぎ脱ぎしちゃうわ~。
「あっ、は~い」
おうちのピンポンが鳴って玄関へ~。クマくんが来たわ~、13時ぴったりに~。
「あれ? まだ寝てた?」
「起きてるわ~!」
パジャマは寝間着・普段着なの~! とっくに起きてばっちりお化粧して準備万端よ~? ッチな私服も考えたけれど~、あえていつもどおり~。脱いだときの衝撃がすごいかな~って。
「冗談だよ、寝起きじゃないってわかるよ。でもテストも終わって日曜だから寝てていいのに」
「彼氏が来るのにゆっくり寝ていられないわ~」
お昼寝は好きだから今まではゆっくり――いいえ~、ぐっすり寝ていたわ~、夕方まで~。
「そ、そっか。彼――氏……」
うつむいて赤くなっちゃって~。そうよ~、私の彼氏よ~。一か月経つのよ~、うふふふふ。
「さあ、あがってあがって~」
「うん。お、お邪魔します」
六畳一間にご案内~。黒いダウンジャケットを脱いだらグレーのスウェットで英字・数字~。
「な、なに? ダサい?」
「そんなことないわ~、似合ってるわ~」
男子高校生らしくっていいじゃな~い。ただね~、英字はもちろん、数字もわからないわ~。
「ちょっと大きめに58ってどういうこと~?」
「いや、僕もわからないよ……深い意味なんてないよ」
◎
フィフティーエイトはさておいて。晴れてテストを乗り越えて最初のデートはDVD観賞だ。巡条さんはあのとき耳元でこう言った。『私の1stDVD――「しおりのおしり」一緒に観な~い?』観たかったヤツです! 天森栞関連は見ない・調べないを貫いてきたけど、本人が言うなら!
「見て見て~、じゃ~ん。今日のために実家から持ってきたの~」
まあまあ大きいテレビが部屋の角に設置されてる。DVDを再生するデッキもその下にある。
「わざわざありがとう。大変だったんじゃない?」
「お父さんを使いぱしったから私はなにも~」
使いぱしったって……。持って帰るのもお父さんぱしっちゃうという。え、持って帰るの?
「どうせなら置いとけばいいのに」
「ダメよ~、ついつい見ちゃうわ~。24歳の行き遅れおばさん高校生に娯楽は許されませ~ん」
パソコンもテレビもなかったのは、そういう決意の表れだったんだ。それはともかく――
「行き遅れおばさん高校生って……」
遅咲きお姉さん高校生って胸を張りましょう! なんなら発信しましょう、バズります! 〝元アイドルの美女JK〟ってテレビも来ます! そこから大ブレイクだってありえます!
「ふふっ、ありえないわよ~。それに芸能界に夢は・未練はもうないの~」
グラドルのお仕事は好きだったけれど続かないな~って。あがいても30代前半が限界なの~。
「だから~遅ればせながら~、タカギに戻ってきました~」
「高木? …………。堅気?」
アイドルは・芸能界は堅気じゃないんですか……? 光のしおりんも闇を見たんですか?
「ええ、真っ暗闇~。最悪ね~、ダークサイドに堕ちてスーサイド~! なんちゃって~」
スーサイドってなに? へー、自殺なんだ。……そんな英単語は知ってるの、笑えないよ。
芸能界は暗黒界ということで、高木に戻ってきたライトサイドの聖女とDVD観はじめる。
「グラドルデビューは2018年でね~、今から四年前、二十歳の私が出てくるからね~」
二十歳の私よりも水着の私! い、い、いきなりみ、み、水着のレ、レ、レンちゃんが……! スカート長くて普段肌色ないのに、のっけからビキニで肌色しかない。スタイルも笑顔もいい。色白ですらりと長い四肢、腰はくびれて胸は大・尻は特大。こ、これ以上直視できない……。
「遠慮しないで見て見て~、グアムで撮ったのよ~? お空も海もとっても綺麗でしょ~? ここは入り江で人もいなくって~、ぽろりしても大丈夫ですね~って張り切っちゃってね~。めいっぱい揺らそうって走ったら本当に出ちゃったの~! 当然NGだけれど今のところ~」
こんな特別な・贅沢なことはない。映像のグラドルその人が横にいて撮影秘話もしてくれる。白状しよう、すでにチ×チ×はギンギン。手で抑えるとバレるから、スウェットで隠してる。
「前かがみになってどうしたの~、おなか痛いの~?」
「い、いや……おなかは痛くないよ」
ギンギンの下がパンパンで痛いんです……。もし家でひとりだったら――皆まで言わないよ。
入り江の浜を駆けるFカップ乳揺れはなおも続く。しおりのおむねでもうたまらない……。




